内容も財源も課題山積…「こども未来戦略会議」初会合 6月大枠決定目指す 教育施策手薄で自民から不満も

少子化対策「こども未来戦略会議」立ち上げ 政治・経済

内容も財源も課題山積…「こども未来戦略会議」初会合 6月大枠決定目指す 教育施策手薄で自民から不満も(東京新聞 2023年4月8日 06時00分)

政府は7日、少子化対策の予算額や財源を議論する「こども未来戦略会議」の初会合を開いた。先月に少子化対策のたたき台(試案)をまとめたことを受け、6月の大枠決定に向けて次の段階に進むが、金額などの具体策が固まっていない施策が羅列されているのが現状。議論すべき課題は山積している。

日本の少子化
出生数は、第2次ベビーブームだった1973年の約209万人をピークに減少傾向が続き、2022年に初めて80万人を割り込んだ。政府は保育サービスの充実などを盛り込んだ1994年の「エンゼルプラン」以降、さまざまな少子化対策を講じてきたが、歯止めはかかっていない。経済的な理由で結婚や出産を諦めざるを得ない実情や、仕事と子育ての両立の難しさなどが背景にある。

自民の茂木幹事長は数字言及も、政府は沈黙

自民党の茂木敏充幹事長は4日のBS日テレ番組で、たたき台が2024年度からの3年間を集中取組期間と位置づけたのを踏まえ「3年間に大体、どれぐらい(予算が)かかるかは示さないといけない」と強調。「仮に本年度のこども家庭庁予算の3分の2となると、3兆円台になる」と具体的な数字に言及した。

党側の発信とは対照的に、政府は「予算規模を正確に答えることはできない」(小倉将信こども政策担当相)と沈黙する。全体像を示していないからだ。

児童手当の拡充には年間で兆円単位の追加予算が必要なことは確実。学校給食費の無償化は4000億〜5000億円とされる。だが、保育士の配置基準「改善」や育休給付金の拡充などを合わせ、3年間のどこで何を始め、どう予算を振り向けるのかは不明。議論は子育て当事者らが加わった未来戦略会議に委ねられる。

高等教育の負担軽減、児童手当拡充…効果問う声も

全体像を検討していく過程で、内外から政策効果を問う声が上がる可能性もある。

例えば高等教育の負担軽減。多くの専門家らが教育無償化の効果を強調する中、修士課程の学生を対象に授業料後払い制度の導入が盛り込まれたが、返済しなければならないのは貸与型奨学金と同じで無償化とは程遠い。教育関連の施策は手薄に見え、身内の自民党からも「この内容なら厚生労働省だけで取り組めばいい」(遠藤利明総務会長)と不満が噴出している。

たたき台の柱である児童手当の拡充については、金額は未定ながら所得制限の撤廃と高校卒業までの支給延長、子どもが複数いる多子家庭への加算を打ち出した。どこまで出生率を押し上げられるのか。人口問題に詳しい日本総研の藤波匠氏は「児童手当を増やすに越したことはないが、経済的な理由で第一子出産にたどりつけない人が増えていることが少子化の要因。多子加算の効果は薄い」と指摘する。

社会保険料に上乗せ案も過去に頓挫

財源を巡って政府・与党内で拡大しつつあるのは、増税や国債でなく、社会保険料に一定額を上乗せして確保する案だが、過去に構想が頓挫した経緯もある。

2017年に自民党の小泉進次郎衆院議員らは年金保険に上乗せして子ども・子育て政策に充てる「こども保険」の導入を提案。議論の際、年約1兆7000億円の財源を生み出すため、厚生年金保険料率を0.5%引き上げ、国民年金保険料には月830円を加算するとの試算も出た。

だが、子育てと無関係の国民らに反発が広がり、立ち消えになった。今回は社会全体で子育てを担うという理念を掲げており、検討する場合は幅広い世代が負担する仕組みのあり方などが焦点になるとみられるが、曲折も予想される。