世界平和統一家庭連合(旧統一教会)問題を受けた被害者救済法と改正消費者契約法が10日、参院本会議で与党などの賛成多数で可決され、成立した。救済法について自民、公明、立憲民主、日本維新の会、国民民主が賛成し、共産とれいわ新選組は反対した。
個人から法人や団体への寄付を規制の対象とした。寄付を勧誘する際、霊感の知見を使って不安をあおり、本人や家族の不利益を回避するには寄付が必要不可欠であると告げることなど6類型の行為で「困惑」させるのを禁止した。
寄付の原資を調達するのに借金をさせたり、自宅や田畑などを処分させたりするのも禁止する。これらに違反し、国の措置命令に従わない場合は、1年以下の懲役または100万円以下の罰金など罰則を設けた。
禁止行為に基づく寄付をした場合に本人による取り消し規定が設けられた。扶養されている子どもや配偶者も、寄付者に代わって生活費など将来受け取るべき分も返還請求を可能とした。
寄付を求める法人には、「意思を抑圧して適切な判断が困難な状態に陥らせない」など3項目の配慮義務を課した。マインドコントロール(洗脳)下での勧誘行為は配慮義務として条文に盛り込むにとどめた。配慮義務を守らない場合は、行政が勧告や団体名の公表を行える。
施行は一部を除き公布から20日後で、過去の被害は対象外となる。施行後2年をめどに見直しを検討する。
松沢成文・消費者問題に関する特別委員長
ただいま議題となりました両法律案につきまして、消費者問題に関する特別委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。
まず、消費者契約法及び独立行政法人国民生活センター法の一部を改正する法律案は、社会経済情勢の変化等に対応して、消費者の利益の擁護を更に図るため、消費者契約の申込み等の意思表示を取り消すことのできる範囲を拡大するとともに、取消し権の行使期間を伸長するほか、独立行政法人国民生活センターの業務に適格消費者団体が行う差止請求関係業務の円滑な実施のために必要な援助を行うことを追加する等の措置を講じようとするものであります。
次に、法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律案は、法人等による不当な寄附の勧誘を禁止し、当該法人等に対する行政上の措置等を定めるとともに、寄附の意思表示の取消しの範囲の拡大及び扶養義務等に係る定期金債権を保全するための債権者代位権の行使に関する特例の創設等の措置を講じようとするものであります。
なお、衆議院におきまして、法人等が寄附の勧誘を行うに当たり、「配慮しなければならない」という規定を「十分に配慮しなければならない」に改めること、配慮義務の遵守に係る勧告、公表等についての規定を創設すること、この法律の規定についての検討に関して、施行後「三年を目途」から「二年を目途」に改めること等を内容とする修正が行われております。
委員会におきましては、両法律案を一括して議題とし、参考人から意見を聴取したほか、内閣総理大臣の出席を求め、質疑を行いました。
委員会における主な質疑の内容は、被害者の困惑についての立証の困難性、寄附を勧誘する際の配慮規定の意義と効果、被害者救済の実効性の確保、新法の適切な運用と必要な見直し、衆議院における修正によって期待される効果等でありますが、その詳細は会議録によって御承知願います。
質疑を終局し、討論に入りましたところ、日本共産党の山添委員より消費者契約法等改正案に賛成、寄附の不当勧誘防止法案に反対の旨の意見が述べられました。
次いで、順次採決の結果、消費者契約法等改正案は全会一致をもって、寄附の不当勧誘防止法案は多数をもって、それぞれ原案どおり可決すべきものと決定をいたしました。
なお、両法律案に対し附帯決議を行いました。以上、御報告申し上げます。
反対討論 仁比聡平(日本共産党)
日本共産党の仁比聡平です。
私は、会派を代表して、消費者契約法等一部改正案に賛成、法人等寄附不当勧誘防止法案に反対の討論を行います。
二法案は、安倍元首相の銃撃事件を契機に、我が国の重大な政治課題となっている統一協会問題について、霊感商法と高額献金問題に絞って新たな規制を設けようとするものです。
消費者契約法等改正案は、これまでも強く求められてきた付け込み型勧誘への取消し権をようやく霊感商法対策としては導入するなど、前向きな一歩を評価し、不十分ながら賛成します。
しかし、法人等寄附不当勧誘防止法案は、衆参両院の参考人質疑で、全国霊感商法対策弁護士連絡会の川井、阿部両弁護士から、統一協会の被害救済という意味では余りにも不十分と述べられたとおりです。
