<Q&A>日銀がついに解除した「マイナス金利」とは 効果はあった?解除されてどうなる?
<Q&A>日銀がついに解除した「マイナス金利」とは 効果はあった?解除されてどうなる?(東京新聞 2024年3月19日 12時43分)
日銀の金融政策決定会合は18日から2日間の日程を終えました。春闘で大企業の賃上げが相次いで明らかになった直後の今会合では、大規模な金融緩和策の柱である「マイナス金利」を解除しました。2016年2月に導入されたマイナス金利がどのようなもので、解除後どうなるか整理しました。(大島宏一郎)
結局「カネ余り」は続いてしまった
マイナス金利とはどんな政策ですか。
A 「銀行の銀行」である日銀が、銀行から預かる「当座預金」に通常は利子が付くところ、逆に手数料として支払ってもらう仕組みです。ただ預金全額に適用すると金融機関への影響が大きくなるため、政策の導入前に預けられた残高はプラスの金利を据え置き。その後増えた残高の一部を「ゼロ金利」とし、さらに超過した分に「マイナス金利」を課す3段階となっていました。解除後はマイナス部分がなくなり、0~0.1%程度に引き上げられ段階の区分も変わる可能性があります。
なぜ金利をマイナスにしたのですか。
A 銀行が日銀への預金を増やすと「損」をするため、代わりに企業への貸し出しや投資に使うことを期待した政策でした。ただ少子高齢化などで市場の縮小を見越した企業の資金需要は乏しく、「貸出先は少ない」(メガバンク関係者)のが実情。日銀の統計によると、1月の預金残高と貸出残高の差は約335兆円で「カネ余り」の状況が続き、思うような効果は得られませんでした。
普通預金の金利が上昇しそう
「余ったカネ」はどこへ。
A 「貸出先がなく困った銀行は国債や外債を買うようになった」(日銀OB)といいます。大手行(三菱UFJ、三井住友、みずほ、りそな、埼玉りそな)の日銀への当座預金残高は1月分で186兆円ありますが、マイナス金利が適用される預金はゼロ。国内外の投資に強みのあるメガは、積み上がる預金を債券に回し、マイナス金利を回避してきました。一方、貸出先が限られる地方銀行はマイナス金利でも預金せざるを得ませんでした。
生活者への影響はありましたか。
A 低金利の上、貸出先も見つからない銀行にとって「預金は毒にも薬にもならない」(大手行の関係者)位置付けに変化。メガは普通預金金利を年0.02%から年0.001%に引き下げるなど、預金金利は下がりました。短期金利の低下につられ、長期金利(10年物国債の利回り)も低下。生命保険会社の中には契約時に約束した利回り(予定利率)を確保できず、貯蓄性の高さが魅力とされた一時払い終身保険の販売を一時停止する例もありました。解除後は、逆に預金金利が上昇するなどの動きがありそうです。
<Q&A>「金利のある世界」で暮らしはどう変わる? 日銀マイナス金利解除決定
<Q&A>「金利のある世界」で暮らしはどう変わる? 日銀マイナス金利解除決定(東京新聞 2024年3月19日 21時13分)
日銀は19日の金融政策決定会合で大規模な金融緩和策を修正し、各銀行から預かったお金の一部に0.1%の手数料を課す「マイナス金利」の解除などを決めました。日銀が利上げするのは2007年以来となります。金利がゼロを上回る「金利のある世界」が間もなく視野に入ってきますが、経済や生活にどう影響を与えるでしょうか。(大島宏一郎、白山泉)
今回の決定で住宅ローンへの影響わずか
主な暮らしへの影響は何ですか。
A 今回のマイナス金利の解除では、住宅ローン金利などへの影響はわずかとみられます。ただ、今後も金利を上げていく場合、住宅ローンの金利も上がりそうです。
ローン利用者の約7割が選ぶ変動型はマイナス金利解除の影響が及ぶ「短期金利」と連動しています。利上げで市場からお金が減ると、銀行同士が市場で資金を調達する際のコストが増すため、変動金利が上がりやすくなります。企業への短期の貸出金利も上昇する可能性があります。
預金の金利は上がる可能性も
利上げにメリットはあるのでしょうか。
A 預金金利が上がりそうです。銀行は貸し出しで金利収入を稼ぎやすくなるため「ビジネスの原資である預金を集める」(メガバンク幹部)必要がでてくるからです。早速、三菱UFJ銀行などは、普通預金の金利をこれまでの20倍に当たる0.02%に引き上げると発表しました。マイナス金利導入後に下げられた預金金利は「前の水準に戻る」(エコノミスト)可能性があります。
経済の状況を見れば大幅な利上げは困難
金利はどうなっていくのでしょうか。
A 日銀の内田真一副総裁が2月の講演で「マイナス金利を解除しても、どんどん利上げしていくようなパス(道筋)は考えにくい」と語り、24カ月先の政策(短期)金利を「0.5%になる」とする金融市場の予想資料を示しました。日本経済研究センターがエコノミスト37人から聞き取った「ESPフォーキャスト」でも、政策金利について24年末、25年末ともに0.0~0.1%との回答がもっとも多く、日本経済の状況を考えれば大幅な利上げは難しいとみています。