深刻な地球温暖化 2100年には「日本全国140地点で40℃超え」の予測も(女性セブン 2022.08.21 07:00)
「今年、熱中症などの暑さの影響により亡くなった人の数は国内で1万5000人を超えました。この猛暑は災害の1つ。多くの命を奪う気象災害です」
テレビに映る女性キャスターが全国的に「激暑」であり、全国140地点で40℃を超えていることや埼玉県熊谷では今夏44℃超えの日が22日になったと平然と伝える。過酷な予報に気が遠くなるばかり──。
この天気予報は環境省が公開している動画「2100年 未来の天気予報 夏」のワンシーン。このまま有効な対策をとらずに地球温暖化が進行すると、2000年頃と比較して平均気温が最大4.8℃ほど上昇する予測を踏まえてシミュレーションした2100年の天気予報である。
環境省が天気予報をシミュレーションした西暦2100年は多くの人が立ち会えない未来だが、海外の専門家らは違う未来を予想している。
2017年7月、オーストラリア国立大学キャンベラ校の研究者らが率いた研究チームは、オーストラリアでは2040年までに夏の日中気温が50℃を超える都市が現れるだろうという論文を発表した。
今年7月には、ポルトガルで最高気温が47℃に達し、スペインでも45℃以上を記録。フランスでも観測史上最高気温を塗り替えた。まさに、50℃近い気温が当たり前の世界を迎えようとしている。日本もそれほどの高温に見舞われるのだろうか。気象予報士の森朗さんが解説する。
「欧州で47℃を超える地点が出る一方、日本の最高気温記録は41.1℃です。日本は海に囲まれているので比較的熱が逃げやすい環境にあり、欧州ほど高温になることは考えにくい。ただ、20世紀にはめったにならなかった40℃台が2010年代からは頻繁に観測されるようになり2013年夏は8回、2018年は17回とかなり頻出。近い将来、日本の夏は40℃以上が当たり前になるでしょう」
日本にそんな「激暑」が訪れるとき、私たちの生活にはどんな影響があるのか。
猛暑や集中豪雨が起きやすくなった背景には地球温暖化の影響がある
梅雨のない北海道を除く全域が、史上最速の6月中に梅雨明けした今年の日本は猛暑日が続いている。梅雨明けすぐの7月1日に埼玉県の熊谷をはじめとする6地点で40℃を超えたほか、8月9日に東京は14日目の猛暑日を数え、過去最多記録を更新。毎日のように熱中症警戒アラートが発表されている。
一方、線状降水帯による集中豪雨が各地に水害を引き起こしたほか、台風も列島を駆け抜けた。まさに今年は異常気象の“フルコース”を体験している。
「一つひとつの現象は、エルニーニョ現象やラニーニャ現象の影響や、日々の気圧配置が原因です。ただ、長期的に猛暑や集中豪雨が起きやすくなった傾向を考えると、背景には地球温暖化の影響があります」(森朗さん・以下同)
もはや聞き慣れた地球温暖化だが、具体的に何なのか。
「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)という国際機関の報告書では、地球温暖化の原因は人為的な二酸化炭素(CO2)の排出であると名指しされています。特に産業革命以降、気温が急上昇しているという事実があり、工業化が進んだことが原因だろうと推測されているのです。地球の大気をシミュレーションするシステムでも、二酸化炭素を増やすと気温が上がるという実験結果が出て、この説を裏付けています」
二酸化炭素が出ると、なぜ温暖化が進むのか。
「地球上には太陽からの光が降り注ぎ、地球は宇宙にエネルギーを放出している。ところが、そのまま熱が出ていってしまっては温度が低すぎて、生物が暮らせない。大気中に水蒸気や二酸化炭素、メタンガスなどの『温室効果ガス』と呼ばれるガスがあることにより、大気中に熱を蓄積できる。温室効果ガスが保温することで人間が暮らしやすい温度を保っているのです」
本来は、ありがたい存在であるはずの温室効果ガス。しかし、二酸化炭素の排出量が増えすぎると温室効果が高まって地球の気温が上昇する。それが温暖化につながるのだ。温室効果ガスの中にはいくつかの種類があるが、温室効果が最も高いのは水蒸気だ。ただし、水蒸気は雨になって落ちたり、海に流れたり、蒸発したりと一定の量ではなく、人間がコントロールするのは不可能といえる。
一方、二酸化炭素は産業革命から人間が大量に排出しているもので、ある程度量をコントロールするのは可能だ。
「温暖化を進める引き金になっている温室効果ガスには、二酸化炭素だけではなく、下水や湿地から出るほか、家畜化した大量の牛のゲップなどにも含まれるメタンガスも挙げられています。いろいろなことが玉突き式に起きて、影響し合っているのが温暖化なのです」
※女性セブン2022年9月1日号