統一協会の加害行為と深刻な人権侵害の中核は、正体を隠して勧誘し、マインドコントロール下に置いて教義を植え付け入信させ、人々の人生をめちゃくちゃにする信教の自由の侵害にあります。宗教的活動を装いながら、社会的相当性を逸脱したその反社会的不法行為の実態は、既に数々の民事不法行為判決によって明確にされてきました。にもかかわらず、統一協会はなお不法行為をやめず、現に被害者が広がっているのです。
全ての被害者を救済し、被害を根絶する。それが今国会に問われている重大な責務です。法案は、被害の実態に照らし、極めて不十分であり、実効性を明確にするよう修正されるべきです。我が党は、会期を延長し、更に審議を尽くすべきことを主張してまいりましたが、このまま採決をすることに反対をするものです。
法案の最大の問題点は、寄附の勧誘に関する禁止行為について、法案第四条がいわゆる困惑類型のみを対象としていることです。とりわけ同条六号が、一、寄附の勧誘をするに際し、二、不安をあおり、又は不安に乗じて、三、寄附が必要不可欠と告げることによって、四、困惑させてはならないと定め、政府の、政府も、その全てがそろわなければ取消し権は認められず、政府の勧告、命令の対象にもならないことを認めたことは重大です。
昨夜、参考人としておいでいただいた元二世信者の小川さゆりさんは、家庭も将来も顧みない献金被害について、次のような凄惨な体験を語ってくださいました。
幼少期から貧しい暮らしを強いられ、親戚からのお小遣い、お年玉は没収され、誕生日、クリスマスプレゼント、小学校の卒業アルバムなどは買ってもらえませんでした。服はお下がりで、美容院等へは行かせてもらえず、小学校一年生の頃から見た目の貧しさからいじめに遭いました。成人式に至っては、興味がないとしてもらえず、両親が親戚中を勧誘したり、お金を要求したり、そのことで怒られているところも見てきました。また、高校生から始めた五年間のアルバイト代、約二百万円も没収され、一度も返ってきませんでした。このような生活状況にかかわらず、両親は、私たち兄弟に一切相談なく高額な献金を繰り返してきました。
そういった献金につながる教育は幼少期から強制的に行われていきます。献金の歌を毎週歌わされました。感謝の献金、神の国を建てるため、真心込めてささげますという歌詞が入っていました。意味も分からず毎週その歌を歌って、献金箱に百円を入れていました。というのです。
植え付けられた責任感や使命感によって進んで献金させられている統一協会被害者とその家族をこの法案で救済できるのか。入信から献金まで数年、数十年のタイムラグがあっても寄附の勧誘に際しと認められるのか、個々の献金について重大な不利益を回避するために必要不可欠と告げられてはいない被害が救済されるのか、重大な懸念があります。
岸田総理は、いわゆるマインドコントロールによる寄附は、多くの場合、不安を抱いていることに乗じて勧誘されたものと言える、寄附当時は困惑しているか判断できない状態であったとしても、脱会した後、冷静になって考えると、当時不安に乗じて困惑して寄附をしたということであれば、そのような主張、立証を行って、取消し権を行使できる、さらには、入信前後から寄附までが一連の寄附勧誘であると判断できる場合は取消し権の対象となるなどと答弁していますが、条文に照らしどのように読むのか、その解釈が裁判に堪えるのか、被害者やその家族に一体どのように立証せよというのか、極めて疑問です。阿部参考人は、そのような解釈を取るのであれば端的に条文に書き込んでいただきたいと述べましたが、そのとおりではありませんか。
消費者契約法から借用してきた困惑類型に固執せず、全国弁連が求め、我が党も修正案で提起したように、個人を適切な判断をすることが困難な状態に陥らせ、又は、当該個人がそのような状態に陥っていることに乗じ、寄附の勧誘をしてはならないことを明らかにする条文に改めるべきです。
また、献金の領収書を示そうとしない統一協会に対して、高額献金を受け取った場合に帳簿の作成を義務付け、寄附をした本人から求められたときは帳簿の開示を義務付けるべきです。
第二に、自由な意思を抑圧し、適切な判断をすることが困難な状態に陥らせないこと、生活の維持を困難ならしめないこと、正体を隠して寄附される財産の使途を誤解させないことを禁止行為とせず、法案第三条に言う配慮義務にとどめたことです。
罰則による強制力がなく、十分に配慮しなければならないというにとどまる修正条文が、私人間の寄附勧誘の場面で裁判上どのように機能するのか、委員会審議でも結局明らかにはならず、また、義務違反が主張、立証できても、それだけでは財産は戻ってこないことも政府は認めました。明確に禁止行為とし、取消し権、また、勧告、命令という行政措置の対象とすべきです。
