世論の高まりを背景に与野党「防衛費増」 自民、防衛研究費の増額提唱に立民など一部野党も賛同

防衛省外観 政治・経済

防衛費増、与野党に広がり 世論の高まり、参院選意識

防衛費増、与野党に広がり 世論の高まり、参院選意識(JIJI.COM 2022年05月29日07時16分)

岸田文雄首相が表明した防衛費の「相当な増額」をめぐり、与野党に理解を示す声が広がってきた。夏の参院選が迫る中、ウクライナ危機をきっかけに日本周辺の安全保障環境を不安視する世論の動向が、背景にあるとみられる。ただ、規模に対する考え方には隔たりもあり、今後の論点となりそうだ。

23日の日米首脳会談で、首相は防衛費増の方針を伝達。バイデン大統領は支持する考えを示した。

自民党は既に、防衛費の大幅増を提言済み。北大西洋条約機構(NATO)が加盟国に求める国内総生産(GDP)比2%を念頭に、5年以内の抜本強化を主張している。

これに対し、立憲民主党は必要な防衛力の整備を求める立場で、増額にも肯定的。泉健太代表は24日、参院選に関し「(増額の是非は)争点にならない」と記者団に言い切った。しかし、規模については「数字ありきではなく必要なものを積算していく」と述べ、自民党との立ち位置の違いを強調。

国民民主党の玉木雄一郎代表も「額ありきではない。中身の議論がまず必要だ」と足並みをそろえる。

日本維新の会は大幅増を支持。参院選公約の原案には「防衛費のGDP比2%への増額」と明記した。

一方、共産党は反対を訴えている。

公明党も増額自体には理解を示すが、規模をめぐる意見は交錯。北側一雄副代表は26日の記者会見で「『相当な増額』はしていかざるを得ない」と首相発言を容認したが、党内には大幅増への慎重論も根強い。

報道各社の世論調査では、防衛費増を容認する回答が過半数を占めている。与党関係者は「世論の変化を無視できないのは、どの党も同じだ」と指摘した。

各国の軍事支出(2020年)

“防衛費のあり方” 与野党が議論、 NHK「日曜討論」

“防衛費のあり方” 与野党が議論 NHK「日曜討論」(NHK 2022年5月29日 11時49分)

ウクライナ情勢などを踏まえた今後の安全保障政策をめぐり、NHKの「日曜討論」で、与野党は、岸田総理大臣が増額の方針を示している防衛費のあり方について意見を交わしました。

自民党・小野寺元防衛大臣

自民党の小野寺元防衛大臣は「平和の維持には『日本はしっかりしている』と思わせることが大事なので、防衛予算の増額という岸田総理大臣の発言は重要だ。力による現状変更を防ごうと国際社会が連帯して頑張っている中で、NATO=北大西洋条約機構の加盟国はGDPの2%を目標にしており、日本も同じスタンスだ。NATOの数字をあくまでも念頭に、積み上げていくことを考えている」と述べました。

公明党・北側副代表

公明党の北側副代表は「わが国周辺の安全保障環境は厳しさを増しており、防衛費の増額は避けて通れない。今ある装備を十分に稼働させていくための予算や、いざという時に戦う能力も不足している。何が不足して、何が必要なのかが大事で、これからしっかり議論したい」と述べました。

立憲民主党・渡辺元防衛副大臣

立憲民主党の渡辺元防衛副大臣は「安全保障環境の変化に伴って、質の向上を追求した結果、予算額が増えることはあり得るが、対GDP比2%という数字にこだわる必要はなく、なぜその装備品が必要かの積算根拠や財源が必要だ。アメリカから防衛装備品を直接、調達する際の不平等な契約方法の見直しも条件に、増額の議論はすべきだ」と述べました。

日本維新・会の青柳仁士氏

日本維新の会の青柳仁士氏は「世論調査でも国民の過半数が、防衛費の増額を検討すべきだと言っている。自衛隊は、同盟国が助けに来るまでの間、自分たちで戦い続けるだけの装備などを十分に持っておらず、予算をしっかりつけていくことが重要だ」と述べました。

国民民主党・大塚代表代行

国民民主党の大塚代表代行は「コストを抑え、何が本当に必要なのかという合意を得た上で防衛費を増額することはやむをえない。日本は、40年前の大砲を使っており、相当古い装備を新しくすることは必要だ」と述べました。

共産党・小池書記局長

共産党の小池書記局長は「必要となる財源について、政府はまったく答えようとしない。防衛費の『相当な増額』は、日本を軍事対軍事の危険な道に引き込むだけでなく、暮らしを押しつぶすことになりかねない」と述べました。

れいわ新選組・山本代表

れいわ新選組の山本代表は「防衛装備品が適正価格で購入されてきたかのチェックが必要だ。やり方を変えなければ、日本は、アメリカと軍需産業のATMで終わってしまう」と述べました。

自民、防衛研究費の増額提唱 立民など一部野党も賛同

自民、防衛研究費の増額提唱 立民など一部野党も賛同(日本経済新聞 2022年5月29日 13:02)

与野党の安全保障政策の責任者らは29日のNHK番組で討論した。自民党の小野寺五典安保調査会長は防衛関連の研究開発費を増額するよう提唱した。立憲民主党や日本維新の会など一部の野党が賛同した。

小野寺氏は防衛費の増額について「必要なものを積み上げることが必要な時期だ」と述べた。「日本の研究開発費、特に防衛の開発費は非常に低い」と指摘した。

公明党の北側一雄副代表は「安保環境は厳しさをさらに増している。防衛費の増額は避けて通れない」と語り、研究開発を支援する重要性も強調した。

立民の渡辺周氏は研究開発予算について「(防衛費の)現行2~3%しかない。しっかりと確保していくべきだ」と主張した。防衛費増を議論するには積算根拠や無駄の整理、米国製装備価格の妥当性の検証などが必要だとも訴えた。

維新の青柳仁士氏は「宇宙、サイバー、電磁波をいかに抑止力としてつくっていけるかが重要だ」と話した。

国民民主党の大塚耕平政調会長は次期戦闘機を日本が自主開発するよう求めた。

共産党の小池晃書記局長は「(防衛費の)相当な増額は暮らしを押し潰すということにもなりかねない」と反対した。

れいわ新選組の山本太郎代表はこれまで防衛装備が適正価格で購入されていたかチェックが必要だとの認識を示した。