防衛費増額の4財源が抱える「不安」 結局「借金頼み」なら国家財政の危機増幅 特措法案が衆院通過

与党などの賛成多数で防衛財源確保法案が可決した衆院本会議(23日) 政治・経済

防衛費増額の4財源が抱える「不安」 結局「借金頼み」なら国家財政の危機増幅 特措法案が衆院通過(東京新聞 2023年5月24日 06時00分)

防衛費増額の財源確保のための特別措置法案は23日、衆院本会議で自民、公明両党の賛成多数で可決され、衆院を通過した。立憲民主党、日本維新の会、国民民主党、共産党などの野党各党は反対した。参院では24日に審議入りするが、野党は政府の増税計画などを問題視して徹底抗戦の構えだ。


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◆「子ども予算の倍増」の財源とも重複

政府が防衛費増額のための財源とする税外収入や決算剰余金などは、いずれも確保するのに不安があるものばかりだ。安定的に確保できなければ、国債増発につながる危うさがあり、国家財政の危機的状況を増幅しかねない。

四つの財源のうち、防衛力強化資金は、国有財産の売却や外国為替資金特別会計からの繰入金など税外収入で賄う。2023年度は4兆6000億円を確保したものの、今後も毎年、売却可能な国有財産を見つけ、成約するのは容易ではない。

税外収入を防衛費に充てることで、別の問題も生じる。一橋大の野口悠紀雄名誉教授は「税外収入はほかの経費にも充てられる。防衛に回した分の財源が少なくなり、国債発行につながる」と指摘する。

さらに一般会計の決算剰余金の一部を充てることについては、衆院の審議過程で危うさが露呈した。剰余金の額は各年度によってばらつきがあり、政府が確保の目標とする「1兆4000億円」に大きく届かない年も少なくない。

野党は「剰余金確保のために、巨額の予備費を計上し、予算を多く余らせるのではないか」と疑念を抱く。剰余金はこれまで経済対策として使われてきており、防衛費に回せば、経済対策の借金依存がさらに強まる恐れがある。

歳出改革にいたっては岸田内閣の看板といえる「子ども予算の倍増」のための財源としても当てにされており、どれだけ無駄や優先順位の低い歳出を削り、財源を確保できるのか、難航は必至だ。増税も開始時期が白紙状態。防衛財源の全体像は見通せないままだ。