岸田総理所信表明で「経済、経済、経済」連呼 所得税減税、意義も効果も疑問が拭えない

政治・経済

所得税減税 意義も効果も疑問が拭えない…読売新聞

所得税減税 意義も効果も疑問が拭えない(読売新聞 2023/10/25 05:00)

物価高に苦しむ国民への支援は大切だが、高所得者も含め一律に所得税減税を行う必要があるのか。意義も効果も疑問が拭えない。岸田首相は説明を尽くしてもらいたい。

首相が、物価高対策として所得税減税の検討を自民、公明両党の幹部に指示したことを受け、自民党の税制調査会が議論を始めた。年末までに、減税の規模や期間、財源などを決める。

減税には、税額から一定割合を差し引く「定率減税」と、税額から一定額を差し引く「定額減税」がある。定率減税だと高所得者ほど有利になるため、今回は定額減税となる方向だ。実施期間は来年度の1年間とみられている。

また、減税は、所得が低く納税していない人には恩恵がない。そのため、政府は、11月初旬に取りまとめる経済対策に低所得者への現金給付を盛り込み、減税と合わせて実施する方針だという。

しかし、1年限りの減税や、1度だけ配る給付金は、一時しのぎの対策にすぎない。貯蓄に回るだけだとの指摘もある。

減税には法改正が必要となるため、実施時期は早くても来春となるとみられている。物価高対策といっても、即効性は乏しい。

首相は所得税減税の狙いとして、当初の想定を上回った税収の一部を国民に還元すると言うが、歳入が国の歳出を大幅に下回り、国債で穴埋めしている現状では、余剰分などないはずだ。

税収の上振れ分は、借金返済に回すのが筋である。国民に還元すると言いながら、実際は、その分の返済を将来に先送りするだけであることを忘れてはならない。

一方、政府は、防衛力増強の財源として法人税、所得税、たばこ税の増税方針を決めている。実施は2025年以降になる方向だが、短期間のうちに減税と増税を相次いで行うことになる。

首相が掲げる「異次元の少子化対策」にも巨額の財源が不可欠だが、論議は手つかずのままだ。

国民の負担増の検討が避けられない状況にありながら、減税をするのは、著しく整合性を欠く。

首相は、防衛財源の確保策などで、国民から増税推進のイメージを持たれていることを気にしているとされる。今回の減税指示が、その 払拭ふっしょく を狙いとするものであれば、見当違いというほかない。

財政悪化と高齢化が進み、国民の将来不安は大きい。首相は場当たり的な人気取りより、何が国民の利益につながるのか、政策の全体像を示して語る必要がある。

岸田総理所信表明で「経済、経済、経済」連呼 総理指示の“所得税減税”どうなる?…TBS news23

岸田総理所信表明で「経済、経済、経済」連呼 総理指示の“所得税減税”どうなる?【news23】(TBSテレビ 2023年10月24日(火) 12:12)

物価高による家計の負担が増え続けています。今年度の家計負担が2年前と比べてどのくらい増えるのかという試算では、実に21万円程度との見通しも。こうした家計負担の軽減策として総理が指示した、「所得税の減税」に向けた議論が与党内で始まりましたが、批判の声も上がっています。

“所得税減税”で国民負担緩和?

小学4年生の子どもを育てるシングルマザーの室井さん。上がり続ける物価が一段と家計を苦しめているといいます。

室井かなえさん
「食費は月あたり5000円とか1万円ぐらい上がった。コンビニのおにぎりとかも、もう100円後半~200円台ぐらいになってきちゃってるんで、コンビニはもう買えないなって」

室井さんはNPOから食料品などの支援を受けていて、この日も担当者が訪れました。

NPO法人ぱんだのしっぽ 小川達也理事長
「満足に食事がとれない親御さんもいるし、実際に子どもに対しても十分な食事を提供できないという家庭がかなり増えている」

家庭で消費するモノやサービスの値動きをみる全国の消費者物価指数では、9月の伸び率はプラス2.8%で13か月ぶりに3%を下回りましたが、生鮮食品を除く「食料」は8.8%上昇と高止まりしています。

家計の消費支出に占める食料費の割合を示したエンゲル係数は、この1年間の平均で29%と、1980年以降、過去最高となりました。

岸田総理が所信表明演説で強調したのが…

岸田文雄総理
「『経済、経済、経済』私は何よりも経済に重点を置いてまいります」

そして、経済対策のキーワードにあげたのが「国民への還元」です。

岸田総理
「税収の増収分の一部を公正かつ適正に『還元』し、物価高による国民のご負担を緩和いたします」

岸田総理は口にしませんでしたが、念頭に置いているのは『所得税の減税』です。

23ジャーナリスト 元経済部筆頭デスク 片山薫記者
「自民党税制調査会の幹部が、続々と集まってきています。これから所得税減税について議論されます」

自民党では、10月23日から所得税の減税に向けた議論をスタートさせました。

自民党 甘利明 衆院議員
ーーどんな議論を?
「会長がやります」
ーー所得税減税についても?
「税調ですからね。税全般についての」
ーーかなりつっこんだ議論を?
「・・・・」

※動画内で紹介したアンケートは24日午前8時で終了しています。