ワクチンの効果と副反応 ファイザー、モデルナ、アストラゼネカ
厚生労働省は、5月21日、欧米の製薬会社、米モデルナと英アストラゼネカの新型コロナウイルスのワクチンを正式に承認したと発表した。
このうちモデルナのワクチンは、今月24日に東京と大阪に開設される政府の大規模な接種会場の他、一部の自治体の接種会場でも使用される予定だ。
また、アストラゼネカのワクチンについては、有効性が認められる一方で、接種後、極めてまれに血栓が生じるリスクがあると指摘されていることから、現時点で予防接種法の対象にせず、当面、公的な接種には使わない方針を示した。
諸外国の状況を見ながら接種を推奨する年齢などを慎重に検討し、治療方法についても検証して周知していく。
モデルナとアストラゼネカのワクチンの違い
モデルナ製は、米ファイザー製と同じ「mRNAワクチン」で、遺伝物質メッセンジャーRNAの一部を接種する。
体内でウイルスのたんぱく質が作られて免疫機能が働き、抗体が作られる。壊れやすいmRNAは、脂質の膜で包まれている。
新型コロナウイルスの感染が広がる前には実用化されていなかった新たな技術で、開発にかかる期間が従来のワクチンより大幅に短縮できるのが大きな利点になっている。
アストラ製は、チンパンジーに風邪症状を起こすアデノウイルスをベクター(運び屋)として使う「ウイルスベクターワクチン」だ。
新型コロナのスパイクたんぱく質を作る遺伝子をこの風邪ウイルスに組み込み、接種によって体内に送り込む。風邪ウイルス自体は体内で増殖しないように処理されている。
各ワクチンの効果と副反応など・・モデルナ、アストラゼネカ、ファイザー
今回承認されたモデルナとアストロゼネカ及びすでに国内で接種が行われているファイザーのワクチンについて、各々の効果や副反応などを下図(出典はNHK)に示した。
【参考・引用・出典記事】
モデルナとアストラゼネカのワクチン 正式承認 厚労省(NHK 2021年5月21日 21時05分)
ワクチンどんな種類が?(NHK ワクチンQ&A)
遺伝物質、異なる「運び方」 予防効果に差―モデルナ・アストラ製ワクチン(JIJI.COM 2021年05月21日07時08分)
ワクチンに期待する効果
Q.ワクチンは感染を防ぐためのもの? 重症化を防ぐためのもの?(NHK ワクチンQ&A)より
ワクチンに期待される4つの効果
ワクチンに期待される効果には、
感染そのものを防ぐ「感染予防の効果」
感染しても症状が出るのを抑える「発症予防の効果」
症状が出ても重症にならないようにする「重症化予防の効果」
多くの人がウイルスへの抗体を持つことで社会全体が守られる「集団免疫の効果」
があるとされている。
このうち、感染を予防する効果は感染しても発症しない人が多くいることや、ウイルスが人の細胞に入り込んでいないか詳しく調べないといけないことなどから実証することが難しく、新型コロナウイルスのワクチンの臨床試験では、ワクチンを接種した人のグループと偽薬(プラセボ)を投与した人のグループで発症した人の数を比較していて、主に発症を予防する効果について調べている。
※ 集団免疫とは、国や地域などの集団の中でほとんどの人がワクチンを接種するなどして免疫を持つことで、一部の人が免疫を持っていなくても、感染が広がらない状態になることをいう。
感染そのものを予防する効果は?
この度承認されたワクチンは、重症化や発症を防ぐ効果が確認されているが、感染そのものを防ぐ効果もあるのではないかと、検証が続けられている。
イスラエルでは世界の中でも早いペースで接種が進んでいて、イスラエルの保健機関やアメリカのハーバード大学などの研究グループが、ファイザーのワクチンの実社会での効果を調べた論文を2021年2月24日にアメリカの医学雑誌「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」に発表した。
その中では、2回目の投与を受けたあと7日目以降では▼発症を予防する効果が94%、▼重症化を防ぐ効果が92%だった他、▼無症状の人も含めて感染を防ぐ効果も92%だった。
また、アメリカのCDC(疾病対策センター)は感染そのものを防ぐ効果についての研究結果を2021年4月2日に発行した週報で報告しました。
それによると、アメリカでファイザー製のワクチンかモデルナ製のワクチンの接種を受けた医療従事者など3950人を対象に、2020年12月から2021年3月中旬までの毎週、新型コロナウイルスに感染していないか、PCR検査で確認したところ、2回目の接種後、14日間以上たった人では、無症状の人も含めて感染そのものを防ぐ効果は90%だったとしている。
接種を2回受けていなくても、1回目の接種後14日間以上たった人では感染を防ぐ効果が80%だった。
この他、ワクチンの接種後、高齢者施設や医療従事者の感染が大幅に減ったという報告が複数の国から出されている。
即ち、ファイザー、モデルナ、アストラゼネカのワクチンは、発症予防と重症化予防の効果に加えて、感染を防ぐ効果も期待できそうだ。