防衛費増額の財源法案 「まやかし」は通用しない(毎日新聞 2023/4/18)
「丁寧に説明する」と繰り返すばかりでは、国民の疑問に答えることにはならない。
政府は、今年度から5年間の防衛費を総額43兆円に増額する方針だ。過去の水準から約17兆円の上積みが必要となる。
財源の一部を確保するための法案が、衆院で審議されている。新設する「防衛力強化資金」に、特別会計からの剰余金などの税外収入を繰り入れる。
それ以外は、毎年度予算の使い残しである決算剰余金と、予算を効率化する歳出改革、増税によって捻出することを想定している。
しかし、いずれも実際にどれだけ確保できるかは不透明だ。
税外収入や決算剰余金の規模は年度ごとに変動する。必要な額に達する保証はない。
歳出改革は、具体的にどの項目を削減するのかさえ明らかにされていない。法人税などの増税を実施する時期も未定だ。
ところが、岸田文雄首相は国会で「しっかりと財源を確保する」「機動的に対応する」などと答弁するだけだ。
不確実な財源をさも当てにできるかのように語る。まやかしの姿勢は通用しない。結果的に財源を確保できず、国債頼みに陥る恐れがある。
政府はすでに、建設国債を自衛隊の施設整備費などに充てる措置にも踏み切っている。
先の大戦では、戦時国債の乱発によって無謀な軍備拡張が進められた。その教訓を踏まえ、戦後、防衛費のための国債発行は「禁じ手」とされてきたことを忘れてはならない。
決算剰余金などは従来、景気対策などの財源に使われてきたが、それもできなくなる。国債で穴埋めすれば、財政は一層悪化し、将来世代へ回るツケが増える。
日本を取り巻く安全保障環境の変化に応じた防衛力の整備は必要だろう。だがそもそも、関連予算を2027年度に国内総生産(GDP)比2%に倍増させる目標が、なぜ必要なのか。首相は説明を怠り続けている。
「数字ありき」の増額は防衛政策だけでなく、財政にもひずみを生みかねない。国会論戦を通じ、問題点を徹底的に洗い出さなければならない。