首都圏を除く6府県の前倒し解除を決定した新型コロナウイルス感染症対策本部(第 56 回)に提出された資料

新型コロナウイルス感染症対策本部(第56回)20210226 社会

菅首相は26日夜、新型コロナ感染症対策本部を官邸で開き、10都府県に発令中の緊急事態宣言について、岐阜、愛知の東海2県、京都、大阪、兵庫の関西3府県、福岡の計6府県を月末までで解除すると表明した。

新規感染者数が減少傾向にあり、医療体制逼迫も緩和され、3月7日の宣言期限を前倒しできると判断した。埼玉、千葉、東京、神奈川の首都圏4都県は継続し、解除の可否を来週再検討する。

それに先立ち、同日、感染症の専門家などからなる諮問委員会が開かれ、対象地域の10都府県のうち首都圏を除く6つの府県で、今月末の28日で解除する方針が了承された。

諮問委員会終了後、尾身茂会長が報道陣の取材に応え、6つの府県で、緊急事態宣言の解除が提案されたことについて、「感染がリバウンドすることへの強い危機感から会議で懸念が示され、解除は1週間、延ばすべきではないかという意見もあった。結論としては6府県での宣言の解除は了承するが、条件として解除となった地域では、変異株の監視や隠れた感染源を深掘りするための調査、医療提供体制を強化することなどをやって頂きたい」と述べた。

以下は、第56回新型コロナウイルス感染症対策本部に配布された資料の一部である。

最近の感染状況等について(厚生労働省)・・ 推移グラフ

直近の感染状況の評価等(厚生労働省)

感染状況について

全国の新規感染者数は、報告日ベースでは、1月中旬以降(発症日ベースでは、1月上旬以降)減少が継続、直近の1週間では10万人あたり約7人となっているが、2月中旬以降減少スピードが鈍化しており、下げ止まる可能性もあり、さらに、リバウンドに留意が必要。

実効再生産数:全国的には、1月上旬以降1を下回っており、直近で0.78となっている(2月8日時点)。緊急事態措置区域の1都3県、大阪・兵庫・京都、愛知・岐阜、福岡では、1を下回る水準が継続。(2月7日時点)

入院者数、重症者数、死亡者数、療養者数も減少傾向が継続。一方で、60歳以上の新規感染者数の割合が3割を超えており、重症者数や死亡者数の減少は新規感染者数や入院者数の減少と比べ時間を要する見込み。感染者数や療養者数の減少に伴い、保健所や医療機関の負荷は軽減してきたが、現場は長期にわたって対応してきており、業務への影響は直ちには解消されていない。高齢者施設でのクラスター発生事例も継続。

【地域の動向】
※新規感染者数の数値は、報告日ベースの直近1週間合計の対人口10万人の値

①首都圏 東京では、新規感染者数は減少が続き、約16人となっているが、感染者数の減少スピードが鈍化している。自治体での入院等の調整は改善が見られる。神奈川、埼玉、千葉では新規感染者数は減少傾向が続き、それぞれ約9人、約12人、約14人と、ステージⅢの指標となっている15人を下回っている。千葉ではここ数日増加に転じる動きもあり、リバウンドには留意が必要。東京、神奈川、埼玉、千葉では、いずれも新規感染者数、療養者数の減少に伴い負荷の軽減が見られるが、病床使用率が依然として高く、医療提供体制に厳しさが見られる。

②関西圏 大阪では、新規感染者数の減少が続き、約7人と15人を下回っている。高齢者施設等でのクラスターは継続している。兵庫、京都でも新規感染者数は減少傾向で、それぞれ約5人、約4人となっている。いずれも医療提供体制に厳しさは見られるが、新規感染者数、療養者数の減少に伴い負荷の軽減が見られる。一方、高齢者の感染者数の減少傾向に鈍化が見られるとともに、負荷の大きな高齢者の入院が増えていることには、留意が必要。

③中京圏 愛知では、新規感染者数の減少が続き、約5人と15人を下回っている。岐阜でも新規感染者数の減少が継続し、約4人まで減少。いずれも医療提供体制に厳しさは見られるが、新規感染者数、療養者数の減少に伴い負荷の軽減が見られる。一方、高齢者の感染者数の減少傾向に鈍化が見られるとともに、負荷の大きな高齢者の入院が増えていることには、留意が必要

