高齢者を待ち受けるのは死ぬまで働く“労働無間地獄”…経済ジャーナリスト荻原博子さんも警鐘(日刊ゲンダイ 公開日:2023/09/19 13:30 更新日:2023/09/19 15:39)
〈はたらけどはたらけど猶わが生活楽にならざりぢっと手を見る〉──。窮乏のうちに夭折した詩人・石川啄木の切ない短歌に共感する高齢者も多いのではないか。
総務省は17日、「敬老の日」(9月18日)にあわせ、高齢者の人口や就業状況などに関する統計を発表。昨年の65歳以上の就業者数は21年より3万人増の912万人に上り、1968年以降で過去最多を更新した。
統計によれば、昨年の15歳以上の就業者総数に占める高齢就業者の割合は13.6%で過去最高。就業者のうち約7人に1人が高齢就業者だ。
高齢者の就業率はG7各国と比較して断トツに高い。内閣府の〈高齢社会白書〉(2023年版)によれば、60歳以上のうち「65歳を超えても働きたい人」は約6割に上る。一方、65歳以上のうち31.2%が家計不安を抱え、10年前に比べて約3ポイント上昇している。
高齢者の就業率が上がっている背景には、高齢者の就業環境が整備され、働きたい元気な高齢者が就業しやすくなった側面もあるが、一方で「働かざるを得ない高齢者」も多い。経済ジャーナリストの荻原博子氏がこう言う。
「働きたい高齢者が働ける環境が整っているのは良いとしても、厚労省の昨年の国民生活基礎調査を見ると、高齢者世帯の約半分が『生活が苦しい』との意識を持っています。『働きたい』という高齢者の中には、『働きに出ざるを得ない』という高齢者が多分に含まれているのではないか。年金や恩給を頼りに生活している高齢者は約6割もいます。今年度の公的年金支給額は3年ぶりの引き上げとなりましたが、物価上昇にまったく追いついていません。光熱費やガソリン代も値上がりし、年金は実質的に増えていないのに、出費だけはかさんでいく。切り詰めれば年金だけで暮らせるとしても、将来不安は拭えず、働かざるを得ない状況です」
X(旧ツイッター)上は〈人生100年時代、高齢者は死ぬまで働くのか〉〈いつまで働かないとリタイアできないのだろうか?〉との不安や不満が渦巻いている。
「政府は高齢者の雇用を促進していますが、『自助』に頼るばかり。肝心の仕事も非正規雇用で薄給。仕事を『生きがい』にできる高齢者は、ほんの一握りでしょう」(荻原博子氏)
「人生100年時代」の高齢者に待ち受けるのは、死ぬまで働く“労働無間地獄”。岸田首相が掲げる「高齢者が安心して年を重ねることができる社会」とは程遠い。