〈総裁選大本命からまさかの大失速〉進次郎氏に懸念される「河野太郎」化…閣内入りは諸刃の剣か、プリンスの生き残り戦略と“ケツモチ”の今後

激戦の舞台裏 菅氏は野党取り込み工作 政治・経済

〈総裁選大本命からまさかの大失速〉進次郎氏に懸念される「河野太郎」化…閣内入りは諸刃の剣か、プリンスの生き残り戦略と“ケツモチ”の今後(集英社オンライン 2025.10.06)

「勝ち馬」を確信していた小泉陣営や、「小泉進次郎首相」シフトを敷きつつあったマスコミを呆然とさせた、高市早苗氏の総裁選逆転劇。その陰で2回連続の「ズッコケ大失速」となった小泉進次郎農水相の行く末は。彼の強力な後ろ盾となってきた菅義偉元首相、決選投票では進次郎氏に投票したとみられている岸田文雄前首相の今後にも左右されそうで……。

集英社オンライン編集部ニュース班

陣営がズッコケた進次郎氏の「思い出」演説

「なんだこの演説…」「中身がなさすぎる…」

4日、自民党総裁選の決選投票前、最後の支持を訴える演説。進次郎氏が「仲間たちのおかげでこの舞台に立てました」などと陣営への感謝や初当選時の思い出話ばかり語ると、その場に出席していた議員は関係者と思わずそうLINEでやりとりしたという。

決選投票前の演説は1人5分。高市氏が国家像のほか物価高対策や外交、経済政策などに取り組む決意を述べたのとは対照的に、進次郎氏はほぼ感謝と思い出を語ることに終始した。

「今も派閥を率いる麻生太郎最高顧問が事実上、麻生派議員に高市氏への投票を呼び掛け、さらに1回目投票で麻生氏に票を回してもらった小林鷹之、茂木敏充の両陣営が高市氏に流れたことも大きいが、最後の演説で『進次郎ではダメだ』と思った議員が一定数いたと思う。重要な場面で、カンペを見ないで話したと思ったらこれか、とズッコケた議員は多かったのでは」(自民議員)

昨年の総裁選では選択的夫婦別姓などを掲げて保守票を取りこぼし、さらに論戦力不足を露呈した反省を踏まえ、今回は立候補表明以来、防戦に徹していた進次郎氏。

「ステマ」疑惑などが報じられても多くのメディアで優勢とされ、陣営には安堵感が漂っていたという。

「進次郎氏が勝つことを前提に、早くも人事や連立拡大の話がされていましたし、総裁選当日は、総理になる進次郎氏といち早く写真を撮ったり話したりしたいと、地方議員がわざわざ地元の重要会合を休んでまで進次郎氏の決起集会に来ていました。完全に『勝った』という雰囲気でしたね」(自民党関係者)

後ろ盾の菅氏がいなくなると、総理への道はさらに険しく…

そんな直前までの「勝った」という雰囲気から一転、「ズッコケ」のイメージがついてしまった進次郎氏だが、彼の今後は……。

「総裁選で2回も失速すると、『刷新感』という進次郎氏最大の武器が失われてしまう。若手時代から歯に衣着せぬ発言で注目を集め、総裁選に立候補したもののチャンスをつかめず、今回は出馬すらかなわなかった河野太郎氏を彷彿とさせる」(全国紙政治部記者)

さらに進次郎氏の今後を左右するのが、後ろ盾となっていた菅義偉元首相の去就だ。菅氏は長らく体調不良がささやかれており、次期衆院選には出馬しないとの見方も強い。

「今回、進次郎氏陣営についた議員には、菅氏に近い議員も多い。菅氏が積極的にほかの議員を支援したい中堅・若手議員をも進次郎陣営に引き込んだ。それだけに菅氏が引退すると、今回ほどの議員票を集められない可能性も高くなる。

そもそも進次郎陣営には進次郎氏の人気にあやかりたい、という思惑があった人も多く、今回の『ステマ』の印象も含めてアンチが増えた進次郎氏の求心力は落ちていくのでは」(同)

いっぽう、もう一人の重鎮、岸田文雄前首相は高市氏と距離があり、しばらく政権中枢や党執行部への影響力はそがれるとみられる。

ただ、仮に次回総裁選に進次郎氏が出馬するとしても、自身の主流派復帰を目指して進次郎氏につくかは微妙だ。

「岸田氏は今回、高市氏VS小泉氏の決戦投票の場合、小泉氏を支援するとされていましたが、前回総裁選の石破氏VS高市氏の決選投票のときのように大々的には動きませんでした。

進次郎氏の能力にも疑問を持っていたとみられていますし、今後、場合によっては岸田氏自身も再登板への意欲があるとされています」(同)

閣内に取り込まれると、課題の党員票伸長も難しく

高市政権では非主流派となる菅氏と岸田氏、2人の重鎮の今後も不透明で、正念場を迎えている進次郎氏。そんな進次郎氏について、高市氏は農相以外の閣僚への起用を検討中と報じられている。

「進次郎氏が高市氏の決選投票で票数がもっと競ったものであれば、党内融和を優先して幹事長に推す声も高まっていたでしょうが、決選投票では進次郎氏が優勢とみられていた議員票でも高市氏に負けた。陣営内でも『2位の進次郎氏にそれほど配慮する理由はない』との声が上がった」(自民関係者)

そんななか、高市氏のもとで閣内に入ることは、進次郎氏にとって諸刃の剣だ。

大臣になることで、国会答弁や記者会見など、日常的にメディア露出の機会は保たれる。農水相として備蓄米放出などで注目されたように、閣僚として一定の評価を得られる可能性もあるだろう。

ただ、国会や会見で再び「進次郎構文」とも揶揄される、要領をえない応答をしてしまうと、議員や有権者から見放される可能性もある。また、大臣としての公務が平日・土日関係なく入るため、地方回りをしにくいというデメリットもある。

石破茂首相や高市氏は、無役のときに地方での講演会や選挙応援をこなし、総裁選での党員票獲得につなげてきた。今回党員票が伸びなかった進次郎氏としては、自由に地方に行けないことのデメリットは決して小さくなさそうだ。

さらに、閣内に入ると「高市おろし」に加担しにくい、という事情もある。高市氏は7月の参院選期間中、「私なりに腹をくくった。

もう1回、党の背骨を入れ直す」と、事実上の総裁選出馬宣言ともとれる発言をし、フライング気味に「石破おろし」の流れを作ったが、これは高市氏が閣内にいなかったからこそできたこと。閣内にいる場合は、首相に楯突く形で自身が総裁選に向けて動きづらくなる。

初当選時から「自民党のプリンス」として注目を浴び続け、「いずれ総理になる」と目されてきた進次郎氏。3度目の総裁選挑戦で首相の座を射止めた父・純一郎氏のように「3度目の正直」を実現できるか、「2度あることは3度ある」で、これからも失速してしまうのか。

はたまた今回、小泉氏の支援に回った河野太郎氏のように、総裁選出馬すらかなわなくなってしまうのか。つかみかけた首相の座がするりとこぼれ落ちてしまった進次郎氏の正念場が続く。

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班