官僚を恐怖で支配する「スガーリン」 心を掴んだ田中角栄元総理

陰では「スガーリン」 政治・経済

菅氏の力の源泉は、人事権を駆使した官僚掌握と、独自に張り巡らした情報網だ。能力を見込んだ官僚を自身のそばに置いて重用し、異論を唱える者は容赦なく更迭する。

菅総理は官僚を恐怖で支配するのに対して、まったく別のアプローチで官僚たちの心をつかんだ歴代の総理がいる。その代表格は田中角栄元総理である。

週刊新潮に二つのタイプを紹介する記事があったので、紹介する。

菅義偉総理 官僚を恐怖で支配する

菅総理に粛清された元総務省局長が語る“独裁伝説” 進言すると更迭…「官僚は彼に追従ばかり」(週刊新潮 2021年3月18日号掲載) より

大手メディアの政治部デスクが解説するには、

気に入らない官僚を冷遇するといった強権ぶりもあり、永田町・霞が関では、菅さんのことをスターリンになぞらえ、陰で『スガーリン』と呼んでいます。実際、菅さんは『あの官僚はあっちなのか、こっちなのか』を非常に気にする。つまり自分に100%従うつもりがあるのか、そうではないのか、二元論で考えている節があるんです。」

結果、人心は離れつつあるわけだが、現下の事態を当然視する人がいる。

「菅さんは究極の自己中心的人間ですからね。」

こう語るのは、元総務省自治税務局長の平嶋彰英氏(現・立教大特任教授)だ。彼はまさにスガーリンによって粛清された過去を持つ。平嶋氏は局長を務めていた2014年、当時官房長官だった菅氏に、ふるさと納税に関して意見具申した。そこで「事件」が起きる。・・・

そして平嶋氏は自治大学校長に異動となり、総務省内では「更迭」とみなされた。

菅さんは自分の耳に痛い話は全く聞こうとしない。だから、官僚は彼に追従ばかりするようになる。正しい情報が入ってこなくなれば判断を誤るのも当然で、コロナ対策の後手ぶりも必然的な結果だと感じます。」

そんなスガーリンは来る総選挙の顔にふさわしくないとして、目下、足元の自民党からはこんな噂が聞こえてくるのだった。自民党細田派のある代議士が耳打ちする。

「菅政権は事実上、『菅・二階政権』。二階さん(俊博・幹事長)をセットで辞めさせないと権力構造は変わらない。『菅・二階』に対抗できるとすれば……『安倍・麻生連合』だな。」

田中角栄元総理 官僚たちの心を掴む

菅総理とは“格が違う” 官僚たちの心を掴んだ歴代総理の「殺し文句」(週刊新潮 2020年12月18日掲載) より

菅首相とはまったく別のアプローチで官僚たちの心をつかんだ首相も存在している。田中角栄だ。『ザ・殺し文句』(川上徹也・著)をもとにエピソードを紹介する。

田中角栄は44歳の若さで大蔵大臣(当時)に就任した。この時、大蔵省の講堂で皆いる大蔵官僚たちに向かってこんなスピーチをおこなった。

「自分が、田中角栄である。こ存じのように、わたしは高等小学校卒業。諸君は全国から集まった秀才で、金融財政の専門家だ。しかし、棘のある門松は、諸君よりいささか多くくぐってきている。

しかし、今日から諸君と一緒に仕事をすることになるのだが、わたしは、できることはやる、できないことは約束しない。これから、一緒に仕事をするには、お互いをよく理解することだ。

今日から、大臣室の扉は常に開けておくから、我と思わん者は誰でも訪ねて来てくれ。上司の許可はいらん。仕事は諸君が思うように、思いっ切りやってくれ。しかし、すべての責任は、この田中角栄が負う。以上。」

「高等小学校卒業の大臣」だとたかをくくっていた大蔵官僚たちは、このスピーチで表情が変わったという。タダものではない、と認識したのだ。

また、新人の入省式のときには、大臣室で待つ20名の新人官僚の前に現れると、並んだ一人一人と握手をしながら「やー〇〇君、頑張りたまえ」と全員の名前を間違えずに呼びかけていった。メモも見ず、秘書官が耳打ちしたわけでもない。

あらかじめ20名全員の顔と名前を覚えていたのだ。これには最難関の試験をくぐりぬけてきたエリートたちも度肝を抜かれた。

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