議席獲得、「参政党」熱狂の正体。反ワクチン、反小麦、スピ系が集結(黒猫ドラネコ bizSPA!フレッシュ 2022.07.27)
【関連記事】参政党は”振り切ったトンデモ”「コロナは波動で治る」「バイデン陣営は不正選挙」「プーチンはディープステートと戦う光の戦士」…
◇
かつてない高揚感を味わう人が続出したようだ。2年前に設立されたばかりの政治団体・参政党がこのほど、2022年7月の参院選で議席を獲得。政党要件も満たした。SNSや動画を駆使した戦略が実を結んだことは、多くのメディアでも取り上げられている。
ただ、それで「支持を集めた」とは、かなり表現が甘いと感じる。実際には、参政党は特定のいくつかの層を「熱狂」させ、「囲い込んだ」のだ。その支持者層や主張の内容などを分析していきたい。
参政党が「囲い込んだ」人々とは
まず支持者の中で最も目立ったのは、「反ワクチン派」だ。共同代表の松田学氏、吉野敏明氏は、党での活動を始める以前からこうした層の後ろ盾になる言説をネット上で流していた。ワクチンを「お注射」と表現している。これは、YouTubeで配信された際に、誤った健康情報との判定でBANされないための工夫だ。
このコロナ禍では、「ワクチンの危険性」などの不確かな情報も蔓延した。感染予防策を「強要されている」「同調圧力だ」と感じ、やり場のない感情を抱えた人も多かった。それらが徐々に集まり、参政党の弁士も「こんなに国民が不安に思っている」のように煽り続けた。
演説会場や、ネット上のコメントの様子は「反ワクチン・ノーマスク」活動の様相を呈していた。
自然派系の主張がSNSで大炎上
次に参政党が熱くしたのは、オーガニック食などを推進する自然派の方々だ。党の創設者であり比例区で当選した神谷宗幣氏は常々、食の大事さを説く。その主張は極端な印象もあり、「男女共同参画に使う予算で学校給食を全部オーガニックにできる」などと語っている。少子化問題も、「食事を改善すれば子どもも増えるのに、それをやらせないようにしているとしか思えない」そうだ。
自然派系の主張で特筆すべきは「小麦」の件だろう。共同代表の吉野氏が、「小麦粉は戦前にはなかった」などと述べ、発がん性などを語って忌避を煽った。神谷氏も同調し、「小麦なんか食べるのを止めよう」「粉もん文化は戦後77年でできたものしかない。アメリカで作られた食文化を守る必要はない」と力説していた。
一時的には同じ志向の方々に支持されたようだが、これがネット上で拡散されて大炎上。党としての情報リテラシーには疑問符が付くことになり、農薬に対しての見識なども、農業ジャーナリストらから厳しい指摘が入っている。
反ワクチン、自然派、スピ系…
神谷氏は活動家時代から、多彩なゲストを招いて対談する動画コンテンツを自身のサイトで公開している。吉野氏、松田氏らも例に漏れず、参政党の人脈はこの対談が軸になっていると見ていいだろう。そこには有識者に混ざって、スピリチュアル系やニセ医療に傾倒した者、デタラメな歴史観を語る人物まで登場していた。
神谷氏がそれら全てを信じたとは言わないが、情報の触れ方は気になる。演説で何気なく「今は『風の時代』らしいですね」と発していた。この言葉は、最近のスピ系の流行語であり、その界隈の発信を目にしていないと決して出てこないワードだ。
反ワクチン、自然派、スピ系などなど……。参政党は、これら世間に理解されにくい層を味方につけたのだ。そうして党が膨らんでいく過程で、結成当初からのメンバーが方向性を憂いて抜けていったことが確認できる。今や「間違っていないか」との指摘もなく、あってもそれを受け入れることが難しくなっているのではないだろうか。
神谷氏らの演説は巧みだった。聴衆に保守的な政治イデオロギーや「大和魂」などの言葉を投げかけ、既存政党やメディアとの対立を煽って盛り上げた。もちろん正しいことも言ったのだろう。しかしデマや偏った情報を集めて盛り上げたものまで、勝手に「国民の声」に混ぜられてはたまらない。そのことに冷ややかな国民だっている。
国政政党に総ツッコミを入れられるか
今のネット上には、「真実に目覚めた」と称する人たちがいる。自分たちが正しく「世間のほうが間違い」と考える方々だ。偶然なのか、参政党もよく「目覚め」を強調する。しかし、現実的には感情が高ぶったまま情報を鵜吞みにすることを「目覚め」とは言わない。
誤りを勢いで押し切っても「真実」ではない。どんなに熱く叫んでも間違いは間違いだし、声が大きくてもデマはデマ。それに気付かず盛り上がれば「カルト的」と言われても仕方がない。
参政党主催の講演会を覗けば、ゲスト解説者が単なる陰謀論でしかない年号の数字合わせでウクライナ戦争を語っていた。政治資金パーティでは、登壇者が飛び跳ねて歌っていた。ツイッターでは選挙期間中、「参政党はカルトじゃない」とのタグがトレンド入り。党員が一斉にツイートしたのだ。こう否定しなければならないほど、多くの人がその言動に眉をひそめたのは事実だ。
今後メディアなどで党名を見る機会は増えるだろう。国政政党ともなれば、もはや無視はできない。参政党は政策を「党員で話し合って作る」そうだ。多くの有権者は、今度こそ容赦ない総ツッコミを入れられるだろうか。
◇
TEXT/スピリチュアルウォッチャー 黒猫ドラネコ
九州出身、都内在住の30代。スピリチュアルビジネスやネット発の胡散臭い案件を観察するライター。ラグビー、野球、大相撲などスポーツ観戦が趣味。超甘党。
Twitter:@kurodoraneko15