東京「自公決裂」はデキレースか…早期解散阻止で思惑一致、総選挙で元サヤのシナリオ(日刊ゲンダイ 公開日:2023/05/28 06:00 更新日:2023/05/28 06:00)
次の衆院選での候補者調整をめぐる対立から、公明党が東京で自民党の候補者を推薦しない方針を決定した一件が、政界に波紋を広げている。公明との選挙協力がなくなれば、落選する自民議員が少なくないとみられているからだ。
立憲民主党の泉代表が、26日の会見で「政策ではないところで信頼関係が壊れる選挙連合」「全国にも波及する」との見方を披露するなど、自公のガチンコ対立に半ば“期待”するような声も上がっているが、「東京28区をめぐる自公の決裂はデキレースですよ」と、自民党本部の関係者がこう言う。
「公明党は東京12区選出だった岡本三成衆院議員を新29区(荒川区、足立区の一部)に移した上、28区(練馬区東部)にも候補を立てようとした。比例票を減らしていることの焦りから、東京で1つだった小選挙区を増やして得票を増やす狙いです。ただ、28区の候補擁立を自民党が認めなかったために、東京の選挙区では自民党候補を推薦しないと伝達したのには別の思惑がある。G7広島サミットで支持率を上げた岸田首相が早期解散に踏み切る観測が強まったため、それを阻止するための策動でしょう」
公明は、支持母体の創価学会が高齢化していることもあり、大型選挙の間は少なくとも3カ月空ける必要があるとされる。4月の統一地方選でフル稼働したばかりで、6月解散には対応できないというわけだ。
交渉過程で自民側は公明に対し、28区の代わりに候補者が決まっていない12区(北区と板橋区の一部)か15区(江東区)なら差し出すと打診したというが、話がまとまらず決裂した格好になっている。
「公明側の強硬姿勢は、実は東京の自民党にとっても利用価値があった。15区選出の柿沢未途衆院議員は、前回総選挙で勝って自民党入りしましたが、東京都連との関係が悪く山形県連所属ということもあり、今も正式な支部長に選任されていない。萩生田都連会長は、4月の江東区長選で可愛がっている山崎一輝前都議が落選したことは、柿沢が対立候補を支援したせいだと根に持っていて、『裏切り者は絶対に許さない』と言っています。それで15区を差し出すなどと言い出した。萩生田にとっては、ゴネる公明との決裂は、公明の要求に従いすぎだと不満を高める支持層に対して“押し返した”とアピールできる上、柿沢に圧力をかける材料にも使えて一石二鳥なのです。最終的には、公明に12区を渡して手打ちするシナリオで決着するのでしょう。公明にとっても、12区は太田前代表時代からの地盤で文句はない。東京で2選挙区を手にすれば、元通り東京の自民候補にも推薦を出すでしょう」(東京都連関係者)
総選挙までの時間稼ぎをしたい公明と、それに乗じた東京都連が演じるプロレスということか。
公明が各小選挙区に1万~2万を持つとされる学会票と、政権与党のうまみにドップリ漬かった両党は麻薬中毒のようなもので、20年以上も連立政権を組んできた自公両党の権力への執着は並大抵ではない。茶番に惑わされない方がよさそうだ。