福島原発の処理水、政府は海洋放出の方針 トリチウム1グラムで1000人を殺傷

福島第1原発処理水タンク 科学・技術

福島原発の処理水 政府は海洋放出の方針、全漁連は絶対反対

東京電力福島第一原発で発生した汚染水を浄化処理した後の放射性物質トリチウムを含む水について、政府は海へ放出処分する方針だ。

菅義偉首相は7日、全国漁業協同組合連合会(全漁連)の岸宏会長らと官邸で面会し、処理水の処分に理解を求め、「近日中に判断する」と表明した。

一方、岸会長は「絶対反対の考えはいささかも変わらない」と、改めて海洋放出反対の考えを明言。水産業者らが懸念する風評被害の対策について「首相から聞いていない」と憤った。

福島第一原発では、事故で溶け落ちた核燃料(デブリ)が残る原子炉への注水などで大量の汚染水が発生。東電は、汚染水をトリチウム以外のほとんどの放射性物質を取り除ける多核種除去設備(ALPS)で浄化処理した水を、構内の大型タンクで保管。その量は125万トンに上り、タンクの数は1000基を超える。来年の秋ごろに満杯になる。

一般に『風評被害』を心配するが、そもそもトリチウム水は『安全か !! 』

トリチウムの安全性に関して、厚生労働省は、「海水中に水として存在することから、人体や魚介類等の生物に摂取されても速やかに排出され、蓄積しないとされています」、経済産業省・資源エネルギー庁も、「トリチウム水を飲み込んでしまった場合でも、通常の水と同じように外へ排出され、特定の臓器などの体内に蓄積されていくことはないと見られています」としている。

また、東京電力も、「トリチウムは・・自然界や水道水のほか、私たちの体内にも存在します。ベータ線という弱い放射線を出しますが、そのエネルギーは小さいため、紙1枚で遮ることができます。日常生活でも飲水等を通じて体内に入りますが、新陳代謝などにより、蓄積・濃縮されることなく体外に出ていきます」としている。

このように、政府及び東電側は安全性を強調する。しかし、トリチウムの健康影響や生物濃縮を指摘する研究もある。

実際に、カナダ、日本、ドイツ、アメリカ、イギリスなどの原子力施設近傍の住民に、小児白血病、新生児死亡、遺伝障害などの増加が観察されている。

ノーベル賞受賞の故・小柴昌俊教授 トリチウムを燃料にする核融合実験に反対の嘆願書を提出

小柴昌俊教授は、世界で初めてニュートリノという素粒子を観測することに成功し、2002年にノーベル物理学賞を受賞した。小柴氏は、東大教授として1983年に岐阜県の鉱山跡地の地下に観測施設「カミオカンデ」を建設し、超新星から飛来する素粒子「ニュートリノ」を観測して、「ニュートリノ天文学」という新しい学問分野を切り開いた。

その小柴氏が、2003年3月10日、トリチウムを燃料とする核融合実験に反対の嘆願書を、小泉純一郎総理(当時)に提出した。トリチウム1グラムで1000人(2kgで200万人)を殺傷する能力があるという。

嘆 願 書

内閣総理大臣
小泉純一郎殿

嘆願書

「国際核融合実験装置(ITER)の誘致を見直して下さい。」

理由:核融合は遠い将来のエネルギー源としては重要な候補の一つではあります。しかし、ITERで行われるトリチウムを燃料とする核融合炉は安全性と環境汚染性から見て極めて危険なものであります。この結果、たとえ実験が成功しても多量の放射性廃棄物を生み、却ってその公共受容性を否定する結果となる恐れが大きいからです。

・燃料として装置の中に貯えられる約2キログラムのトリチウムはわずか1ミリグラムで致死量とされる猛毒で200万人の殺傷能力があります。これが酸素と結合して重水となって流れ出すと、周囲に極めて危険な状態を生み出します。ちなみにこのトリチウムのもつ放射線量はチェルノブイリ原子炉の事故の時のそれに匹敵するものです。

・反応で発生する中性子は核融合炉の10倍以上のエネルギーをもち、炉壁や建造物を大きく放射化し、4万トンあまりの放射性廃棄物を生み出します。実験終了後は、放射化された装置と建物はすぐ廃棄することができないため、数百年に亘り雨ざらしのまま放置されます。この結果、周囲に放射化された地下水が浸透しその面積は放置された年限に比例して大きくなり、極めて大きな環境汚染を引き起こします。

以上の理由から我々は良識ある専門知識を持つ物理学者としてITERの誘致には絶対に反対します。

平成15年3月10日

小柴昌俊(ノーベル物理学者)
長谷川晃(マックスウエル賞受賞者、元米国物理学会 プラズマ部会長)