未熟な小泉進次郎氏がポスト岸田の本命と言われる理由 鍵を握る菅義偉前首相が持つ4枚のカード

未熟な小泉進次郎氏がポスト岸田の本命と言われる理由 政治・経済

未熟な小泉進次郎氏がポスト岸田の本命と言われる理由 鍵を握る菅義偉前首相が持つ4枚のカード(AERAdot. 2024/08/16/ 08:36)

岸田文雄首相が9月に予定されている自民党総裁選への不出馬を表明したことで、総裁選候補の動きが慌ただしくなりそうだ。ベテラン、若手が入り乱れての混戦模様だが、ここで小泉進次郎・元環境相の名前が大きく取りざたされている。果たして、どんな争いになるのか──。

岸田首相は14日の記者会見で、「私は来たる総裁選には出馬いたしません」「お盆が明ければいよいよ秋の総裁選に向けた動きが本格化することになります」と語り、総裁選の“号砲”を想起させた。

ある永田町関係者がこう語る。

「岸田氏は決戦投票で、相手が石破(茂)さんなら国会議員票の多さで勝てると踏んでいたのが、本命に小泉(進次郎)さんが出てきて断念したんじゃないか。若手に負ける姿というのはかっこ悪いし、それなら自分から下りたほうがまだいいからね」

菅氏が引く“カード”はどれ?

総裁選は、党員票と国会議員票の合計で決まり、過半数を獲得したら当選。どの候補者も過半数に届かない場合は上位2人で決戦投票を行う。決戦投票では、国会議員1人1票と、都道府県連に1票ずつが割り振られる。

その総裁選に過去4度挑戦した元防衛相の石破氏は14日、台湾で記者団に対し、20人の推薦人を確保できれば出馬すると表明した。

「石破さんにとっては最後のチャンスになるでしょうが、20人の国会議員の推薦人を集められるかどうか。仮に確保できたとしても、過去のように地方の党員票を集められるかどうか。決戦投票で国会議員票を取れないという悩みは、いまだに引きずっています」(同)

鍵を握るのは菅義偉前首相という。

「菅さんは4枚の首相候補のカードを持っているんですよ。それは石破さん、(小泉)進次郎さん、加藤(勝信・元官房長官)さん、河野(太郎・デジタル相)さんなんです。4枚のカードのうち、まず石破さんがクローズアップされ、一時期、菅さんが推すのではないかと見られていました。もし裏金事件が起きていなければ加藤さんのカードを引いていたでしょう。加藤さんは菅政権時代の官房長官ですし。だけどここにきて、(小泉)進次郎さんのカードを引くのではないかと見られるようになりました」(菅氏に近い関係者)

小泉氏の国会議員の支持層は幅広い。今年6月に小泉氏は、菅氏や「HKT」(萩生田光一前政調会長、加藤氏、武田良太元総務相)と、東京都港区の日本料理店で総裁選についての意見交換をしたという。

「つまり、進次郎さんが出馬すれば、菅さんとHKTが動くことも考えられます。武田さんは旧二階派、萩生田さんは旧安倍派、加藤さんは旧茂木派のそれぞれ幹部です。とりわけ、森(喜朗元首相)さんが進次郎さんのことを買っているんです」(同)

 7月には森氏、小泉純一郎元首相、中川秀直元官房長官、ジャーナリストの田原総一朗氏らが会食し、総裁選について森氏らが「進次郎がいい」と小泉氏に言ったところ、小泉氏は「本人がやると言ったら反対はしない」などと答えたと報道された。

「森さんは4、5年前、進次郎さんを清和研(安倍派)に入れるように動いたことがあるんです。それだけ進次郎さんのことを評価している。ところが、進次郎さんは断った。結果的に清和研に入らなくて良かった。もし、入っていたら裏金事件に巻き込まれ、今ごろ、どうなっていたことか」(小泉純一郎氏の知人)

「コバホーク」はいい“タマ”

仮に、小泉進次郎氏が総裁選に出馬した場合、“対抗馬”は誰になるのか。

「もし、小泉(進次郎)政権が誕生したら、貢献した菅氏が副総裁になる可能性がある。そうなると麻生さんが副総裁からはずされて、菅さんの影響力が強まるだろうから麻生さんも必死に探していると思う。だれを推すか決まっていない状態」(同)

党内では唯一、麻生派だけが派閥として残っており、同派の河野氏を推すことは考えられる。ただ、派閥幹部の甘利明前幹事長が小林鷹之前経済安全保障相(旧二階派)を推しているという。

「甘利さんが『コバホーク』(小林氏)を経済安保相にしたようなものです。もともと経済安保の分野は甘利さんが中心に動いていて、コバホークが加わった。コバホークはいい“タマ”です。だけど、まず勝てない。永田町では知られているけれど、全国的には知名度がないから地方の党員票が獲れないでしょう」(政界関係者)

麻生氏が茂木敏充幹事長を推すのではないかとも報じられた。

「麻生さんが茂木さんを推すかは微妙です。それに現在、党の幹事長ですから。岸田政権そのものの存在。岸田さんが不出馬を表明した記者会見で『自民党が変わる姿、新生自民党を』と語って身を引いたのに、茂木さんが新総裁になるというのは、それにそぐわないことになる」(同)

そのため、麻生氏が最終的にだれを選ぶかについては、

「誰を推せばいいのか悩んでいるけど、最終的には勝ち馬に乗るという判断になって、土壇場で進次郎さんにするかもしれない」(前出・永田町関係者)

進次郎不出馬なら大混戦

前回の総裁選に出馬した高市早苗経済安保相も出馬に前向きのようだが、

「高市さんはまず、20人の推薦人集めに苦しんでいる。既に出馬を表明している青山(繁晴・参院議員)さんも同じく20人の推薦人を集められるかわからない状態。2人は安倍元首相の“直系”で、高市グループと青山グループは重なります。もし、青山さんが下りて高市さんを応援するならば推薦人は確保できるのではないでしょうか」(同)

“本命”の進次郎氏の話に戻るが、本人はいまのところ態度を表明していない。

「進次郎さんがまだ若いからということで不出馬の場合には、本命不在の大混戦です。誰が勝つのか本当にわかりません」(菅氏側近)

政治ジャーナリストの角谷浩一氏はこう話す。

「小泉進次郎氏が出馬する環境が、本当に整っているかは疑問。少なくとも、満を持してという感じではないでしょう。環境相しか大臣の経験がなく、党の4役をやったこともない。本来ならばもう少し研鑽を積んで、堂々と出馬したいはず。今回は自分が出たいというよりも、党内の政治の思惑に利用されている感があります。選挙の顔にもなるだろうけど、首相になった後で手腕が問われる。国民も今の熱量のまま支えてくれるかどうか」

実は他の政党も代替わりの時期に直面しているという。

「立憲民主党は9月の代表選で誰が選ばれるか、全く見通せません。公明党の山口那津男代表は、代表を続投するかどうかはまだハッキリしない。共産党も今年1月、田村智子氏が新代表になったけれど、あまり表に出てきていない。与党も野党も、党の代表自体が受難の時代だということですよ」(角谷氏)

進次郎氏の決断やいかに──。

(AERA dot.編集部・上田耕司)

上田耕司

福井県出身。大学を卒業後、ファッション業界で記者デビュー。20代後半から大手出版社の雑誌に転身。学年誌から週刊誌、飲食・旅行に至るまで幅広い分野の編集部を経験。その後、いくつかの出版社勤務を経て、現職。