尖閣諸島を巡る主な動き エスカレートする中国海事局から尖閣を守れ

尖閣諸島 国際

中国は国際法に違反する可能性の高い海警法を制定し、かつ装備も増強し、東シナ海・南シナ海の支配を強めている。

日本は、海上保安庁の強化と防衛省との連携、法整備、米国および周辺諸国との連携強化を進め、尖閣諸島周辺の安全確保に努めよ。

尖閣諸島を巡る主な動きを列記した。

10年9月7日 中国漁船衝突事件

9月7日に沖縄県尖閣諸島沖の領海内で違法操業した中国漁船が、取り締まりにあたった海上保安庁の巡視船に体当たりしたため、船長を逮捕した。中国は海保が衝突を仕掛けたと主張し、船長の逮捕に反発した。

中国は、レアアースの日本向け輸出通関手続きを滞らせた他、邦人4人を軍事管理区域で不法に撮影したとして拘束した。日本は報復措置と受け止めた。那覇地検は「日中関係を考慮」して船長を処分保留で釈放した。

船長は中国側が用意したチャーター機で帰国した。邦人全員が解放されたのは、船長と同じ約20日間の拘束後だった。11月に衝突時の映像がインターネット上に流出した。

衝突時の動画】
尖閣ビデオが流出か 中国漁船が衝突の映像 Senkaku(2分28秒)
尖閣諸島中国漁船衝突事件・政府公開ダイジェスト版ビデオ_8.11政府提出(11分35秒)

2012年9月11日 尖閣諸島を国有化

政府(野田佳彦内閣)は9月11日、5島と3つの岩礁からなる尖閣諸島(沖縄県石垣市)うち、私有地であった魚釣島、北小島、南小島の3島を20億5000万円で購入する売買契約を地権者と交わし、3島を国有化した。購入後は海上保安庁が管理する。

政府が国有化に動くきっかけになったのが、東京都の石原慎太郎知事が同年4月に打ち出した購入計画である。石原知事は「東京が尖閣を守る」といった趣旨の発言をしていた。

尖閣諸島の領有権を主張する中国との対立が強まり、以降、偽装漁船が頻繁に尖閣諸島周辺に押し寄せることになった。

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2020年5月9日 尖閣諸島海域で挑発緩めぬ中国 軍艦並みの巨大公船

中国公船が今月、沖縄県・尖閣諸島周辺の領海に侵入し、日本漁船を追尾した。日本が新型コロナウイルスによる国難に直面する中でも、海洋権益確保のために挑発の手を緩めない中国の姿勢を際立たせることになった。領海警備は海上保安庁が対応するが、中国は軍艦並みの巨大な公船も保有。政府は力による現状変更の圧力を警戒する。

2020年7月6日 中国海警局、軍と一体化 南シナ海で合同訓練

中国海警局は7月5日、南シナ海の西沙(英語名パラセル)諸島周辺で行った海軍との合同訓練を終了したもようだ。海警局は日本の海上保安庁に相当する海の法執行機関。一方で、先月の法改正で海軍との一体的な運用が明確になり、南シナ海や沖縄県・尖閣諸島周辺で緊張を高めることが懸念されている。

2020年8月4日 河野防衛相、尖閣周辺で「自衛隊も行動」

河野太郎防衛相は8月4日の記者会見で、沖縄県・尖閣諸島の周辺海域で中国公船が活動を活発化させていることに関し、「自衛隊としても海上保安庁と連携し、必要な場合にはしっかり行動したい」と述べた。ただ、その場合の具体的な事態の想定や対処方法については「手の内」だとして明らかにしなかった。

2020年8月29日 日米防衛相、尖閣の安保適用再確認 対中包囲へ連携

河野太郎防衛相は8月29日、米領グアムを訪問し、エスパー国防長官と会談した。両氏は東・南シナ海での中国の軍事動向を中心に協議。沖縄県・尖閣諸島について、米国の対日防衛義務を定めた日米安全保障条約第5条の適用対象であると改めて確認した。エスパー氏は「日本の施政を損なおうとするいかなる一方的な行動にも反対する」と強調した。

