岸田首相“ごまかし”骨太の方針で50代世帯は社会保険料年4万7千円増!

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岸田首相“ごまかし”骨太の方針で50代世帯は社会保険料年4万7千円増!(女性自身 記事投稿日:2023/06/22 06:00 最終更新日:2023/06/22 06:00)

「女性自身」2023年7月4日号

「岸田首相は『実質的な追加負担はない』と強調しますが、負担のない政策なんてありえません」

そう指摘するのは関東学院大学経済学部教授の島澤諭先生だ。

6月16日「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」が閣議決定された。23年の目玉は少子化対策だ。’24年度からの3年間は年3兆円台半ばの予算を確保して集中的に取り組み、30年までに少子化トレンドの反転を目指すという。

そのための政策は、児童手当の拡充や高等教育の費用負担軽減、親の就労にかかわらず子どもを預けられる「こども誰でも通園制度」の創設、育児休業給付の引き上げ、選択的週休3日制度の普及などにも及ぶが……。

「首相が打ち出す『子ども予算の倍増』という規模ありきで決まった印象です。子育て支援に偏りすぎていて、少子化への効果のほどは大いに疑問ですね」(島澤先生)

また、首相は「追加負担なし」を公言するものの、財源は社会保険料の上乗せが有力視されている。

「社会保険料は現役世代が9割を負担していますから、結婚・出産はまだの若者にも、子育てが一段落した50代世帯にも負担が広がります。社会保険料が上がると手取り収入が減り生活が厳しくなるので、若者は結婚・出産をあきらめる人がさらに増え、50代世帯は老後資金作りに支障をきたす恐れがあります」(島澤先生)

果たして私たちの負担額はいくらになるのだろう。

「世帯主が50代の世帯では、平均月約8万円の社会保険料をすでに負担しています。

仮に3兆円台半ばといわれる子ども予算を3兆5千億円とし、そのすべてを社会保険料で賄うとしたら、保険料率を4.8%アップすることが必要です。社会保険料は50~54歳で月3千903円、55~59歳で月3千843円の負担増。年間約4万7千円というかなり重い負担増です」(島澤先生)

そのうえ、高校生に児童手当を支給する代わりに、16~18歳の子どもを扶養する親を対象とした38万円の扶養控除を見直す動きもある。

「児童手当の増額は収入アップにつながりますが、扶養控除がなくなればその分、納税という支出が増えます。年収などから試算すると、子育て世帯の約4割はかえって増税になってしまうのです」(島澤先生)

だまし討ちのような少子化対策だが、以前から財源に関する議論があるのに、首相はなぜ「追加負担はない」などと言うのだろうか。

「23年の骨太の方針の大きな問題は、財源が示されていないこと。ですから首相発言の真意はわかりませんが、カラクリの正体は少子化対策予算のひとつ『支援金制度』にあると思います」(島澤先生)

支援金制度の原型は現行の「子ども・子育て拠出金」といわれる。これは企業や雇用主が負担するもので現在の料率は0.36%。これ4~5%などに引き上げ、支援金制度を構築するのだろう。

「拠出金はあくまでも企業や雇用主が負担するので、『国民の追加負担はない』体裁は整います。 ですが、企業にすれば拠出金も人件費の一部。拠出金の負担が重くなれば賃上げを控え、雇用する人数を絞るなど人件費を抑えようと動く可能性が高い。

結局、企業の負担は必ず従業員にまわってきます。少子化対策の負担は、国民が負うことになるのは間違いありません」(島澤先生)

岸田首相のいう「追加負担なし」こそがごまかしだったとは!」

退職所得課税控除の見直しも老後資金には打撃となる

加えて、少子化対策の目標設定や効果検証を国が行っていないことが問題だという。

経済財政諮問会議の試算によると、年間5兆円の予算をかけると60年には人口が90万~180万人増えるそう。だが年5兆円を60年まで続けるとすると総予算は約200兆円だ。1人当たりを換算すると……。

「子どもを1人増やすのに、1億~2億円かかる“異次元にコスパの悪い政策”といえます」(島澤先生)

家計が厳しい国民に負担を強いておいて、それはないだろう。

島澤先生いわく、少子化には、若者が経済的な理由から結婚できない、子どもが欲しくてもあきらめるなどの要因も大きい。国の支援は子育てに限定せず、結婚なども含めた多角的なものでなければ、少子化トレンドの反転はむずかしいといわざるをえないのだ。

骨太の方針には、もうひとつ50代世帯が見過ごせない「退職所得控除の見直し」がある。

「退職金は年功序列、終身雇用の時代から、長く勤めた人が得になるように設計されています」

そう話すのはファイナンシャルプランナーの山中伸枝さん。だが、国は人材の流動化を促すため、転職しやすい社会を作りたいのだ。

「現行では勤続20年を境に差がありますが、国は勤続年数に関係なく、一律で40万円×勤続年数=退職所得控除にするつもりだろうと見られています」(山中さん)

勤続38年のAさんの退職所得控除は現行では2千60万円だが、変更後は1千520万円に減る(上図参照)。退職金が2千万円の場合、現行では非課税だが、変更後の納税額は約38万円。大切な老後資金が目減りしてしまう。

「退職所得控除見直しは、実はiDeCo(個人型確定拠出年金)にも影響します」(山中さん)

iDeCoの一時金と退職金を同年に受け取る場合、その合算額から退職所得控除を差し引くことになる。上図のとおり、先のAさんは退職所得控除の見直しによって、約56万円も余計に税金がかかることになるのだ。

「退職所得控除の見直しでiDeCoの控除額も減り、運用益だけでなく元本にも税金がかかるのは大問題だと思います」(山中さん)

最後に島澤先生は指摘する。

「骨太の方針に財源を記さないのは、負担増を国民に知らせたくないからでしょう。負担増がわかれば、今後の選挙に影響しますから」

「女性自身」2023年7月4日号