毎日新聞・社説「連合の参院選方針案 『非自民』の旗降ろすのか」(2022/1/28)

芳野友子連合会長と岸田文雄総理 政治・経済

【元記事】
毎日新聞 社説 連合の参院選方針案 「非自民」の旗降ろすのか(毎日新聞 2022/1/28)

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「連合」はもはや労働者の見方ではない。正体は、経営者と自民党にすり寄る「労働貴族」。

今後は単なる政府への陳情団体になっていくのだろうか。

労働組合の全国組織、連合(加盟組合員・約700万人)が、今夏の参院選では支援する政党名を具体的に明示しない基本方針案をまとめた。

支持してきた旧民主党勢力が分裂し、統一行動を取るのが難しくなっている事情はあろう。だが、この方針が正式に決まれば、連合の「野党離れ」、ひいては「政治離れ」が進む可能性が大きい。

一方で最近は岸田文雄政権との接近が目立つ。経団連など経営側が支持する自民党に近づくことで、非正規を含め、働く人全体の利益を守れるのか、疑問が募る。

連合は1989年、旧社会党系の総評と旧民社党系の同盟が結集して発足した。これが野党の再編につながり、「非自民」の細川護熙政権誕生(93年)や、旧民主党への政権交代(2009年)にも大きな役割を果たしてきた。

一貫して目指してきたのは政権交代が可能な政治体制だったはずだ。そのために「非自民」勢力の結集に力を注いできたのではなかったか。その旗を降ろすことにもなりかねない。

今回の案では、名指しは避けたものの、共産党と協力する候補者は推薦しない方針も記した。昨秋の衆院選で、芳野友子会長が立憲民主党と共産党の連携に異論を唱え続けたことを踏まえたものだ。

連合は共産党系の労組と長く対立してきた。とはいえ、この主張が連合と立憲との距離をかえって広げているのは間違いあるまい。

1月5日の連合の新年交歓会では岸田首相があいさつに立った。立憲の泉健太、国民民主党の玉木雄一郎両代表も出席していたが、壇上に登る機会はなかった。

確かに賃上げという目標は、岸田政権と一致している。芳野会長は、首相が掲げる「新しい資本主義」を検討する政府の有識者会議のメンバーでもある。

しかし、「新自由主義からの転換」は本来、連合こそが率先して取り組むべき課題だろう。

参院選では引き続き大企業や自治体の労組関係者の当選は目指すという。これも身内の利益だけは守ろうとしているように映る。

政治とどう関わっていくのか。本質的な議論がもっと必要だ。