小沢一郎氏が立民執行部に投げた「ギリギリライン」の球の行方 小沢グループ復活の背景とは

立憲民主党の小沢一郎衆院議員を中心とした党内議員グループ「一清会」の発足を発表する同党の牧義夫衆院議員(右)ら=21日午前、国会内 政治・経済

小沢一郎氏が立民執行部に投げた「ギリギリライン」の球の行方 小沢グループ復活の背景とは(日刊スポーツ 2023年6月25日11時1分)

昨今、表舞台からは遠ざかっていた立憲民主党の小沢一郎衆院議員(81)の名前が、21日に閉会した通常国会の終盤に、表に出てくるようになった。次期衆院選に向けた、立民執行部による共産党などほかの野党とは「共闘しない」路線に反発する議員が、野党共闘の必要性を訴えて結成した「野党候補の一本化で政権交代を実現する有志の会」に、賛同議員の1人として出席。選挙での候補者一本化は、かねて小沢氏が主張してきたことだ。

また国会閉会日の6月21日に、小沢氏が会長に就任した党内政策グループ「一清会」の立ち上げを、側近議員らが発表した。立ち上げは前日の20日で、急なタイミングだったことをうかがわせた。記者会見に小沢氏は欠席したが、今後小沢氏も出席した会合を開催するという。

「一清会」は、旧民主党時代に一大勢力を誇った「小沢グループ」の復活を目指す動きと受け止められている。旧民主党時代にはかつて「一新会」や、超党派の「新しい政策研究会(新政研)」など、小沢氏が会長を務めるグループがあった。多くの議員が集まる「新政研」の毎週木曜日の定例会合は、記者にとって外せない取材機会だったことを覚えている。

今回、久しぶりに名前がついた形で立民内で復活することになったグループ名の「一清会」は、「百術は一誠に如(しか)ず」という小沢氏の座右の銘の「一誠」をモチーフに、「清くなくてはならない」(事務局長に就任した野間健衆院議員)ということでの「一清」という。無垢(むく)、まっさらを想定させる「清」という言葉を入れ込んだことに、「原点回帰」への思いを感じた関係者もいた。

会見した小沢グループの牧義夫衆院議員は、グループ立ち上げについて「地元を歩いていると『小沢さんは元気?』と声をかけられる。ますます元気で、3度目の政権交代をするまで死んでも死にきれないという思いだ」とした上で「立憲には厚みのある経験豊かな人がいることを世間に知らしめることも必要」と説明した。「旧民主党の政権運営の失敗の反省を踏まえ、今度こそ間違いのない政権交代を果たそうというのがいちばんの目的。柱になる政策を立てて今の自公政権とはここが違うということを示したい。他の野党との連携や協力も模索していかないといけない」とも述べ、日本維新の会の伸長で存在感が埋没しつつある野党第1党・立民の現状打開に向けた動きであることも、にじませた。

「反執行部」の動きではないと否定はしたが、明確な方向性があるようなないような、求心力をもって党内をまとめきれない泉健太代表や執行部への不満、揺さぶりと受け取る向きは多い。現メンバーは約15人。今後入会を募っていくという。

小沢氏はかつては「壊し屋」といわれた。表舞台に戻るような一連の動きが、立民内の今後に影響を与えるかどうかはまだ見通せないが、党内では「上に不満があっても、本気で戦おうとする議員がほとんどいない。小沢さんらの動きが『波風』になれば、党内にも変化が出てくるはずだ」という声も聞いた。

現在の執行部には、小沢氏の手法を見てきた岡田克也幹事長らもいる。警戒する向きもあるだろう。かつての民主党のように党内対立が激しく表面化すれば、党への信頼もなくなるし、小沢氏が以前のように党を割るようなことをしても、自身の得にもならない。小沢氏自身、前回衆院選では小選挙区で議席を得られず初めて比例復活となった。今回は、存在感をよみがえらせる動きの一環でもあるのだろうが、党の現状を考えると「やり過ぎ」は、誰も得をしない。「今の小沢さんの行動は、執行部へのけん制と党内政局ギリギリのラインを狙ってボールを投げたのだろう」と分析する永田町関係者もいる。

解散を見送った岸田首相は、今夏の内閣改造や党役員人事をした上で、秋にも選挙に踏み切るとの見方がある。一方で、自民党が2007年参院選で敗れたきっかけになった「消えた年金問題」のように、国民の生活に直結するマイナンバーカードをめぐる施策の失態が次々と明らかになっている。秋の選挙が念頭にあるのか、首相は秋までのデータ総点検を求めているが、期間が短いと自治体の評判もよくない。解散権を自ら封じた首相の思惑通りに解散が打てるのかという見方も少なくなく、衆院選は来年の参院選とのダブル選挙、再来年2025年の任期満了までずれ込む? などの臆測も飛び交っている。

直近の解散総選挙は遠のいたとみられる間に、野党第1党で始まった重鎮をめぐる動き。小沢氏の投げたボールを、執行部はどう打ち返していくのだろうか。