次世代の日本の大型ロケット「H3」打ち上がらず 主エンジン点火も

着火信号が出ず、飛び立つことができなかったH3ロケット1号機=17日午前10時39分、鹿児島県の種子島宇宙センター 科学・技術

次世代の日本の大型ロケット「H3」打ち上がらず 主エンジン点火も(朝日新聞 2023年2月17日 11時02分)

新型ロケット「H3」の初号機が、17日午前10時40分ごろの予定時間に鹿児島県の種子島宇宙センターから打ち上がらなかった。宇宙航空研究開発機構(JAXA)によると、主エンジンは着火したものの、固体補助ロケットブースターが着火しなかった模様。H3には地球観測衛星「だいち3号」を搭載していた。

H3は現在の基幹ロケット「H2A」の後継機として、JAXAと三菱重工業が共同開発した液体燃料ロケットで、新規の大型ロケットの打ち上げは約30年ぶりだった。従来の1.4倍の推力で打ち上げる主エンジン「LE9」を開発。国際競争力を高めるため打ち上げ費用はH2Aの半額の50億円をめざしていた。

だいち3号は、2011年に運用終了した初代「だいち」の後継機の衛星。地上の物体を見分ける能力を初代の約3倍に向上させ、災害時の状況把握に活用する計画だった。

「H3」はどんなロケット? コスト半減目指した新型

H3ロケット、発射できず ブースターが着火せず JAXA(毎日新聞 2023/2/17 10:50 最終更新 2/17 18:53)より抜粋

1994年にデビューしたH2ロケット以来、29年ぶりに国産主力機を刷新した。H2を改良し2001年から運用する現在の主力機H2Aロケットは24年度に50号機を最後に引退。H3が今後20年間の日本の宇宙輸送の中心を担う。

H3は全長約63メートル(初号機は約57メートル)、直径約5.2メートル。H2Aより一回り大きく、衛星打ち上げ能力を1.3倍に高めた。一方で開発や部品の低コスト化を図り、1回の発射費用を最小形態でH2Aの半額の約50億円に下げることを目指す。

H2Aは衛星の受注後に生産するため、受注から発射まで約2年かかっている。H3はエンジンやブースターなどを共通化して事前に生産し、衛星に応じて組み合わせて造る方法にし、これを1年に縮めた。工程の短縮により、年6回程度の高頻度の発射を目指す。柔軟性や信頼性、低価格をアピールし、衛星受注を増やして国際競争力を強化するのが狙いだ。

H3はJAXAと三菱重工業が14年から共同開発した。当初は20年度の初号機発射を予定していた。しかし新型の主エンジン「LE-9」のタービンの動翼にひびが入るなどの不具合があり、2回延期された。

JAXAは23年度に発射する3号機以降、H3の発射業務を同社に移管し、商業化を進める方針だ。米国が中心の国際月探査「アルテミス計画」に活用する新型補給船「HTV―X」の打ち上げにも使う。