さらに、修正第六条が配慮義務遵守を求める勧告の極めて厳しいハードルを課していることは、阿部参考人がこの要件ができるだけ高くならないように解釈をと指摘したとおりです。
与党修正案担当者は、禁止行為と比較してより穏やかな規制、不遵守があったとしても謙抑的、慎重に行政権限の行使がされるのが相当などと述べましたが、我々は、統一協会の十分に配慮したなどの弁解を断じて許してはなりません。
債権者代位権の特例についても、本人がマインドコントロールされ取消し権を行使しないとき、家族が取り消す立証は難しいことは明らかです。取り戻せる範囲も僅かな扶養義務の範囲に限定され、法定代理人である親の同意が期待できない未成年の子の保護は極めて困難であるなど、重い課題は残ったままです。
また、取消し権の行使期間は、民法の原則どおり二十年とすべきです。
小川さゆり参考人が、二世被害者から寄せられたアンケートも踏まえ、自分の経験を話すだけでも深く傷つき、皆が体調を崩しながらも訴え続けてきました、それは、政府が本当に動いてくれるのか信じられない、被害拡大の張本人の与党側にそのような動きが見られないから被害者がそこまでやるしかなかったという事実を忘れないでいただきたいですと訴えたことを、私たちは絶対に忘れてはなりません。
福岡地方裁判所で初めての不法行為判決が勝ち取られたのは一九九四年のことでした。日本弁護士連合会は、既に、一九九九年、宗教的活動に係る人権侵害についての判断基準を示していました。そこからでも四半世紀以上がたちます。
岸田総理は、自民党と統一協会の癒着によって被害を拡大させた責任をどう考えるかと問われ、最後まで答弁を避けました。その根本には、岸信介元首相以来、統一協会と、反共、改憲、ジェンダー平等への敵対で一致し、相互に利用し合い、重大な人権侵害の後ろ盾、広告塔になってきた、半世紀を超える深い癒着があります。その中で生まれ、人権侵害にさらされ、声を上げられずに苦しみ続けてきた多くの被害者の方々の苦しみを思うと胸が詰まる思いがいたします。
政府は、速やかに統一協会の解散命令を裁判所に請求すべきであります。
また、相談窓口に寄せられている今日の被害の実態を責任を持って取りまとめ、国会へ報告すべきであります。
二年の見直し期間を待つことなく、我々国会がこのまま統一協会問題の議論を正面から続け、全ての被害者の全面救済の方策を具体化していくことを同僚議員の皆さんに呼びかけ、反対討論といたします。
賛成討論 森本真治(立憲民主党)
立憲民主党の森本真治です。
私は、会派を代表して、ただいま議題となりましたいわゆる被害者救済法案について、賛成の立場から討論いたします。
本日、会期末を迎えることとなりました今臨時国会、重要なテーマとなったのが旧統一教会の問題でありました。
本年七月、立憲民主党は、いち早く旧統一教会被害対策本部を立ち上げ、被害の実態、現行法制度による救済の限界、具体的な救済の方策等について真摯な議論を積み重ねてきました。特に、宗教二世や元信者の被害者の皆さん、弁護団の皆さんからのヒアリングに力を入れ、被害の実態を伺ってまいりました。
昨日、参考人として本院の委員会にも出席された小川さゆりさんは、御家庭が寄附を続けていたことから、経済的な困窮状態で、学生時代のバイト代の約二百万円も親に没収され、同じ時期に親は高額の寄附をしておりました。旧統一教会による苦しみからこれからの子供たちを救いたいと与野党のヒアリングにも参加し、被害を訴えていただきました。
橋田達夫さんは、元妻が入信し、合計約一億円もの高額献金をめぐり夫婦間でけんかが絶えず、離婚せざるを得なくなり、家庭は崩壊し、息子さんは自らの命を絶たれております。橋田さんも、これからの子供たちを同じような旧統一教会による被害に遭わせたくないと訴えておられます。
しかし、こうした被害を訴えてきた橋田さんに対し、旧統一教会側は自宅にまで押し寄せ、マスコミに出ないでほしい、一対一で話がしたいと迫るなど、深刻な被害を社会に訴えようとしている言論を封殺しようとする、そのような非常識な行為まで行っています。
旧統一教会問題に関しては、今なお多くの被害が続いています。日弁連の集計によれば、二十年以上前に被害が始まったという相談が六〇・五%を占め、一千万円以上の財産的被害が四割超、一億円以上の被害も五・五%に上ります。生活を破綻させてしまう被害に対し、今こそ国を挙げて救済に取り組み、不安を抱える国民に希望の光をもたらすことが求められています。
立憲民主党は、被害が続く状況をこれ以上無視するわけにはいかない、必ず被害者の救済につなげなければならないとの思いから、日本維新の会との共同提出で、十月十七日に悪質献金被害救済法案を提出いたしました。
