「衆院議長に『統一教会の手伝いはやめてもらうべき』と進言」平野貞夫・元参議の証言

平野貞夫氏 政治・経済

「衆院議長に『統一教会の手伝いはやめてもらうべき』と進言」平野貞夫・元参議の証言(NEWSポストセブン 2022.08.04 07:00)

安倍晋三・元首相の銃撃事件を機に、自民党と旧統一教会(世界平和統一家庭連合)との関係に注目が集まっている。しかし、現役議員たちはほとんどが説明を拒み、ふだんは雄弁な議員OBたちもこの件については一様に口が重い。そんななか、衆議院事務局から自民党に入党、新生党、新進党、自由党、民主党と渡り歩いた平野貞夫・元参院議員が、その実態を証言した。

議長は中立、特定の勢力に肩入れすべきでない

私と統一教会、というより当時では勝共連合(統一教会の友好団体である政治団体)という認識ですが、そことの接点は過去2回だけあります。最初は私がまだ衆議院事務局の職員だった時、議長だった前尾繫三郎さんの秘書をしていた頃のことです。

前尾さんが京都の事務所で行事があるというので、私も同行させていただいたのですが、その行事に事務所の人ではない者が何人も手伝いに来ていて、それが何かと聞いたら「勝共連合だ」と言うんです。それを知った私はすぐさま前尾さんに、「議長として相応しくないので、やめてもらうべきです」と進言したのです。

私自身が勝共連合にどうこうという思いがあったわけではないのですが、そもそも議長というのは、議会での中立が求められる立場ですから、特定の勢力に肩入れするような態度を取ってはならない。勝共連合というのはその名の通り、共産主義に勝つ、反共団体です。ということは共産党や社会党に反対している勢力です。そういうところに地元の行事を手伝ってもらうのは議長として相応しくない、という意味です。

私の進言を前尾さんはすぐ理解していただき、「そうだな」ということで、勝共連合の方たちに手伝ってもらうのはやめさせました。

ちなみに前尾さんと統一教会の関係というのは、前尾さんは当時、渋谷の松濤に住んでいた。岸さんの家ほど近くはないが、渋谷には統一教会系の「世界日報」があったので、前尾さんが散歩しているときに勝共連合のメンバーを見掛けることがよくあったそうです。そうすると彼らは行儀もいいし姿勢もいい。礼儀もなっている。それを前尾さんが気に入られたそうです。「君らは姿勢がいいな」と。そのあたりから関係が始まったそうです。

勝共連合名誉会長だった笹川良一氏は福田派清和会や中曽根派のほう

2つめの統一教会との接点は、新進党の頃でした。その当時私は、党首補佐役だったと思う。小沢一郎さんの補佐役ですね。その関係で、選挙に出る候補者の選定を任されていたんです。自民党から分かれたことで、議員はいたが候補者の層が薄かった。それであれこれ探していたんです。

そういうときに、「自民党で公認できないのがいる」ということで、渡辺美智雄さんが候補者を紹介してきたんですよ。渡辺さんが推したいが、選挙区が空いてないという候補者がいると。3~4人いたと覚えています。

その候補者を私が調べたんですが、みな統一教会の関係者だったんです。それを小沢さんに報告すると「厳密にチェックしろ」と言われた。そして結局、全員不合格、候補者にはしませんでした。

小沢さんは、統一教会のことを嫌いでした。元々、勝共連合の名誉会長だった笹川良一さんのことが嫌いでしたから。というのも、笹川さんは福田派清和会や中曽根派のほうについていて、田中派とは対立するポジションにいました。

田中派はあえていえば創価学会と関係がよく、そもそもこの一件があった新進党は、公明党も入っていましたから。そうした流れで、小沢さんのいた田中派や、新進党は統一教会とは一線を画していたということです。