(2020年9月25日 尖閣領海警備を強化 巡視船ヘリ2機新造へ

海上保安庁は9月25日、沖縄県・尖閣諸島の領海警備体制の強化を柱とした2021年度予算概算要求をまとめた。過去最多の20年度当初予算額から4%上積みし、2301億3900万円を計上した。

2020年10月3日 中国、尖閣サイトにデジタル博物館を開設

中国国家海洋局直属の国家海洋情報センターは10月3日、尖閣諸島(中国名・釣魚島)の領有権を主張するため2014年に開設した特別ウェブサイトに、新たに「デジタル博物館」を設けた。宣伝強化が狙いとみられ、バーチャルの博物館内に中国側の観点に沿った史料や地図などを展示した。

2020年11月12日 バイデン氏、尖閣の安保条約適用を明言 菅首相と電話会談

菅義偉首相は11月12日、米大統領選で勝利を確実にしたバイデン前副大統領と初の電話会談を行い、新政権下でも日米同盟強化に取り組む方針を確認した。バイデン氏は、対日防衛義務を定めた日米安全保障条約第5条を自ら取り上げ、沖縄県・尖閣諸島も適用対象になると明言。日本側は「抑止力を引き続き強化する意志が表明された」(加藤勝信官房長官)と歓迎した。

2020年11月13日 海警法案を正当化 中国外務省「国際慣例に合致」

中国外務省の汪文斌副報道局長は11月13日の記者会見で、海上法執行機関である中国海警局の権限を定めた海警法草案について、「国際的な慣例や各国の慣行に合致し、海に関する中国の政策に変化はない」として正当性を主張した。

海警法草案は、全国人民代表大会が4日に公表。中国が管轄する海域で違法に活動する外国船が停船命令に従わない場合などに武器の使用を認めている。沖縄県・尖閣諸島周辺で海警局の船舶が頻繁に航行しており、緊張の高まりが懸念されている。

2020年11月 宙に浮く習氏国賓来日 尖閣めぐり対中姿勢硬化

新型コロナウイルス感染拡大で延期された中国の習近平国家主席の国賓来日が宙に浮いた状態になっている。コロナ収束の見通しが立たないことが表向きの理由だが、沖縄県・尖閣諸島沖で活動を活発化させる中国に対し、日本側が態度を硬化させていることが影響している。

2020年11月26日 日中外相共同発表、茂木氏が「尖閣」をスルー 

沖縄県・尖閣諸島沖での中国公船の活動を正当化した同国の王毅国務委員兼外相の発言を受け流したとして、自民党外交部会で11月26日、茂木敏充外相を批判する声が上がった。両国共同記者会見の「その場で反論すべきだった」というのが理由で、尖閣に関する日本の立場を明確に発信するよう外務省に申し入れた。

2020年12月18日 尖閣・竹島の解説サイトを刷新

内閣官房は12月18日、沖縄県・尖閣諸島と島根県・竹島の領有権を解説するサイトの内容を大幅に刷新した。2014年度から開始した専門家への委託調査で収集した資料のうち、尖閣諸島関連75点、竹島関連57点を掲載。今回の刷新でこのサイトを領土・主権に関する研究のデジタル上の拠点としたい考えだ。小此木八郎領土問題担当相は閣議後記者会見で、「英語でも順次公開し、国際社会でのわが国の理解を深めていく」と語った。

2020年12月 中国軍、今年の活動は前年比で1.5倍、大型艦整備

中国軍は今年、海軍を中心に公開活動を昨年の約1.5倍に急増させた。トランプ米政権との対立が深まる中、米軍に対抗し、南シナ海や台湾周辺で軍事演習を頻繁に実施。中央軍事委員会の指揮下にある海警局の艦艇も沖縄県・尖閣諸島周辺で日本領海への侵犯を繰り返した。

