太陽光発電で270万円の大損… “エコ意識”主婦がだまされた業者の手口
太陽光発電で270万円の大損… “エコ意識”主婦がだまされた業者の手口(福谷陽子 法律ライター・元弁護士 finasee 2022.01.07)
世の中には「早くお金を増やせたらいいのに」という気持ちにつけこんだ儲け話や悪質商法が溢れています。元弁護士・法律ライターの福谷陽子氏が実際によくある事例を通して解説する当シリーズ。今回は「太陽光発電詐欺」について紹介します。
SDGsが世界中で注目される中、「太陽光発電」もエコな発電方法として期待を集めています。
実は太陽光発電に関する詐欺や悪徳商法も多いので、注意しなければなりません。悪徳業者が逮捕される事例も相次いでいます。
今回は太陽光発電でだまされた田島さん(仮名、35歳女性)のストーリーをもとに、太陽光発電詐欺の実態やパターン、対策方法をみていきましょう。
田島さんの場合
田島さんは、夫(38歳)と2人の子どものいる会社員です。夫と一緒に住宅ローンを組み、念願のマイホームを購入しました。新しい家に家族みんなで住めて、田島さん夫婦は大満足していました。
そんなとき、自宅へ電話がかかってきました。
話を聞いてみると、「太陽光発電機を設置すると電気代が下がるし、売電すれば収益も得られますよ」「よかったら、今の電気代からどのくらい下がるか、収益をどの程度得られそうかシミュレーションしましょうか?」とのこと。
田島さんの勤務先でも最近SDGs関係の話題が多く、エコ意識が高まっていたところでした。また田島さんはお得情報が大好きな節約家で、「光熱費が下がってお得ならぜひ話を聞きたい」と思い、自宅へ説明に来てもらうことにしました。
太陽光発電の契約
太陽光発電の業者が家に訪ねてくると、田島さん宅の様子を見て今の電気代の概算額などを聞き取り、以下のようなシミュレーションを出してきました。
●支払う電気代は0円になる
●売電収入は年間40万円くらいになる見込み
田島さんが「費用はどのくらいかかるのか?」と尋ねると、以下のような返答でした。
●太陽光発電機の価格は500万円だが、自社では販売実績が高いので委託先から信頼されており、特別に定価から大幅に割り引ける
●モニターになってもらえたら、モニター価格でさらに3割引きにできる
●初期工事費用は特別に無料にする
●自社負担の補助金を出せるので、特別にさらに割引ができる
業者から最終的に提示された金額は250万円でした。
田島さんは、もともとの価格の半額で太陽光発電機をつけられて、電気代の支払いが0円になる上に売電収入も得られるのは大変お得だな、と思いました。
夫と相談したところ「いいんじゃない? ローンを組むのは好きじゃないから一括で払おうよ」と賛成してくれたので、一括で250万円を払い、太陽光発電の契約をしました。
追加の工事費用
契約後、太陽光発電の機械を設置する工事が始まると、業者から「自宅を詳細に調べた結果、追加工事が必要になった」と連絡がありました。
「今回、特別に工事費用を無料にしているけれど、追加の分だけはご負担お願いできませんでしょうか?」「このままでは工事を進められません……」と言われてしまったので、田島さんは「仕方がないか」と思い、20万円の追加工事費用を支払いました。
収益を得られない
太陽光発電機は無事に設置されましたが、問題が発生。業者が話していたほどの売電収入を得られなかったのです。
業者は「年に40万円くらいは軽くもうけられる」と言っていましたが、実際に得られたのは月1万3千円程度。これでは元を取るのに15年以上かかってしまいます。
また後から調べて分かったことですが、太陽光発電の売電収入は「設置後11年目」から低下し、近年では売電価格がだんだんと切り下げられていることも判明しました。
これでは10年間ですら今の売電収入を維持できるかも分かりませんし、11年後からは収支がマイナスになってしまう可能性もあります。
このような収益性のリスクについて、業者からは一切説明がありませんでした。
経費がかかる
田島さんが太陽光発電の契約をしたとき、経費については「工事費用と初期費用がかかる程度です」と言われていました。
ところが実際に太陽光発電機を設置すると、機械のメンテナンス費用や保険料などの維持費がかかり、さらに収益性が低下してしまいました。
相場より高額だった
田島さんは「さすがにおかしい、もしかしてだまされたのではないか?」と考えて太陽光発電の相場を調べてみました。
すると田島さんの自宅程度の広さの場合、太陽光発電機の相場は150万円程度であると発覚しました。250万円払ったので、100万円も多く支払ったことになります。また田島さんの自宅の立地からして、そもそも太陽光発電機の設置に向かない事実も発覚しました。
田島さんが「納得できない」と思って業者に連絡すると、「契約してしまった以上、こちらにはどうしようもありません」とのこと。
田島さん夫婦は、不要な太陽光発電機を設置されて270万円もの金額を払わされ、大損をしてしまったのでした。
太陽光発電でだまされた“エコ意識”主婦…失った270万円を取り戻す方法は?
