「国防族」「推薦人」「旧安倍派ゼロ」…身内偏重の石破新内閣 解散急ぐのは、ボロを出さないため?

自民党役員らにあいさつ回りをする石破首相(中央) 政治・経済

「国防族」「推薦人」「旧安倍派ゼロ」…身内偏重の石破新内閣 解散急ぐのは、ボロを出さないため?(東京新聞 2024年10月2日 06時00分)

石破茂首相は1日、閣僚に自民党総裁選で自らの推薦人となった議員らを積極的に登用し、親交の深い「国防族」も重用するなど、新政権は「身内偏重」が顕著な顔ぶれとなった。派閥の政治資金パーティー裏金事件の渦中にある旧安倍派の議員は外し、政治とカネの問題に厳しい姿勢を演出した。かつて物議を醸す発言をした議員も入閣させた人選には、どんな意図が込められているのか。(坂田奈央、長崎高大)

 首相は1日、官邸での記者会見で「国民に真実を語るのが政治の役割だ。国民に納得、共感いただける政治を進める」と強調した。

安全保障政策への思い入れ反映

「納得と共感」を掲げた新政権の閣僚は首相と気心の知れた仲間が多く、推薦人は20人のうち、6人も入閣。とりわけ目立つのは、首相の思い入れが強い安全保障政策に詳しい「国防族」の防衛相経験者らだ。

アジア版NATO(北大西洋条約機構)創設や日米地位協定改定といった持論は党内外で「本当に実現できるのか」と疑問視する声が根強い。首相が得意とする分野で独自政策を推進するために、旧知の岩屋毅外相や中谷元・防衛相を充て、党政調会長には小野寺五典元防衛相を就けた。

「防災省」創設へ布石も

「防災省」創設に向けても、最側近の赤沢亮正経済再生担当相に「防災庁設置準備担当」を兼務させた。党内で「今の体制で災害対応に支障はない」と否定的な声が上がるが、実現に執着する姿勢を示した。

安倍政権以降、「党内野党」として「冷や飯食い」が続いた首相の仲間らが相次いで入閣した一方、高市早苗前経済安全保障担当相の推薦人に多数が名を連ねた旧安倍派からの入閣はなかった。ある閣僚は「自民党は(路線転換で政権を維持する)振り子でやってきたからこれでいい」と自賛するが、非主流派に追いやられた議員から「論功行賞人事」「非刷新感」と恨み節が絶えない。

歯に衣着せぬ発言、火種にも

特に反発が強いのは、首相と当選同期で気脈を通じる村上誠一郎総務相の起用だ。2022年に銃撃された安倍晋三元首相の国葬に反対して「財政、金融、外交をぼろぼろにし、官僚機構まで壊した。国賊だ」と非難し、党の役職停止1年の処分を受けた過去がある。

村上氏は1日、記者団に「遺族の方にはすぐに謝罪した」と釈明しつつ「残念ながらアベノミクスのある面では負の遺産だと思う。そういうものを対応しながらやっていくのが非常に厳しい」と指摘した。旧安倍派議員は「みんな許さない」と憤り、無派閥の中堅議員は「火種になるような人事」と懸念する。

身内にも矛先を向けるような歯に衣(きぬ)着せぬ閣僚の言動は、野党に攻撃材料を与えることになりかねない。初入閣は13人に上り、不祥事や問題発言への不安も尽きない。「全閣僚出席の予算委員会で、政権は何を目指すかを国民に示した上で信を問うべきだ」としていた首相が前言を翻した背景には、ぼろが出ないうちに解散総選挙を急ぐ「党利党略」が垣間見える。