「間食は健康に悪いから、やめたほうがいい」そう思っていませんか。お腹が空いて集中力が途切れても、あまいものを食べたら幸せな気分になることがわかっていても、我慢する。そんな人も多いのではないでしょうか。
しかし、医師の鈴木幹啓氏は、「間食をやめる必要も、罪悪感を覚える必要もない」と言います。それはなぜなのか。食品の選び方に注目した、まったく新しい間食習慣をお伝えします。鈴木氏の著書『医師が教える最強の間食術』より一部抜粋・再構成してお届けします。
「間食=健康に悪い」は間違った思い込み
これまで私は、子どもから高齢者まで、幅広い年代の方の健康と向き合ってきました。その中で思うのは、やはり、健康のベースは日常生活の過ごし方にあるということです。
どんなに治療をほどこしても、食生活をはじめ、健康にいい習慣が身についていなければ、また病気になってしまう。そんなケースが多くみられます。
それほど、健康にいい習慣を身につけるのは難しいということ。
そこで私が提唱したいのは、「新しい間食習慣」です。
間食と聞くと、「体に悪いこと」「してはいけないこと」と思われるかもしれません。
たしかに、間食と聞いてイメージする食品には、砂糖たっぷり高カロリーで、体に悪そうなものもあります。
しかし、適切な食品を選べば、むしろ間食で健康効果が期待できるのです。
3食、毎日健康にいいものを選んで、調理などして食べる「健康的な食生活」よりも、間食で健康にいいものをぱくりと食べ続ける「間食健康習慣」ほうができそうな気がしないでしょうか。
間食健康習慣に適切な食品の3要素
では、どんな食品が間食に適切なのか。
私がおすすめするのは、次の3つの要素を含んだものです。
・老化を防ぐ「ポリフェノール」がたっぷり入ったもの
・太りにくいもの(GI値が低いもの)
・おいしくて、手軽に食べられるあまいもの
まず、体にいい栄養素はたくさんありますが、人生100年時代といわれる今、私がおすすめしたいのが「ポリフェノール」です。
なぜなら、ポリフェノールには老化の原因となる活性酸素から身を守る「抗酸化作用」があるからです。
ポリフェノールは植物が光合成によって作る物質で、紫外線や乾燥、害虫などから植物を守っています。つまり、外敵から身を守るための強力なバリアとなる成分なのです。
しかしこのポリフェノール、一つだけ難点があります。それは、体内で長時間蓄積できないこと。摂取して3~4時間後には、効果がなくなってしまいます。
そのため、食事ではなく、むしろ間食で少しずつ摂るのが適している栄養素といえます。
脳内で幸せホルモンが分泌される
また、太らないよう「GI値」に注目することも大切です。
GIとは、Glycemic Index(グリセミック・インデックス)の略で、その食品を食べた後にどれだけ血糖値が上がるかを示した指標のことです。
食後血糖値が急激に上がると、インスリンが大量に分泌されます。すると、インスリンの作用で脂肪が分解されずに、細胞に取り込まれることになり、肥満につながる危険性が高くなってしまうのです。
ですから、食後血糖値を急激に上げない、低GⅠ食品を選ぶことが大切です。
そして、おいしくてあまいこと。近年の糖質制限ブームで「あまいもの=悪」というイメージがあるかもしれませんが、あまいのは悪いことではありません。
あまさを感じると脳内で幸せホルモンと呼ばれるセロトニンが分泌され、幸福感に満たされます。だからこそ、あまいものには中毒性があります。これは裏を返せば、習慣化しやすいということです。
大切なのは、続けられること。「おいしくてあまいもの」であることは、間食習慣の大切な要素なのです。
実は、これらの3要素を満たす、間食に適した食品があります。
それが、カカオ成分を70%以上含む「高カカオチョコレート」です。
特筆すべきは、そのポリフェノール量。カカオ72%のチョコレ―トには、赤ワインの約15倍、りんごの約12倍ものポリフェノール量が含まれています。
植物に含まれるポリフェノールですが、意外に自然の食品から摂ることが難しい栄養素です。その点、カカオ豆から種皮と胚芽を取り除いたカカオマスには、ポリフェノールが豊富に含まれているのが特徴。カカオマスを原料とするチョコレートは、少量で効率よくポリフェノールを摂取できる、貴重な食品なのです。
そして、高カカオチョコレートには自然なあまさがあり、しっかりと幸福感を与えてくれる。最近は、スーパーやコンビニエンスストアなどでもよく見かけるようになり、手にもいれやすい。
つまり、継続性にとても優れた間食といえるのです。
ビジネスパーソンに神の食べ物?
でも、「そんなすごい健康食品が、なぜ今まで見過ごされてきたの?」と思う方もいるかもしれません。
それは、チョコレートが嗜好品として日本に入ってきたため、日本では健康食品ではなくあまくておいしい食べ物として広まったからです。
世界に目を向ければ、チョコレートの原料であるカカオの健康効果は、昔からよく知られていました。古代アステカ文明では、チョコレートは「テオブロマ」とあがめられ、その効能の高さから、神への供物や薬として珍重されてきたといいます。
テオブロマとは、ギリシャ語で神の(theo)食べ物(broma)という意味。
その学名を持つ、カカオ(Theo broma Cacao)に含まれる栄養素が、「テオブロミン」です。
自然界でテオブロミンを含有する植物はごくわずか。カカオ豆のほかにマテ茶の原料の灌木やコーヒーの木など、限られた植物にのみ含まれる貴重な成分です。
テオブロミンには、大脳皮質に作用して集中力を高めたり、自律神経を調整して脳や体をリラックスさせたりする効果があります。また、幸せホルモンといわれるセロトニンの働きを助ける作用もあります。
そしてもうひとつ、テオブロミンの注目すべき働きに、「穏やかな中枢神経刺激作用」があげられます。
人体には、中枢神経と末梢神経の2種類の神経があります。体の各部に張り巡らされた末梢神経に対し、そこから集められた情報が集まるのが中枢神経です。中枢神経は脳とせき髄からなり、全身に指令を送る、神経系統の中心的な働きを担っています。
この中枢神経の血管を拡張して血行をよくする効果があるのが、テオブロミン。認知機能や記憶力を高めたり、ストレスも緩和してくれたり、まさにビジネスパーソンには、最高の食べ物なのです。
このように、適切な食材を選べば、貴重な栄養素を補給する最高の健康習慣となるのが間食です。
間食は悪ではなく、むしろ健康になる機会。
そう発想を転換させて、健康のための「新しい間食習慣」を始めてみませんか。