89歳NPO法人理事長が伝授「“貧乏ばあさん”にならない70歳からの処方箋」

樋口恵子氏 社会

89歳NPO法人理事長が伝授「“貧乏ばあさん”にならない70歳からの処方箋」(女性自身 記事投稿日:2022/01/14 11:00 最終更新日:2022/01/14 11:00)

「日本女性の平均寿命はいまや87.7歳。近い将来、高齢女性は世の中の多数派となりますから、BBA(貧乏ばあさん)を作らないことが、この国の豊かさの基盤となることは間違いありません」

こう話すのは、『老いの福袋 あっぱれ! ころばぬ先の知恵88』(中央公論新社)が話題の「NPO法人高齢社会をよくする女性の会」理事長・樋口恵子さん(89)。

樋口さんによると「ピンピンコロリ」は幻想。多くの人は晩年になると、加齢とともに心身の能力が衰え、何をするにもヨタヨタ、ヘロヘロする“ヨタヘロ期”を長く過ごすことになるという。

「私もようやく平均寿命を超えたところでヨタヘロ(笑)。そんな人生の最後半を、いかに豊かで健やかに過ごすかが鍵となってきます」

樋口さんから、BBAになることを防ぐための70歳からできる「処方箋」を教えていただいた。

シルバー労働力になる

「高齢になると朝の通勤ラッシュは体にこたえるし、フルタイムで働くのは厳しすぎます。しかし、BBAの基本的な防止策はHB(働くばあさん)になること。おすすめは、地域での仕事をあっせんしてくれる地元のシルバー人材センターに登録することです。わが家にも交代で2名の方に、家事の手伝いに来ていただいています」

都道府県別に賃金は異なり、東京都は時給1,000円程度であるから、週3回ほど(1日3時間×月に10日程度)稼働すると、月額3万円程度の収入になる。

「さらに、出勤してこなければ、同僚や雇用主が『何かあったの?』と心配して連絡をくれるなど、安否確認の機能もあります」

ひと転び100万円に要注意!

「高齢者の転倒・転落による死亡者数は年間約7,000人(’16年人口動態調査より)で、交通事故による死亡者数の約2倍です。運よく救命されても入院治療費などなにかと物入りになり、100万円以上かかることも。一度転べば大散財と心得ておきましょう」

最近でも3回は自宅で転倒し、階段の上からの転落経験もある樋口さんは、転ばないことを日々の最重要課題としている。

リハビリ体操がおすすめ

「健康で動けることは何よりも大事です。ヨタヘロでも、いま備わっている体の機能を維持する努力を怠らないことです」

樋口さんが最もお金をかけていることは、月に2回講師が自宅に来て指導してくれるリハビリ体操だ。

「その日の体調に合わせて、ストレッチや軽い筋力トレーニングの内容を自在に組み立てられるというメリットがあります。通うのだとサボってしまいますが、来ていただくのであれば強制力があり、5〜6年継続できています」

外出中に倒れたときを想定してバッグの中身を整える

「高齢になると外出先で何が起きるかわかりません。倒れたら意識があるとは限らないので、私は名刺に『延命治療は辞退致します』と万一の場合に備えた意思表示を記し、バッグに携帯しています」

人様にバッグの中身を改められる可能性もあるので、常に整理しておく習慣をつけると、緊張感がみなぎり元気でいられるという。

同居で相続税が減税に

親子が同居していると相続税が安くなる特例がある。この制度を使えば相続税がゼロになるケースもあり、かなり得である。

「私は娘と2人暮らしで、毎日けんかです。しかし、言い争っても15分で水に流せる関係なので、これでも相性がよいと思えます。一方、実の母と娘でも許し合えないケースもあり、嫁と姑ならなおのこと遺恨が残ることも。ですから相続税減税になるからといって、相性のよくない人と、そのためだけの同居はおすすめできません」

老年よ、財布を抱け

「家の権利書や預金通帳から年金証書まで、子に託してしまう人がいますが、これは感心できません。私は娘と同居しても家計は別にしています。財布を持って自分で買い物をするのは、現代女性の生きる楽しみでもあります。可能な限り自分で金銭の管理を」

ペットは豊かに生きる原動力

「ペットを飼うと、ペットが年老いてみとるまでは元気でいなければならないという責任感が生まれ、必然的に日々、自分の心身の健康に気を使えるようになります。わが家にも縁あってやってきた4匹の猫がおりますから、この子たちのために気力もみなぎり、できる限り働こうという意欲も生まれます」

老年になったら人は財産。3つの「保険」をかけて

「老年になるほど人は財産となります。なので、積極的に人脈作りをして3つの『保険』をかけましょう。

1つめは地域の役に立つこと。2つめは個性に合った趣味の活動を。3つめは、さらにもう一つの居場所を確保すること。

私の知人は退職と同時にマンション組合の理事長となり、同時にカルチャーセンターに入会し、現役時代から続けている得意分野(マージャンや、研究などライフワークと呼べる分野)で活動を開始しました。

孤独死は決して惨めなことではありません。しかしできる限り、万一のときに『あの人はどうした?』と気づいてもらえる『安否確認の機能』を備えておくことは人間らしく生きるうえで大事です」

人生の終わりまで見据え、豊かに生きる秘訣を取り入れてほしい。

出典元:「女性自身」2022年1月18日・1月25日合併号