「任意なのに義務化?」 マイナ保険証、SNSで渦巻く不信感
「任意なのに義務化?」 マイナ保険証、SNSで渦巻く不信感(毎日新聞 2022/10/13 20:02 最終更新 10/14 11:05)
現行の健康保険証を2024年秋にも廃止し、マイナンバーカードと一体化した「マイナ保険証」に切り替えるとした13日の政府発表に対し、SNS(ネット交流サービス)を中心に疑問の声が相次いだ。任意のはずのカード取得が事実上義務化されることへの反発は根強く、国葬同様に意思決定過程に疑問を呈する投稿が続出。背景には情報を一元化されることへの懸念があるとみられ、政府への不信感が横たわる。
「利便性が高まる」。河野太郎デジタル相は13日の記者会見で「マイナ保険証」への切り替えを発表し、そのメリットを強調した。だが、医療機関の受診に欠かせない健康保険証とセットで切り替えを迫る仕組みは、カードを取得するか否かを個人の判断に委ねてきた制度を事実上義務化に転換することを意味する。
これに対し、SNS上などでは激しい反発が見られ、会見が開かれた午前10時以降に投稿が急増。「マイナンバーカード」は一時トレンドのトップになった。2013年5月に成立したマイナンバー法は「住民基本台帳に記録されている者の申請に基づき、その者に係るカードを発行するものとする」(16条2項)と明記しており、その任意性を問題視する投稿が目立った。
<任意といいながら事実上義務化する政府のやり方は卑劣>
<カード取得は法律で任意性が担保されており、その原則がないがしろにされるのは「法治国家」として許されない>
<任意にもかかわらず、普及しないからと事実上強制は理不尽>
また、目を引いたのが政府の決定プロセスを疑問視する投稿だ。
<こんな重要なこと議論も精査もなく「もう決めちゃった」で済む話じゃない>
<国会でいつどのような審議をしたのか>
実は、マイナンバーカードの普及を目指し、現行の健康保険証を24年度中をめどに原則廃止する方針は6月に閣議決定された経済財政運営の指針「骨太の方針」で打ち出されていた。
しかし、今回の事実上義務化の発表は唐突感を持って受け止められたようだ。9月の国葬実施が国会での議論を経ずに閣議決定されたことへの不信感も重なり、不満が噴出。世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に対する解散命令の請求は「慎重に判断」(松野博一官房長官)とした政府の姿勢を引き合いにこんな皮肉めいた書き込みもあった。
<マイナ保険証と国葬は閣議決定で決め、解散命令の請求は「慎重に判断」なのですね>
情報漏えいの懸念を巡って、政府は「マイナンバーカードのICチップには税や年金の情報や病歴などプライバシー性の高い情報は記録されず、それらの情報はカードからは判明しない。記録される情報は、券面に記載されている情報や公的個人認証の電子証明書などに限られる」と説明。「制度、システムの両面でさまざまな安全管理措置を講じており、政府が一元管理することもない」とする。
しかし、かねてあった懸念の声は河野氏の会見後に再び強くなった。
<廃止すべきは保険証でなく、情報漏えいなど危険性が高いマイナンバーカード>
<国民は一方的に情報を握られる>
こうしたSNS上の強い反応の裏には、そもそも政府への不信感があるとみられ、カードの普及が進まない一因となっているようだ。
22年10月11日時点のマイナンバーカード交付率は49.6%。デジタル庁が発足した21年9月1日時点の37.6%から10ポイント以上増えたものの、「23年3月までにマイナンバーカードをほぼ全国民に行き渡らせる」という政府目標は遠い。
ただ、政府としては今回の発表に加え、今年12月末までの申請者を対象にカード取得などで最大2万円分のポイントが受けられる「マイナポイント第2弾」により普及を加速化させたい考えで、SNS上では河野氏の会見を好意的に受け止める反応も見られた。
<マイナポイントで得した気分>
<まとめられるものは、さっさとまとめてほしい派なのでマイナンバーカードへの集約は賛成>
<運転免許証を持っていないので、ありがたみしか感じていない>
とはいえ、どうしてもカードを取得したくない人はどうなるのか。24年秋までにカードを取得していない人の保険医療について、デジタル庁幹部は「そういう方にも(取得への)ご理解をいただくのが大方針ですが、持っていない人への対応はしっかりやりたい」と述べるにとどめており、今後の検討課題となりそうだ。
河野大臣が「マイナ保険証」“強要”表明! 総務省は“不適切”から方針転換したのか? 担当部署の回答は…
河野大臣が「マイナ保険証」“強要”表明!総務省は“不適切”から方針転換したのか? 担当部署の回答は…(日刊ゲンダイ 公開日:2022/10/14 06:00 更新日:2022/10/14 06:00)
《物価高や原料高の是正など、国民が求めている政策に対する腰は重いが、誰が求めているのか、何のためなのかよく分からないことへの対応だけは早い》
2024年秋をめどに現行の健康保険証を廃止し、マイナンバーカードと一体化した「マイナ保険証」に切り替える──と表明した河野太郎デジタル相に対し、ネット上で賛否の声が広がっている。
河野大臣は13日の会見で、「デジタル社会の形成に向けて、カードの普及、利用拡大に取り組む」と表明。24年度末としていた運転免許証とカードの一体化の時期についても前倒しを検討する考えを示した。
マイナ保険証は21年10月に本格運用を開始。医療機関や薬局に設置された機器にカードをかざし、顔認証などで本人確認を行う。
マイナンバーカードの交付率は今月11日時点で約5割にとどまり、河野大臣のマイナ保険証の切り替え表明は、カード取得を加速させるための普及策の一環だろう。
だが、マイナンバーカードの取得はあくまでも申請主義だったはず。保険証切り替えは「取得の強要」「義務」につながりかねない。そのため、ネット上でも、《おいおい、誰が保険証にしてくれと頼んだのだ》、《日本医師会の松本吉郎会長も、「医療現場でも混乱が生じる可能性がある」と話しているけれど…。急ぎ過ぎではないか》といった声が出ている。
■総務省が配布した資料に書かれていたのは…
内閣府の「経済・財政一体改革推進委員会」の「国と地方のシステムワーキング・グループ」で、総務省が2019年3月15日付で提出した「マイナンバーカードについて」と題した配布資料でも、<マイナンバーカードは罰則を伴わない形で取得を義務付けるべきではないか>との問いに対し、<マイナンバーカードは、本人の協力のもと、対面での厳格な本人確認を経て発行される必要があるが、カード取得を義務付ければ、この本人の協力を強要することとなり、手法として適当でない>とある。
「強要は適当でない」としていた総務省は方針を変えたのか。
マイナンバー制度支援室に聞くと、「(強要は適当でないという)方針は何も変わっていません」と回答。「変わっていない」のであれば、マイナ保険証の“強制的”とも言える切り替えは難しいはずだが……。