ペロブスカイト太陽電池でスタートアップ…金沢大、独自技術で長寿命・低コスト化(ニュースイッチ 2025年04月16日)
金沢大学ナノマテリアル研究所の當摩哲也教授やモハマド・シャヒドウザマン助教らは今夏にも薄くて軽く曲げられる次世代型太陽電池「ペロブスカイト太陽電池(PSC)」を手がけるスタートアップを立ち上げる。金沢大で開発した技術を生かし、長寿命で安価なフィルム型PSCを供給する。北陸地方に生産拠点を整備し、2030年ごろの製品供給を目指す。
起業に向けて、北陸地方の大学・高等専門学校発スタートアップ創出を推進する「TeSH(テッシュ)」の採択を受けた。最大6000万円の支援が受けられるこの仕組みを活用し、準備を進めている。
PSCはペロブスカイトと呼ばれる結晶構造を持つ材料を発電層に用いる。材料の溶液を基板に塗って乾かして製造する。基板にフィルムを用いると薄くて軽く曲げられる太陽電池ができる。政府は再生可能エネルギー拡大の切り札として期待する。40年までに約2000万キロワットを導入する目標を掲げる。
一方、寿命が短い課題がある。特にペロブスカイトの結晶は湿気に弱く大気下ではすぐ劣化してしまう。そのため一般に外気を遮断した環境で生成し、発電層は高いバリアー性能を持つ高価なフィルム(ガスバリアフィルム)などで封止する。
當摩教授らはペロブスカイト材料の溶液にイオン液体を添加して耐久性を高める技術を開発した。この技術を用いて、フィルムメーカーと共同でPSCを作製した。湿度40%の大気下において「バーコート法」という薄膜作製法を使って作製し、放置した。その結果、1000時間後も初期性能の約90%を維持した。大気下でも製造できることを確認したほか、ガスバリアフィルムに要求するバリアー性能が下がり、低コスト化できる可能性を示した。今後、フィルム型PSCを高効率に生産できる「ロール・ツー・ロール」という製造プロセスへの適用を図る。