日本初「女性首相」は誰だ 話題性と知名度なら上川氏、高市氏、小渕氏だが…物足りなさが残る「候補」たち 〝強みと弱点〟徹底分析

高市氏、上川氏、小渕氏 政治・経済

日本初「女性首相」は誰だ 話題性と知名度なら上川氏、高市氏、小渕氏だが…物足りなさが残る「候補」たち 〝強みと弱点〟徹底分析(zakzak by 夕刊フジ 2024.2/2 15:05)

長谷川幸洋

自民党は2日から、派閥のパーティー収入不記載事件に関わった議員の聞き取り調査を始める。岸田文雄内閣や自民党の支持率が低迷するなか、事件の実態解明と政治改革の姿勢を示し、国民の信頼を取り戻そうという狙いもありそうだ。こうしたなか、「ポスト岸田」候補として複数の女性政治家の名前が浮上している。英国やドイツ、イタリア、ニュージーランドなど、世界各国では続々と「女性首相」が誕生している。ジャーナリストの長谷川幸洋氏は「ガラスの天井」を破りそうな政治家に迫った。

岸田内閣の支持率が低迷するなか、女性政治家たちが「ポスト岸田」候補に取り沙汰されている。日本に初の「女性宰相」が誕生する可能性はあるのか。

注目を集めているのは、高市早苗経済安全保障担当相と上川陽子外相、さらに自民党の小渕優子選対委員長である。他にもいるだろうが、話題性と知名度では、この3人が抜きんでている。

彼女たちをどうみるか。

私は11月24日発行の本欄で「高市氏を推す」と書いた。その考えは、いまも変わってはいないが、高市氏は最近、ミソを付けてしまった。「2025年大阪・関西万博の延期」を、岸田首相に進言したのだ。

万博担当相は別にいて(=自見英子氏)、自分の所管事項でもないのに、なぜ突然、言い出したのかと言えば、「政治的思惑があった」としか思えない。能登半島地震の被災者に世間の同情が集まるなか、あえて外野からボールを投げて、注目を集めようとしたのだろう。

その証拠に、「最終的には首相の判断に従う」「信頼してお任せしたい」と、すぐトーンダウンしてしまった。

それくらいの話なら、最初から言わずもがなだ。これで万博を推進してきた日本維新の会や関西の人々を敵に回しただけでなく、自民党内では、万博誘致の立役者の1人である菅義偉前首相も不快にさせたに違いない。

本人から生前、聞いた話なので間違いないが、21年の自民党総裁選で高市氏を推した安倍晋三首相は「議員会館で政権構想など書いてる時間があるなら、もっと支持を訴えて、党内の有力議員たちと懇談しろ」と、高市氏に助言したという。

ここに高市氏の強みと弱点がある。

彼女は政治家同士で酒を飲んでいるくらいなら、勉強していたいタイプなのだ。これが「政局観の乏しさ」につながっている。残念ながら、これでは政権に近づけない。

■活躍期待も世界情勢甘くない

上川氏はどうか。

自民党の麻生太郎副総裁は最近、「カミムラ」と言い間違えながらも、「英語で堂々と話をして、外交官の手を借りずに自分で会うべき人との(会談)予約を取っている。大したものだ」などと評価した。麻生派のボスが岸田派の閣僚を褒めちぎったのは、派閥解消の動きに乗じて、念願の「大宏池会構想」を加速したい思惑もあるだろう。

それはともかく、上川氏はかつて米国の民主党上院議員のスタッフを務めるなど、米民主党に近い。彼女が手掛ける外交もジョー・バイデン政権と歩調をそろえている。

いや、中東外交はもっとひどい。イスラム原理主義組織「ハマス」の非難を避けて、主要国の共同声明に加わらなかったり、職員のテロ関与が指摘された国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)への資金提供も様子見を続けて、なかなか中止しなかった。

私には、外務省「中東派」の言いなりであるように見える。少なくとも、いまや「英語ができれば、外交ができる」ような時代ではない。

茂木派を飛び出した小渕氏の背後には、財務省がいるのではないか。少なくとも、財務省が「彼女は使える駒」とみているのは確実だ。彼女から「日本の選択」のような話を聞いた覚えもない。

こうしてみると、彼女たちは、いずれも物足りなさが残る。女性には大いに活躍してもらいたいと思うが、十分な力も素養もないのであれば、話は別だ。女性宰相だからといってはやし立てていられるほど、日本が置かれた世界の情勢は甘くない。

長谷川幸洋(はせがわ・ゆきひろ) ジャーナリスト
1953年、千葉県生まれ。慶大経済卒、ジョンズホプキンス大学大学院(SAIS)修了。政治や経済、外交・安全保障の問題について、独自情報に基づく解説に定評がある。政府の規制改革会議委員などの公職も務めた。著書『日本国の正体 政治家・官僚・メディア―本当の権力者は誰か』(講談社)で山本七平賞受賞。ユーチューブで「長谷川幸洋と高橋洋一のNEWSチャンネル」配信中。