今年は猛暑と予測 気候変動の影響明らか「熱波、さらに頻繁に」

ラニーニャ現象 社会

今年は猛暑と予測 気候変動の影響明らか「熱波、さらに頻繁に」(毎日新聞 2022/6/25 10:30(最終更新 6/25 12:13)

気象庁によると、25日以降も7月1日ごろにかけて北日本から西日本で気温が平年より高くなり、各地で猛暑日になる見通しだ。今年の夏は厳しい暑さが予想されている。猛暑には気候変動の影響が指摘され、熱中症や農業被害などの対策の重要性が年々増している。

ラニーニャ現象で夏高温に

気象庁の7~9月の3カ月予報によると、南米ペルー沖の海面水温が平年より低くなる「ラニーニャ現象」などによって、大陸南部から日本の南にかけて積乱雲が発生しやすくなっている。その影響で、大陸から張り出す上空のチベット高気圧は平年より北に偏り、太平洋高気圧の北への張り出しが強くなる。北・東・西日本で暖かい空気に覆われやすくなり、高温になると予測されている。

ラニーニャ現象が起きた夏は、日本付近で高温になりやすい。8月の平均気温が北・東・西日本で統計開始以降1位(当時)を記録した2010年も夏にラニーニャ現象が発生し、日本など北半球中緯度域の気温が非常に高くなった。

※ラニーニャ現象とは
太平洋の中部から東部、ペルー沖の赤道付近で海面水温が基準値より0.5度以上低い状態が約6カ月以上続く場合をラニーニャ現象、逆に0.5度以上高い状態が続く場合をエルニーニョ現象という。一般的に、ラニーニャ現象の時、日本では冬は寒く、夏は暑くなる傾向で、エルニーニョ現象の時はその逆の傾向となる。

観測上位の気温、2000年代に集中

近年は、人間活動が原因の地球温暖化の影響も無視できない状況になっている。気象庁によると、日本の最高気温の1位は浜松市(20年8月17日)と埼玉県熊谷市(18年7月23日)の41.1度。

最高気温のランキング(各観測地点の史上1位の気温で比較)で上位20位に入った24地点(20位が5地点)のうち、20地点は07年以降に記録され、温暖化の影響が指摘されるようになったこの00年代以降に集中している。残り4地点のうち、3地点が1990年代、もう1地点は89年前に記録した山形市(40.8度)だ(※文末のランキング表を参照)。

今夏の猛暑予想でも、気象庁は「温暖化の影響等により、全球(地球全体)で大気全体の温度が高い」としている。

熱波など個々の気象現象と温暖化の関係を分析する研究も進み、「温暖化が主因」とされるケースも出てきている。気象庁気象研究所は、熊谷市で41.1度を観測した18年の記録的猛暑は「温室効果ガス排出に伴う温暖化がなければ、起こりえなかった」とする研究成果を公表。スーパーコンピューターを使った分析で、温暖化していないと仮定すると発生確率はほぼ0%だったという。

「人間の影響が大気、海洋及び陸域を温暖化させてきた」

パキスタンで50度、氷河湖決壊も

世界では今年も既に熱波の被害が発生している。世界気象機関(WMO)によると、5月中旬にはインド各地で45~50度を記録。パキスタンでも50度に達し、北部の山岳地帯で氷河湖決壊による洪水が起きたという。

欧米の研究者で作る世界気象アトリビューション(WWA)の分析によると、このような熱波が起きる確率は、温暖化が無かった場合に比べて約30倍に上昇しており、今後も温暖化に歯止めがかからなければ「こういった熱波はさらに頻繁に起き、暑さもさらに増すだろう」と警告する。

国内の最高気温ランキング

 地  点観測値(度) 観 測 日
浜松市(中区)41.12020年8月17日
埼玉県熊谷市41.12018年7月23日
岐阜県美濃市41.02018年8月8日
岐阜県下呂市41.02018年8月6日
高知県四万十市41.02013年8月12日
浜松市(天竜区)40.92020年8月16日
岐阜県多治見市40.92007年8月16日
新潟県胎内市40.82018年8月23日
東京都青梅市40.82018年7月23日
山形市40.81933年7月25日
甲府市40.72013年8月10日
新潟県長岡市40.62019年8月15日
和歌山県かつらぎ町40.61994年8月8日
群馬県桐生市40.52020年8月11日
群馬県伊勢崎市40.52020年8月11日
山梨県甲州市40.52013年8月10日
新潟県三条市40.42020年9月3日
山形県鶴岡市40.42019年8月15日
埼玉県越谷市40.42007年8月16日
新潟県上越市40.32019年8月14日
名古屋市40.32018年8月3日
群馬県館林市40.32007年8月16日
群馬県高崎市40.31998年7月4日
愛知県愛西市40.31994年8月5日
※気象庁による。各地点の観測史上1位の値で作成