菅義偉前首相動く「岸田降ろし」宣戦布告 「大増税路線」に苦言、嵐吹き荒れるか 勉強会で派閥勢力結集「政局見極め動き出す決断した」

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菅義偉前首相動く「岸田降ろし」宣戦布告 「大増税路線」に苦言、嵐吹き荒れるか 勉強会で派閥勢力結集「政局見極め動き出す決断した」(zakzak by 夕刊フジ 2023.1/15 10:00)

鈴木哲夫 ジャーナリスト

2023年が幕を開け、国内外の情勢が風雲急を告げている。欧米歴訪中の岸田文雄首相は13日午前(日本時間14日未明)、ジョー・バイデン米大統領とワシントンのホワイトハウスで会談し、軍事的覇権拡大を進める中国などを念頭に「日米同盟の強化」などで一致した。

一方、国内では菅義偉前首相が、岸田首相の「派閥主導の政治」や、増税路線に苦言を呈した。内閣支持率が低迷するなか、十分な説明や議論のないまま「大増税路線」に突き進む岸田政権に待ったをかけたのか。「政局の嵐」が吹き荒れそうだ。

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「派閥政治を引きずっているとのメッセージになり、国民の見る目は厳しくなる」

菅氏は10日発売の月刊誌「文芸春秋」のインタビューで、首相就任後も宏池会の会長を続ける岸田首相をこう批判した。同日夜、菅氏は外遊先のベトナムでも、岸田首相の経済政策について次のように語った。

「『少子化対策』は極めて重要だと思うが、消費税を増税してやるということは(私は)まったく考えていない」

岸田首相は年明け4日の年頭記者会見で、「異次元の少子化対策」を打ち出した。首相に近い自民党の甘利明前幹事長は翌5日放送のBSテレ東番組で「消費税増税論」に言及した。菅氏はこれに異議を唱えたのだ。

さらに、菅氏はベトナムで記者団に、「政治家は国民の負託を受けている。自らの理念や政策よりも、派閥の意向を優先するようなことはすべきでない」「歴代の多くは所属派閥を出て務めていた」などと続けた。

この経緯をどう見るのか。

菅氏の取材を20年近く続けるジャーナリストの鈴木哲夫氏は「月刊誌での発言、マスコミへの発信を含め、入念にタイミングを計算していた。岸田首相への『宣戦布告』だろう」と分析した。

菅氏の上げた〝狼煙〟は波紋を呼んだ。

菅氏が一昨年の自民党総裁選で推した河野太郎デジタル相は11日、「言うことも分からないではない。自民党の中はいろいろなものが派閥で動いているが、国民と向き合うのが大事」と述べた。

石破茂元幹事長も13日のTBSのCS番組収録で、「至極全うなことを言っている。形式として(首相になれば)派閥を離れるのは自民党の良識ではなかったか」と同調した。

一方、安倍晋三元首相が率いた安倍派所属の世耕弘成参院幹事長は「岸田首相が派閥色を露骨に出して仕事をしたり、決定したことは全くなかった」としながら、「派閥のトップ、派閥を離脱して首相や総裁を務めるというのが、安倍首相までの慣例だった。岸田首相自身が判断すればよい」と語った。

支持率低迷に直面する岸田政権は今年、統一地方選や衆院補選を控える。岸田首相が強い意欲を示す、5月に地元・広島で開催するG7(先進7カ国)首脳会議もにらみつつ、衆院解散に打って出るかが注目だ。

前出の鈴木氏は「だからこそ、菅氏は『政局』の年と見極めた。まずは増税路線に反対したが、安全保障政策などを含め、さらに対案を提示していくだろう」とみる。

具体的な動きは、どうなりそうか。

自民党内の勢力図=別表=は複雑だ。岸田首相は自身の岸田派と、茂木敏充幹事長の茂木派、麻生太郎副総裁の麻生派で主流派を形成するが、岸田派は第4派閥で、基盤は脆弱だ。

一方、菅氏は無派閥系議員に加え、二階俊博元幹事長の二階派、森山裕選挙対策委員長が率いる森山派との連携も強める。最大派閥で岸田政権と距離がある安倍派の有力者、萩生田光一政調会長とも距離が近い。

勉強会で勢力結集「ポスト岸田」人材探しか

鈴木氏は「岸田政権の増税方針は、財務省による『安倍派への報復』という側面がある。岸田首相はこうした官僚主導に乗っているが、政治主導を目指す菅氏が最も嫌う方向性だ」と指摘する。

菅氏と岸田首相には因縁がある。2021年10月に退陣した菅政権の末期、〝菅降ろし〟の火ブタを切ったのは、政調会長の岸田首相だった。

菅氏は退陣後、目立った行動を避けてきた。菅氏の今回の動きについて、立憲民主党の安住淳国対委員長は「いろいろな意味で、自民党内に不満がたまっている証拠かなと思う」と分析した。

鈴木氏は「岸田首相は最近、茂木氏、麻生氏と距離感も出つつある。菅氏は、安倍氏の悲報を受けて喪に服していたが、いよいよ動き出す決断をした。当面は、勉強会などの形で、勢力を結集し、政治情勢もみながら、『ポスト岸田』の適任となる人材を見定めていくことになるのではないか」と語った。

【自民党派閥勢力】

《主流派》
 岸田派(宏池会) 43人
 茂木派(平成研究会) 53人
 麻生派(志公会) 53人

《非主流派》
 安倍派(清和政策研究会) 96人
 二階派(志帥会) 43人
 森山派(近未来政治研究会) 7人

《無派閥》 83人

※国会資料などをもとに作成