コロナ特効薬「モルヌピラビル」入手困難のナゼ…専門家も呆れる厚労省の“不手際”ぶり(日刊ゲンダイ 公開日:2022/02/03 06:00 更新日:2022/02/03 06:00)
すぐに使えるはずのコロナ特効薬「モルヌピラビル(商品名ラゲブリオ)」が使えず医療現場に不満と動揺が広がっている。
米メルクが開発し大手製薬会社MSD(本社・東京)が、昨年末に新型コロナウイルス感染症の治療薬として国から特例承認を受け製造販売している初の飲み薬だ。
本来ならとっくに一般流通し、重症患者の減少に寄与しているはずなのだが、実は厚生労働省が設けた流通の縛りで、医療機関も製剤薬局も入荷困難な状態が続いているのである。
現状、安定供給が難しいため一般流通は行わず、厚労省が所有し配分するとし、
①薬剤の配分を受ける医療機関、製剤薬局は、都道府県と厚労省が薬剤の供給を委託したMSDの登録センターへの登録の義務
②本剤は薬局が責任を持って患者宅に届ける
③薬の発注は1回につき3人分まで
──とする通達を医療機関、薬局に出しているのだ。
異常な薬局への条件
事前に都道府県に登録しリストに掲載されていることが薬剤発注の必須条件になっているのだが、薬局への条件は異常だ。わだ内科クリニック(東京・練馬区)の和田眞紀夫院長が疑問を投げかける。
「薬局の登録は夜間、休日、時間外、緊急時の対応が可能とする要件を満たすことを条件にしています。つまり24時間対応できなければ登録申請はできないということです。診療所内で薬剤を管理する院内処方の施設や24時間対応している大手調剤グループは登録できても、院外処方しているほとんどの調剤薬局では登録申請できない状態です。そのため多くの診療所がラゲブリオの処方ができずにいるんです」
さらにこう続ける。
「24時間対応の条件でも薬局に負担なのに、薬剤は責任を持って直接患者の元に届けるとされています。これでは感染者が急増したら医療従事者だけではなく、薬剤師も含め医療システムは破綻します」
現実離れした発注“縛り”
これだけではない。薬の発注は1回につき3人分までとする現実離れした縛りは、1日に患者が5~6人来たら処方箋は回らなくなる。しかも、発注は必要な患者が発生してから行うと指示され、さらに本剤が届くまで発注から2日程度かかるため、当日の患者に薬を出すことは不可能といえる。
ラゲブリオの処方は、18歳以上で重症化リスクの高い軽症・中等症の患者が対象で、入院や死亡リスクを30%下げる効果が確認されている。医療ガバナンス研究所の上昌広理事長が厚労省の指導に呆れてこういう。
「ラゲブリオはものすごい特効薬で世界中で確保の動きが加速しています。それにしても一般流通する薬を発注するのに二重の登録をさせるとか、薬局に配達させるとか、本来まったく必要のないことです。厚労省が薬剤の確保に遅れ、少ない契約しかできなかったことの責任追及を逃れるための縛りです」
ワクチン供給で世界から後れを取った日本、今回の治療薬でも不手際が繰り返されている。