防衛財源法案、福島で地方公聴会 「なぜ復興財源が防衛費に」

防衛財源確保法案を巡る地方公聴会に出席した公述人ら=福島市で2023年6月12日 政治・経済

防衛財源法案、福島で地方公聴会 「なぜ復興財源が防衛費に」(毎日新聞 2023/6/12 19:25 最終更新 6/12 19:26)

防衛費増額の財源を確保するための特別措置法案を巡り、参院財政金融委員会は12日、福島市で地方公聴会を開いた。政府は東日本大震災の復興特別所得税を防衛財源に転用する方針を示しているが、被災した公述人からは復興財源の縮小を懸念する声が上がった。

公聴会では公述人3人が意見を述べた。今年3月末に原発事故に伴う帰還困難区域の一部で避難指示が解除された福島県浪江町の吉田栄光町長は「財源確保の仕組みが十分理解されておらず、説明が不十分だ」と指摘。町の8割がなおも帰還困難区域であることにも触れ、「古里に帰れない人からすると、なぜ復興財源が防衛費に回るのかと思うのは当然だ」と述べた。

また、同県いわき市民ら1300人超が国と東京電力に損害賠償を求めた「いわき市民訴訟」の伊東達也原告団長は「復興財源の軍事(防衛)費への転用は、被災地の願いと真っ向から反し、受け入れられない」と訴えた。

政府は防衛力の抜本的な強化を進める財源の一つとして、復興特別所得税の税率を現行の2.1%から1%引き下げ、新たに1%の付加税を課して防衛費に充てる方針だ。2037年末までとしていた復興特別所得税の課税期限については「復興財源の総額を確実に確保するために必要な長さ」で延長する。特措法案は5月23日の衆院本会議で可決され、参院で審議されている。