④九州 福岡では、新規感染者数の減少が続き、約8人と15人を下回っている。医療提供体制に厳しさは見られるが、新規感染者数、療養者数の減少に伴い負荷の軽減が見られる。

⑤上記以外の地域 概ね新規感染者数の減少傾向が続いている。

【変異株】

英国、南アフリカ等で増加がみられる新規変異株は、国内での感染によると考えられる事例が継続して生じている。

従来株と比較して感染性が高い可能性があり、今後、変異株の影響がより大きくなってくることも想定され、国内でも継続的に感染が確認されている中で、現状より急速に拡大するリスクが高い。

英国株については、変異による重篤度への影響も注視が必要。また、海外から移入したとみられるN501Y変異を有さないE484K変異を有する変異株がゲノム解析で検出されている。

感染状況の分析

緊急事態措置区域の10都府県では、実効再生産数は、0.8程度以下の水準となっており、新規感染者数の減少が続いているが、夜間の人流の再上昇の動きもみられる。これまで、飲食店の営業時間短縮などの対策を継続しているが、感染減少のスピードが鈍化しており、特に、千葉では増加に転じる動きも見られ、リバウンドに留意が必要。しかし、新規感染者数の減少に伴い、療養者数も減少が継続し、病床使用率も概ね低下傾向で、医療提供体制や公衆衛生体制の負荷も軽減。こうした傾向を継続させる必要がある。

クラスターの発生状況は、医療機関・福祉施設、家庭内などが中心だが、地域により飲食店でも引き続き発生している。また、各地で若年層の感染者数の下げ止まりの傾向も見られ留意が必要。

現在の新規感染者数の減少局面において、周辺地域に比べ都市部での減少が遅れている。変異株のリスクもある中で、減少傾向を続ける取組が必要。国内でも変異株の感染が継続して確認されている。変異株の感染を早期に探知し、封じ込めることが必要。

必要な対策

新規感染者の減少傾向を継続させ、リバウンドを防止し、重症者数、死亡者数を確実に減少させる。さらに今後、ワクチン接種に対応する医療機関の負荷を減少させ、地域の変異株探知を的確に行えるようにするためにも、対策の徹底が必要。

感染者数の下げ止まりや医療提供体制等への負荷の継続、変異株のリスクもあり、そうした中で緊急事態宣言の解除がリバウンドを誘発することへの懸念に留意が必要である。緊急事態宣言が解除されたとしても、ステージⅡ水準以下を目指し、地域の感染状況等に応じ、飲食の場面など引き続き感染を減少させる取組を行っていくことが必要。

昨年夏の感染減少の後、一定の感染が継続し再拡大に繋がったことを踏まえ、感染源を探知し減少を継続させる取組が必要。このため、感染リスクに応じた積極的検査や積極的疫学調査を再度強化できる体制が求められる。また、今般の取組の評価も踏まえ、次の波に備えた対応を行うことが重要。

再拡大防止には、恒例行事など節目での人々の行動が鍵である。今後、大人数の会食を避けるなどの観点から、年度末及び年度初めに向けては、歓送迎会、謝恩会、卒業旅行、お花見に伴う宴会等は避けていただくことに協力が得られるよう、効果的なメッセージの発信が必要。

「高齢者を守る」ために、クラスターの発生が継続している福祉施設等における感染拡大を阻止する取組が必要である。計画に基づく施設等の職員への検査の着実な実施や専門家派遣等による感染症対策の支援等が求められる。

ワクチン接種が医療従事者から開始された。接種を踏まえた感染状況への影響を継続的に評価・分析していくことが必要。

【変異株】

検疫体制の強化の継続とともに、今後、変異株の影響がより大きくなってくることを踏まえた対応が必要。

このため、国内の変異株のサーベイランス体制の早急な強化(民間検査機関や大学等とも連携。国は自治体の検査数等を定期的に把握)により、変異株感染者の早期検知、積極的疫学調査による感染源の特定や速やかな拡大防止策の実施や広域事例への支援等が求められる。

併せて感染性や病原性の特徴等疫学情報についての評価・分析が必要。 N501Y変異を有さないE484K変異を有する変異株についても実態把握の継続が必要。

個人の基本的な感染予防策は、従来と同様に、接触機会の削減(3密、特にリスクの高い5つの場面の回避等)、マスクの着用、手洗いなどが推奨される。併せて、症状のある場合は適切な検査・受診が必要。また、こうした取組の全体像を示していくことが必要。