太陽光発電でだまされた“エコ意識”主婦…失った270万円を取り戻す方法は?(福谷陽子 法律ライター・元弁護士 finasee 2022.01.07)
太陽光発電の詐欺や悪質商法の手口
太陽光発電については詐欺や悪質商法が非常に多いので、注意が必要です。田島さんのように、一般の消費者がだまされるケースもありますし、投資に関する詐欺も少なくありません。
消費者がだまされるパターン
消費者がだまされるパターンとして多いのは、田島さんのように「売電収入でもうかる」「光熱費を節約できる」「モニター価格でお買い得」などと言われて高額な費用を払わされるパターンです。
実際には太陽光発電機自体が相場より高額だったり工事費用がかかったりして、不必要に高い金額を払わされてしまいます。悪質な業者が契約後に太陽光発電機を設置せず、逃げてしまう事例もあります。
投資話でだまされるパターン
自宅に太陽光発電機を設置するのではなく、「太陽光発電へ投資しましょう」と誘われる詐欺もよくあります。
「もうかる投資、副業をやってみませんか?」「利回りは年20%以上になりますよ」などと勧誘し、太陽光発電に投資をさせてお金をだましとるパターンです。
もちろん説明されたような高いリターンは得られません。悪質な場合、投資資金を持ち逃げされてしまいます。
副業に関心がある会社員の方もだまされやすいので、要注意です。
太陽光発電詐欺で逮捕された事例
太陽光発電詐欺で実際に逮捕された事例をご紹介します。
太陽光発電関連会社の元社長が2015年6月から2016年1月ごろにかけて、取引先へ「個人資産を運用しませんか?」「太陽光発電所を購入すればもうかりますよ」などと持ちかけて、4億円以上ものお金を払わせたケースです。投資話は架空のもので詐欺でした。
太陽光発電詐欺に遭った場合の対処方法
太陽光発電詐欺に遭ったら、以下のように対応しましょう。
クーリングオフ
田島さんのケースのように、消費者が業者の訪問販売で太陽光発電機を購入した場合、クーリングオフができます。契約書とクーリングオフ書面の交付後8日間であれば、無条件で取り消しできるのです。
「おかしい」と感じたら、早めに相手へクーリングオフ通知を発送しましょう。
8日間は業者からクーリングオフ書面を交付されてからカウントするので、書面を受け取っていなければいつまででもクーリングオフできます。
取消
クーリングオフ期間が過ぎても、業者からだまされて契約した場合には詐欺や錯誤による取り消しを主張できる可能性があります。
ローンの支払い停止
ローンを組んで太陽光発電機を購入してしまった場合でも、クーリングオフや取消などの抗弁事由があれば支払いを停止できます。クレジットカードやローン会社へも支払い停止の抗弁書を送りましょう。
弁護士に相談
自分で業者に連絡しても対応してもらえない場合、弁護士へ相談してみてください。
クーリングオフや取り消し通知の作成・発送、クレジットカード会社への対応、業者との交渉などを任せられます。
最後に
太陽光発電はエコで良い面もたくさんありますが、詐欺も横行している世界です。少しでも「おかしい」と感じたら、早めに専門家に相談してみてください。