“元ナンバー2”が旧統一教会批判も、実態は“どっちもどっち”?…背景には文鮮明氏ファミリーの分裂も(ABEMA Prime 2022/07/20 13:25)
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「このたび発生した安倍元総理の死亡事件は、現在の統一運動がいかに正道からかけ離れているかを究極的に見せている事件だ」。世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に対し、韓国でそんな批判の声を上げたのは、かつて創始者である故・文鮮明総裁に次ぐ“ナンバー2”で、2009年に脱会したという郭錠煥氏だ。
会見で郭氏は文氏の三男・顕進会長が2001年に改革しようとしたものの内部の反発に遭ったと明かし、「文会長はその後、日本に対して手を打つことができなくなった。文総裁と文会長の方針に反旗を翻している勢力は総裁の家庭を分裂させ、統一運動全体を分裂させた」と主張している。
バラバラになってしまった文鮮明氏一家
今回の会見の背景について『統一教会 日本宣教の戦略と韓日祝福』の著書もある北海道大学大学院の櫻井義秀教授(宗教社会学)は「“再臨のキリスト”とされていた文鮮明さんはすごくカリスマ性があったが、2012年に亡くなった後、それを誰が継承するのかという問題から、教団がバラけていったことがある」と説明する。
「現総裁の韓鶴子さんとの間には七男六女おり、韓さんを助けているのが五女の文善進さんで、原理研究会という大学生組織を三男の文顕進さん、企業グループを四男の文国進さん、そして宗教部門を七男の文亨進さんがそれぞれ継承した。一方で、統一教会をやめるような形でグループから外れた方々もいる。きょうだいみんなバラバラだ。
さらに文顕進さん、文国進さん、文亨進さんは、それぞれ言い分が異なり、“自分が全てもらった”などと喧嘩を始めてしまった。そこに対して母・韓鶴子さんが“いい加減にしなさい。もう子どもたちには任せられない”となって、全て自分が見ると決めた。それが現在の旧統一教会の実態だ。
こうした実態が表面化したことについて、信者の方々は”バラバラになってしまったのは自分たちの信仰が足りず、神様の家庭にサタンが入ってしまったからだ”と思い込んでしまっている。自分たちがさらに熱心に献金などをして神様に尽くせば、きっと家庭もうまくいくという発想になってしまっているということだ」。
双方の言い分は“どっちもどっち”だ
会見で郭氏は現指導部に問題があると指摘、「(現指導部は)日本の国民はもちろん、全ての人々に対して心から謝罪し、自ら過ちをつまびらかにして責任を取らなければいけない」と訴えてもいる。
一方、旧統一教会は「郭氏が献金に問題があったというなら、返す刀であなたも責任を問われる。郭氏に対しては、韓国の教会から抗議文を送る準備をしている」と反論。さらに日本のメディアに対しても、「事実関係なしに発表された記事や放送によって深刻な人権侵害と宗改弾圧などがあった」としている。櫻井教授は話す。
「会見を開いた郭錠煥さんは原理研究会会長などの役職にある人で、要するに、旧統一教会の勢力の一線からは外れてしまった人だ。三男・文顕進さんの奥さんの父親でもあることから、その“後見役”のような役回りだ。郭さんたちは“三男派”といわれていて、“旧統一教会本体から出されてしまったが、自分たちこそ正統な後継者だ”、つまり“本家”と“分家”の関係ではない、と主張しているわけだが、霊感商法や献金強要の事実を認めていないという意味では、私からすれば“どっちもどっち”だ。
日本で霊感商法が問題になったのは1980年代の後半、そして山上容疑者のお母さんが自己破産されたのは2002年なので、20年もの間、一体となってそうしたことで資金を稼いでいた。それを無視して自分たちに責任がないというのは、おかしな話だ。間違ったのは今の統一教会、家庭連合であり、自分たちがやればいろんな間違いを正せたと言っているが、私はそれも違うと思う。
一方で、旧統一教会が“名誉毀損と人権侵害があった”としているのも言い過ぎだと思う。あくまでも“旧統一教会はこういう団体だ”という事実を報道しているだけだ。4000人が信教の自由を侵害されたり、やめたりしたというが、統一教会の実態を知り、自分たちは虐げられている、金銭的に搾取されているということを冷静に考え、“ここにはいられない”としてやめただけの話だ」。
韓国でも衝撃を持って受け止められているのでは
旧統一教会の関係者による、韓国国内での記者会見。櫻井教授は、「現地でもかなりの衝撃を持って受け止められていると思う」との見方を示す。
櫻井氏は「旧統一教会は韓国では霊感商法的なものはやっていないし、いくつかあるキリスト教的な新宗教の中の、変わった宗教だというイメージだと思う。文鮮明さんは慈善事業的なことも行っているし、企業を経営して雇用も生み出している。つまり小財閥のオーナーで宗教団体も主宰するビッグな人、というような位置づけだろう。だから旧統一教会の中で日本が“金のなる木”のように扱われてきた事実も、信者を除いてはほとんど知られていなかったのではないか。
確かに韓国ベースである旧統一教会が日本から資金を調達し、それを韓国に運んでいたことはある意味で“愛国主義的”であり、日本の植民地支配に対する“リベンジ”という側面がないわけでもないが、そういう形は取るべきではないと考えている国民も相当数いる。今回の会見を受け、旧統一教会に対する思いには複雑な部分があるのではないかと思うし、どのようにコメントしたらいいか分からない国民も多いのではないか」。(『ABEMA Prime』より)