2021年6月16日

通常国会、延長せず閉幕 衆院選へ与野党本腰
第204通常国会は16日、150日間の会期を終え閉幕した。新型コロナウイルスの感染状況が政局の行方を左右する状況は変わらず、野党は切れ目ない対策を主張し会期延長を要求したが、与党は応じなかった。焦点は7月4日投開票の東京都議選と、9月にも行われる衆院解散・総選挙に移り、与野党は準備を本格化。菅義偉首相は、政権の浮沈が懸かるコロナ対策に全力を挙げる。感染収束の鍵を握るワクチン接種について、首相は10~11月完了を目指して作業を加速させる。16日、首相官邸で関係閣僚と協議した後、記者団に「地域ごとにしっかり対策を行い、ワクチン接種を進め、感染防止に努めていきたい」と語った。

首相、9月解散検討 パラ後に臨時国会召集
菅義偉首相は東京オリンピック・パラリンピック後の9月に衆院を解散する検討に入った。政権幹部が15日、明らかにした。パラリンピック後に臨時国会を召集し、会期中に解散に踏み切ることを想定。解散から40日以内に実施される次期衆院選の具体的な日程は新型コロナウイルスワクチンの接種状況なども見極めながら判断する。首相はこれまで「私の総裁任期の中で解散・総選挙は考えなければならない」と語り、9月末までの自民党総裁任期中に解散する考えを示してきた。次期衆院選で自民党が勝利し、総裁選を迎えることで、無風で再選を果たす戦略を描いている。

沖縄除く9都道府県宣言解除へ 一部まん延防止に移行 酒類提供容認
政府は16日、首相官邸で新型コロナウイルス対策の関係閣僚会合を開き、10都道府県に発令している緊急事態宣言について、沖縄県を除く9都道府県で期限の20日までで解除する方針を固めた。北海道、東京、大阪、京都、兵庫、愛知、福岡の7都道府県は21日から「まん延防止等重点措置」に移行する。沖縄県の宣言延長と、7都道府県のまん延防止措置適用の期限は7月11日とする方針。17日の政府対策本部で正式決定する。

感染状況が大幅に改善した広島、岡山両県は「全面解除」とする。沖縄県は新規感染者数が国の感染指標で最悪の「ステージ4(感染爆発)」相当にとどまり、玉城デニー知事から宣言延長の要請があったことから判断した。一方、まん延防止措置を適用している千葉、神奈川、埼玉の首都圏3県は期間を延長する方向だ。岐阜、三重両県は20日の期限で解除する方針。

宣言下では酒類を提供する飲食店に休業を要請している。重点措置への移行後は、酒類提供を午後7時まで、営業を午後8時まで認めるものの、具体的な対応は知事に委ねる方向だ。

高齢者接種「7月末完了」100%に 1741市区町村回答
新型コロナウイルスワクチンの高齢者向け接種を巡り、全国の1741市区町村全てが、政府が目標に掲げる「7月末までの完了」を達成できると総務省に回答したことが分かった。政府関係者が16日、明らかにした。菅義偉首相が4月に目標を表明して以降、政府は各自治体に計画の前倒しを求めていた。

総務省はこれまで、3回にわたって、全国の自治体を対象に調査を実施。6月1日時点の3回目調査では全体の98・7%にあたる1718自治体が7月末完了見込みと回答していた。その後、残りの23自治体もワクチン供給量の調整や接種計画を見直すなどし、終了の見込み時期を前倒しした。ただ、中には「医療従事者の確保が前提」との回答もあり、医師らの確保は依然課題となっている。

大規模接種センター、17~20日予約分ほぼ埋まる 対象拡大効果か
自衛隊が東京と大阪に開設した新型コロナウイルスワクチンの大規模接種センターを巡り、防衛省は16日、週内(17~20日)の予約枠がほぼ埋まったことを明らかにした。この日から予約の対象年齢を18~64歳に拡大しており、一定の効果があったとみられる。一方で来週(21~27日)の予約枠は東京が7万人分の半分程度、大阪は3万5000人分の7割程度がそれぞれ空いているという。予約の手続きには市区町村から住民に配られる接種券が必要。自治体によって配布する時期が異なり、予約したくてもできない人もいるとみられる。

感染研「7月後半にも宣言再発令の可能性」 変異株の影響試算
国立感染症研究所は16日、新型コロナウイルスの感染力が強いとされるインドで確認された「L452R」変異株の影響が小さかったとしても、東京オリンピック・パラリンピック期間中の7月後半から8月前半に緊急事態宣言の再発令が必要となる可能性があるとの試算を公表した。L452R変異株の影響が大きい場合、最速で7月前半の再発令の見通しも示した。脇田座長は「ワクチン接種が進めば重症者数は減るが、ただちに大丈夫だということではない。人出や変異株への置き換わりを抑える対策をしないといけない」と指摘した。

ベトナムにワクチン輸送 100万回分を無償提供
政府は16日、新型コロナウイルスのワクチン約100万回分をベトナムに無償提供するため、成田空港発の航空機で発送した。日本からのワクチンの現物供与は、今月4日に124万回分を届けた台湾に続く第2弾。7月以降、インドネシアとタイ、フィリピン、マレーシアにも供与する方針。ワクチン支援を通じて東南アジア諸国連合(ASEAN)との関係を強化したい考えだ。

ベトナムは新型コロナ感染の拡大を抑えてきたが、4月下旬から感染者が急増。一方でワクチン接種は遅れている。日本が提供するのは国内で生産された英アストラゼネカ製で、同社製はベトナムでも承認されている。茂木敏充外相は台湾とベトナムへの追加提供を検討する考えも示している。

アフリカのコロナ感染者500万人超え 死亡率、世界全体上回る
アフリカ疾病対策センターによると、アフリカ地域で確認された新型コロナウイルス感染者が15日までに500万人を超えた。陽性者数に対する死亡率は世界全体を上回った。ワクチンの接種が進まない中、先進国に対するワクチン寄付への期待が高まっている。

アフリカのワクチン接種わずか2% 資金足りず、国際支援も滞り
先進国で新型コロナウイルスのワクチン接種が進む一方で、アフリカの遅れが顕著になっている。多くの国が自前でワクチンを調達する資金がなく、国際機関などからの支援に頼っているためだ。1回以上接種を受けた人は人口の2%程度(6月13日時点)にとどまり、景気回復の足かせにもなると見られている。