中国の太平洋島嶼国関与に警戒 日米豪など連携で対処(産経新聞 2022/6/13 21:09)
政府は太平洋島嶼国への関与を強める中国に警戒を強めている。ソロモン諸島が中国と安全保障協定を締結した上、この地域が中国軍の拠点となれば日本の安全保障環境の悪化につながるからだ。米国、オーストラリアも中国の影響力拡大に懸念を深めており、日本も関係強化を加速させる。
「太平洋島嶼国との協力関係を一層強化していく考えだ」。松野博一官房長官は1日の記者会見でこう強調した。林芳正外相は5月にフィジーとパラオを訪問。4月には上杉謙太郎外務政務官がソロモンを訪れソガバレ首相に中国との安保協定に懸念を伝えた。今月13日からは海上自衛隊護衛艦「いずも」などをインド太平洋地域に派遣し、太平洋島嶼国や米豪印など計12カ国・地域に寄港する。
政府の念頭には地域で影響力の浸透を図る中国の存在がある。中国は4月にソロモンと安保協定に調印し、5月下旬から今月4日にかけては王毅国務委員兼外相がソロモンなど太平洋島嶼国7カ国と東ティモールを歴訪した。王氏は、訪問先のフィジーで南太平洋など10カ国とオンライン形式の外相会議を開き、安保協定の締結を提案したが、合意できなかった。
太平洋島嶼国は中国が拡大を目指す防衛ラインのうち、小笠原諸島や米領グアムを結ぶ「第2列島線」から米ハワイを含む「第3列島線」の間に広がる。中国海軍が遠洋展開能力を強化し、太平洋側から米軍や自衛隊を牽制するシナリオも想定される。自民党の佐藤正久外交部会長は「中国の海軍基地ができれば、米ハワイ、グアムに対して足背から影響を及ぼすことも出てくる」と警鐘を鳴らす。「いずも」の空母化は飛行場に乏しい太平洋で中国軍に対抗するためでもある。
日本は1997年以降、島嶼国と「太平洋・島サミット」を定期開催し関係を構築。一方、中国は経済力を背景に地域諸国に接近し、2019年にはソロモンとキリバスが台湾と断交、中国と国交を結んだ。
政府は新型コロナウイルス対策や海洋安保など5分野の協力を軸とした「太平洋キズナ政策」を進め政府開発援助(ODA)も活用し関係強化を図る。ただ、政府関係者が「中国の賄賂の威力はすごい」と語るほど膨大な資金力を誇る中国に一国で対抗するには限界がある。米国や同志国との緊密な連携で、中国の膨張に歯止めをかけたい考えだ。