日米の金利差拡大×原油高で円安地獄が再び…通年の値上げラッシュが庶民を直撃!(日刊ゲンダイ 公開日:2023/02/19 06:00 更新日:2023/02/19 06:00)
異次元緩和を継続するのか、しないのか。アベノミクスの片棒を担いだ日銀の黒田総裁が今春退任し、経済学者の植田和男氏が後任となる見通しだ。その手腕に注目が集まる中、円安が進行している。17日の東京外国為替市場で、円相場が一時1ドル=135円台まで下落し、約2カ月ぶりの安値を付けた。
円が売られるのは米国の利上げが長期化し、日米の金利差が拡大するとの観測からだ。今月に入り、米国経済の堅調ぶりを示す経済指標が相次いで発表されている。1月の雇用統計、消費者物価指数に続く卸売物価指数の上昇率は前月比0.7%、前年同月比6.0%。ともに市場予想を上回った。
「インフレ退治のためにFRB(米連邦準備制度理事会)がさらなる利上げを続けても、米経済は好調なため、景気後退にはつながらないと見ています。米中対立などを背景にした中国の米国債売却も米金利を引き上げている。米10年国債の利回りはわずか2週間で0.5%も上昇し、3.9%に迫っています。投機筋が円を売ってドルを買う動きを強めるのは当然で、それが長期化し、円安はさらに進むとみられています。昨年10月にドル円レートは1ドル=150円台に乗せ、32年来の安値水準を更新しましたが、あの悪夢が再来してもおかしくありません」(経済ジャーナリスト・井上学氏)
植田新総裁が異次元緩和の修正に動くとしても、一気に正常化することはできない。だが、小幅な利上げでは円安進行に太刀打ちもできない。
■値上げは今年後半には落ち着く見通しだったが…
円安が招く輸入物価高に輪をかけそうなのが原油価格の高騰だ。足元は1バレル=70ドル台後半で推移しているが、先行きは不透明。日経ヴェリタス(12日付)でエレメンツキャピタルの林田貴士氏は、今年の原油価格はブレント原油ベースで1バレル=90~110ドルのレンジに戻ると予想している。米中の消費が景気を下支えするなど、マクロ環境が改善するためだという。
「円安に原油高が加われば、企業はコスト上昇分の価格転嫁を加速せざるを得ません。企業は値上げ慣れしており、迅速かつ大幅な値上げに踏み切るはずです。物価上昇に見合った賃上げが実現しなければ、昨年以上に懐が寒くなるでしょう」(井上学氏)
帝国データバンクの調査(3~7日実施=有効回答1335社)では、商品・サービスの値上げ予定は今年後半には落ち着く見通しが示されていたが、円安と原油高の進行で通年の値上げラッシュに見舞われそうだ。