この法案では、マインドコントロールによって信者に高額献金等を繰り返させるような行為を特定財産損害誘導行為とし、このような行為により、献金等を取り消せるようにしたものであります。
さらに、マインドコントロール下にあって本人の取消しが見込めない場合があることを踏まえ、特定補助制度を利用することにより、家族などによる取消しも可能とすることとし、被害者やその家族を幅広く救済できるものとなっています。
政府においても、検討会で議論を重ねるなどして対応に取り組み始めたものの、我々が法案提出した当初、政府は、今国会には消費者契約法等の改正案しか提出しない、本命である悪質な高額寄附に対応する法案は今国会には出さないとの姿勢でした。
しかし、我が党が与野党協議や幹事長会談などを通じて粘り強く働きかけたことで、ようやく政府から法案が提出されました。
当初、政府が提出した法案は、厳格な要件を付した寄附の勧誘に関する禁止行為を定めるばかりで、自由な意思決定を著しく困難とさせるような、いわゆるマインドコントロールに陥らせるという行為への対応は極めて不十分なものとなっていました。
その後、粘り強く修正協議を行い、旧統一教会などの悪質献金等被害の予防、救済の実効性確保の観点から配慮義務規定に報告や公表が追加されるなど、一定の前進はありましたが、寄附の取消し要件は依然として厳しく、立証が困難であること、マインドコントロールの影響を受けた本人が権利を請求するには十年という時効は民法の二十年と比べてもまだまだ短過ぎることなどが指摘されているほか、本人や家族の救済手段である債権者代位権の行使についても、扶養義務に基づく返還請求は主に未成年が対象となり、成人した家族は救済の対象外となるのではないかという懸念や、未成年者が親の意向に反して取戻しを請求するのは現実的に困難ではないかとの批判もあり、不十分な点が残されています。全国霊感商法対策弁護士連絡会が発した声明で、加害行為の実態に即していないとの指摘もなされています。
昨日の委員会において、小川さゆりさんは、今回短期間で新法を作ってくれたことに心から感謝したいと謝意を示された一方、法案では宗教二世ら子供の被害が救済できない、来年の国会で宗教的な児童虐待を防止する法案を与野党で協力して成立させてほしいとも訴えられました。積み残された課題を必ず解決することにより、全ての被害者が救済され、被害者になり得る全ての国民が安心して暮らせるよう、政府が率先して策を講じることを心から願います。
そして、小川さんは訴えられました。被害者が何度も被害を訴え、そのたびに現役信者や一般の方から攻撃され、深く傷つき、体調を崩しながらも訴え続けてきた、それは、政府が本当に動いてくれるのか、被害拡大の張本人の与党にそのような動きが見られなかったという事実を忘れないでいただきたいと。
三十年もの長きにわたり政府も行政も問題を放置してきたことを反省し、まずは今回の法案を最初の一歩、歴史的な一歩とし、今後の予防、救済策の実効性を向上させなければなりません。私たちの議員立法がきっかけとなり、与野党協議が重ねられ、政府により被害者救済法が成立することは、国会のあるべき熟議のモデルとして歴史に残るものと確信をしております。
以上、被害者救済法案について申し述べてまいりましたが、最後に一言申し上げます。
まず、今国会の国会運営についてです。
国会審議が土曜日のこの時間にまで及ぶ異例の事態です。多くの官僚の皆さんや職員の皆さんに御迷惑を掛けています。元はといえば、政府・与党の余りにひどい見通しの甘さ、認識の甘さが生んだ事態ではないでしょうか。思えば、国会開会すぐに、ほとんど日程が入らない一週間がありました。日程の見通しの甘さは、我々参議院に無理な日程を強いることになり、政府・与党が成立を諦める法案も散見されました。政府・与党の責任は極めて大きいと厳しく断ぜざるを得ません。
この本会議場のひな壇に居並んでいた閣僚の皆さんが次から次へと入れ替わるさまには、驚き、あきれ果てました。山際経済再生担当大臣、葉梨法務大臣、寺田総務大臣と、僅か一か月の間に三人もの大臣が相次いで辞任をするという異例中の異例の事態でした。これに加えて、あの秋葉復興大臣をめぐる数々の疑惑はついぞ晴らされることはなく、挙げ句の果てには、大臣に言われ、嫌々ながら謝罪をしたのかしないのかも分からない、どこかの政務官までいます。
また、自民党と旧統一教会の関わりについても、その関係の深さには驚かされました。自民党による自己申告による調査結果は次から次へと覆され、関係する政務三役は国会でその釈明に追われる有様でした。
余りに遅い補正予算、何をしたいか分からないコロナ対応、一方では、防衛費を大幅に増やすと規模だけ打ち上げて、その財源については閣僚同士の認識すらそろわないというていたらく。