2020年12月 接続水域に中国海警局の船舶が確認されたのは、国有化以降最多の計333日を記録した。

【海上保安庁】尖閣諸島周辺海域における中国海警局に所属する船舶等の動向

2021年1月17日 領海管理強化で法改正 海事局の尖閣活動へ布石

中国が領海管理を強化し海洋権益を守る一環として「海上交通安全法」の改正作業を進めている。改正草案は、中国当局が「脅威」と判断した外国船に領海からの退去を命じる権利があると明記。中国が領有権を主張する沖縄県・尖閣諸島周辺で、従来の海警局に加え交通運輸省に属する海事局による活動を正当化する狙いがあるとみられ、緊張の高まりも懸念される。

海警局の武器使用に関する権限を記した「海警法」草案も審議中だ。今回の法改正は、海上交通の監督や安全管理を担当する海事局が海警局と連携した活動を活発化させる根拠となり得る。

法整備と並行して、海事局の装備も増強が進んでいる。広東省政府は1月12日、排水量1万トンの大型巡視船が今年半ばに配備されると明らかにした。同船は航行速度25ノットでヘリコプターを搭載。北極や南極以外であれば世界のどの海域でも運用可能という。

2021年2月1日 中国が「海警法」を施行

法律では、①中国の管轄海域で、国家主権や海洋権益に危害を与える行為を予防、制止、排除するとし、②外国政府の船舶が管轄海域に入った場合は、強制的に退去させることができ、③外国の組織や個人に、主権や管轄権が侵害された場合には、武器の使用を含む一切の必要な措置を取ることができるとしている。

中国は、この海警法で、尖閣諸島は管轄海域に含まれると主張し、海警局が、周辺で漁を行っている日本漁船を、違法操業として、拿捕や臨検を行うことを正当化するのではないか、さらに、尖閣諸島周辺で警備にあたっている海上保安庁の船を強制的に排除することや、必要な場合には、武器を使用することも、想定しているものとみられる。

海警法は、国際法に基づく海洋秩序を否定している恐れがあり、日本政府は、中国政府に対し、強い懸念を伝えた。

2021年2月8日 日本領海侵入を正当化

中国外務省の汪文斌副報道局長は2月8日の記者会見で、中国海警局の船舶が6、7両日に沖縄県・尖閣諸島沖の日本領海に侵入したことについて「中国海警局が釣魚島(尖閣諸島)海域を巡航し法を執行する活動は、法に基づき主権を守る正当な措置だ」と述べ、日本政府の抗議に反論した。「釣魚島や付属島嶼は中国固有の領土だ」と従来の主張も繰り返した。

2021年2月16日 茂木敏充外相が「わが国海域での海警船舶の行動そのものが国際法違反」として抗議

2021年2月25日 外国公船への危害射撃も可能 政府は尖閣対応で法解釈を明確化した

政府は2月25日、外国公船・軍艦が日本に上陸するため領海に侵入した場合、海上保安官が相手に危害を与える「危害射撃」が可能なケースがあるとの考えを示した。海上保安庁法の解釈を明確にした。中国海警局の船舶による沖縄県・尖閣諸島周辺海域への侵入に関する自民党合同会議で明らかにした。

【参考記事】

外務省 日本の領土をめぐる情勢 尖閣諸島

海上保安庁 尖閣諸島周辺海域における中国海警局に所属する船舶等の動向と我が国の対処

中国船、尖閣沖に侵入(時事ドットコムニュース>特集>中国船、尖閣沖に侵入)

石破茂・元防衛相を直撃。尖閣諸島の緊張再び…武器を持った中国船に日本は(日刊SPA! 2021年03月02日)

NHK 「中国海警法施行 日本はどう対応すべきか」(時論公論 2021年02月10日  梶原崇幹解説委員)