オミクロン派生型BA.5 従来型より感染力や病原性高い可能性
オミクロン派生型BA.5 従来型より感染力や病原性高い可能性(毎日新聞 2022/7/7 20:43 最終更新 7/7 21:14)
国内でも感染が広がっている新型コロナウイルスのオミクロン株の派生型「BA.5」について、東京大などの研究チームは「ヒトの細胞や動物を使った実験では、現在主流になっている『BA.2』より肺で増えやすく、感染力だけでなく病原性も高い可能性がある」という見方を示している。
研究チームが5月に発表した審査(査読)前の論文などによると、ヒトの肺の内部にある「肺胞」の上皮細胞を使った実験では「BA.5」は「BA.2」の18.3倍に増えていたことを確認したという。
ハムスターに感染させた実験では、感染から3日後に肺の奥にある「肺末梢」で「BA.5」由来のRNA(リボ核酸)の量が「BA.2」の5.7倍に上昇していた。
「BA.5」に感染させたハムスターは、「BA.2」に感染させたものと比べて、体重が著しく減少。肺胞のダメージや気管支炎が「BA.2」より多く確認された。
オミクロン株の特徴
「BA.2」はヒトでは気道で増殖し、肺には達しにくいことから、重症化することは少ないとみられている。しかし、今回の実験から「BA.5」は肺でも増えやすい可能性が示された。
一方、世界保健機関(WHO)は6月22日付の週報で「『BA.5』の重症化のしやすさが変化している、という情報はない」と発表している。
研究チームの佐藤佳(けい)・東大医科学研究所教授(システムウイルス学)は「免疫がないハムスターで実験をしているので、ワクチンを打つなどして免疫を得ているヒトで、今回の実験と同じことが起きるかは分からない」という。
ただ、「BA.5」は「BA.2」から性質が変わっていることもあり「免疫がない人は重症化する可能性がある。オミクロンは重症化しないからと気が緩んでいるところがあるが、改めて感染対策を見直す必要がある」と話した。
新型コロナ第7波入りか BA.5割合5割超 熱中症と見極め難しく
新型コロナ第7波入りか BA.5割合5割超 熱中症と見極め難しく(毎日新聞 2022/7/7 19:36 最終更新 7/7 20:54)
新型コロナウイルスの新規感染者は7日、全国で4万7977人確認された。感染拡大について、東京都の小池百合子知事は7日、報道陣の取材に「感染は急速に拡大している。『第7波』に入ったとも考えられる」と述べた。急増の背景には、水際などの対策緩和に加えて、感染力が強いとされるオミクロン株の派生型「BA.5」への置き換わりがあるとみられる。
世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は6日の記者会見で、世界の新規感染者数は、過去2週間で30%近く増加したと述べた。WHOの報告によると、世界全体の新規感染者に占めるBA.5の割合は増加が続き、6月25日までの1週間では50%を超えた。国立感染症研究所が30日に示した試算では、日本でも7月第2週時点でBA.5の割合は5割を超え、置き換わりが進むとみられる。
BA.5の増える速度は、英健康安全保障庁の報告によると、日本国内で現在主流のBA.2と比べて1.35倍ほど速いという。またWHOの報告によると、第6波当初に流行したBA.1と比べ、ワクチン接種を受けた人でも感染を防ぎづらい特徴がある。一方、重症化率に違いは見られないという。
感染症に詳しい東京医大の濱田篤郎特任教授は「BA.5が感染者増加の要因だろう。重症化リスクは変わらなくても、感染者数が増えれば重症者が増える可能性は十分にある」と警戒を呼びかける。ただ、BA.5の感染力が格段に強いわけではないことから「感染の波は今年初めより大きくならないのではないか」とみる。
国際医療福祉大の松本哲哉教授(感染症学)は「ワクチン接種は進んだが、人の動きが活発化し、暑さによる冷房使用で換気の機会も減っている。第6波と比べ、重症者は少なくて済むだろうが、感染者は同じぐらい増えていく可能性がある」と話す。
厚生労働省の幹部も7日、「当面、感染者数が減るとは考えにくい」と指摘。重症化を防ぐため高齢者の4回目接種を高齢者施設などで加速させる考えを示した。また同省は全国の自治体に対して医療提供体制を点検・強化するよう5日付で通知した。病床確保を進め、発熱外来の拡充やオンライン診療などで自宅療養者に対応できるよう、地域の医療機関との連携を確認するよう求めている。
夏を迎え、熱中症との見分けが難しいことも考えられる。濱田特任教授は「熱中症では発熱があっても、せきや喉の痛みは出ない。医療機関を受診するほか、薬局で購入できる簡易検査キットを用い、コロナかどうか調べることも検討してほしい」と呼びかけた。