岸田総理の聞く力とはどこへ行ったのでしょう。聞くだけ、見ているだけでは、我が国の置かれた難局はもはや乗り切れないことを厳しく指摘をし、討論を終わります。
御清聴ありがとうございました。
賛成討論 宮崎勝(公明党)
公明党の宮崎勝です。
私は、会派を代表し、消費者契約法及び独立行政法人国民生活センター法の一部を改正する法律案及び法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律案について、賛成の立場から討論をいたします。
これまでに、世界平和統一家庭連合、旧統一教会については、霊感商法や不当な寄附の勧誘行為による深刻な被害が生じてきました。そして、今もその被害に苦しんでいる方や御家族の方がいます。人生の中では不条理なことや様々な苦難や不安を感じることがあります。その不安を利用し自らが利益を得るような悪質な行為は、断じて許すことはできません。
このような被害を受けた方を救済し、今後の再発防止を図ることを通じて政治としての役割を果たしてまいりたい、この思いで、我が党としても、弁護士や関係省庁、有識者との意見交換を重ね、政策提言を政府に提出するなど、必要な施策の推進に取り組んでまいりました。
そして、本日、本法律案が与野党協議や衆参両院での濃密な議論を経て採決まで至ったことは全ての関係者の皆様の御尽力のたまものであり、深い敬意と感謝を申し上げます。
本法律案に賛成する理由は以下の三点です。
第一に、旧統一教会による悪質な霊感商法や不当な寄附の勧誘行為による被害実態に即したものになっている点です。
消費者契約法を改正し、取消し権を行使することができる範囲を拡大し、その行使期間を伸長することで被害救済に資する内容になっています。
新法案では、法人等による寄附の勧誘行為一般を規制することを可能とし、寄附を行うに当たっての配慮義務を設け、社会的に許容し難い悪質な寄附の勧誘行為や借入れ等による資金調達を禁止し、被害の未然防止が強化されます。また、悪質な勧誘がなされた場合には取消しが可能となるとともに、配慮義務や禁止規定に違反した場合には民法上の不法行為の認定が容易となり、事後的な救済の道も大きく開かれることになります。
さらに、旧統一教会の被害には家庭全体の困窮という実態が多く見られるところ、新法では、配慮義務の対象に家族の生活の維持に関する規定を設けるとともに、債権者代位権の行使の特例を定めることによって、養育費や婚姻費用などの扶養義務に係る債権については将来の分についても保全することが可能となります。
これらの規定によって、家族の被害の救済についても充実が図られることになります。あわせて、法テラスを中心とした相談体制の強化も図られ、制度の利用をフォローすることまでも法律の内容としています。
このように、本法案は、被害実態に即し、現行法制下において最大限救済できる内容になっていることが賛成の第一の理由です。
第二に、違反した場合の行政措置、罰則を設けることによって、被害防止と救済の実効性が更に高まっている点です。
禁止行為の違反について、報告徴収、勧告、命令、公表に関する規定が設けられ、命令に違反した場合には罰則も科せられることになります。これにより、禁止規定の遵守が強力に担保されることになります。
また、衆議院の修正により、新法の配慮義務についても、一定の明確な要件の下で報告徴収、勧告、公表の対象となり、旧統一教会に象徴されるような悪質な事例を抑制する機能も強化されました。
これらの規定により、被害防止と救済の実効性が高められることが賛成の第二の理由です。
第三に、本法案が他の権利利益とのバランスが図られている点です。
新法案の禁止行為の規定については、一定の明確性が担保されることでNPO法人等が行う健全な寄附の勧誘行為に萎縮効果をもたらすことのないように配慮されるとともに、運用上の配慮規定も設けられております。また、国会審議を通じて、本法案の運用に際しては寄附文化の醸成を阻害することがないよう、他の権利利益を侵害することがないように留意する旨が確認されました。
このように、本法案は、憲法を始め現行法体系の下で他の権利利益との均衡も図られ、バランスの取れた法律に仕上がっていることが賛成の第三の理由です。
最後に、本法律案の運用に際しては、周知並びに充実した相談体制が必要であることは言うまでもありません。法テラスや国民生活センターの方々を始め現場で相談に当たられている方々に本法律案を活用し、被害を受けている方々のお力になっていただけるよう、改めてお願い申し上げ、私の賛成討論といたします。
御清聴ありがとうございました。