自治体「マイナ激務」で早くも悲鳴…無責任政権“総点検”丸投げ、尻ぬぐい仕事が次々発生(日刊ゲンダイ 公開日:2023/06/27 06:00 更新日:2023/06/27 06:00)
マイナカードのトラブル続出を受け、岸田首相が立ち上げた「マイナンバー情報総点検本部」(本部長・河野デジタル相)は「秋までの総点検」を掲げている。そのため、膨大な点検作業を担う自治体などからは悲鳴が上がっている。
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「マイナカードの総点検は岸田政権の命運がかかっている。確実に秋までに完了させ、しかも点検後にトラブルが発覚することも許されない。国は迅速かつ精度の高い点検を自治体側に求めていくことになります」(霞が関関係者)
総務省が自治体との連絡役として60人の職員を設置したのも“お目付け”ということだ。しかし、岸田政権が無責任なのは、総点検を自治体に“丸投げ”していることだ。
「国は期限だけを示し、手法や基準は示さず、現場に丸投げ。どうやって作業を進めるのか、自治体は頭を抱えています」(都内自治体関係者)
小池都知事や保坂世田谷区町もカンカン!
早速、かみついたのが小池都知事だ。「現場の多くは区市町村で非常に膨大な量になる。『秋まで』は、なかなか厳しいのではないか。(国は)作業の方針を明確に示してほしい」とチクリ。さすが、風を読むのに長けている。
世田谷区の保坂区長も「自治体の資源を短期的に集中させ、人海作戦で検証してくれというのは筋が違う。どう考えても不合理だ」とカンカンだ。
引っ越しシーズンは大混雑が必至…
総点検以外にも自治体ではマイナンバー関連の負荷が山積みだ。
【自主返納】
保有することへの「不安」からマイナカードの自主返納が急増している。広島市は23日、自主返納が5月以降、107件に上ったと発表。石川、富山、神奈川県平塚市でも自主返納が急増している。返納対応は信頼されるカードなら、発生しなかった業務だ。
【資格確認書】
来年秋に予定されている現行の健康保険証の廃止後、マイナ保険証を持たない人に発行される「資格確認書」は、膨大な件数になりそうだ。現在、マイナカード保持者は人口の約73%。このうち健康保険証として利用登録しているのは約7割で人口の半分程度だ。仮に登録数が横ばいで推移すれば、自治体は毎年、住民の半数に資格確認書を交付するハメになる。世田谷区なら約45万人分だ。「資格確認書発行課」のような新部署がつくられるかもしれない。
【引っ越し】
引っ越しの際、新自治体への「転入届」の提出は、マイナポータルでは行えないため、引っ越す日から14日以内に来庁し、提出する必要がある。「これを怠れば、マイナカードは失効します」(デジタル庁の担当者)。
カードが失効すれば、再発行に費用は1000円、期間は1カ月以上かかる。病院に行けば、「無保険者扱い」になり、10割負担を請求される。失効を避けたい住民が押しかけ、引っ越しシーズンの役所は大混雑が必至だ。
「共通番号いらないネット」事務局の宮崎俊郎氏がこう言う。
「岸田首相が精度の高い総点検をしたいなら、マイナンバー制度の運用をいったん、停止してから行うべきでしょう。スケジュールについても自治体と相談し、無理のないものにする必要がある。結局、来秋の保険証廃止の方針を維持しているので、逆算して今秋までの総点検となっているのでしょう。時間ありきの点検ではうまくいくはずがありません」
“マイナ激務”に追われる自治体の職員が気の毒でならない。