「20年上がらない日本の給料」より衝撃の事実、“手取り”はガタ落ちしていた

手取り年収は下がり続けていた 政治・経済

「20年上がらない日本の給料」より衝撃の事実、“手取り”はガタ落ちしていた(DIAMOND online 2022.7.7 4:10)

外国では賃金が上がっているのに、日本はこの20年間、賃金が上がっていない――。そんなグラフをニュースで目にした人は多いだろう。何とも悲しくなる話だが、それよりも衝撃的な事実がある。実は、日本のサラリーマンの収入は「手取りベース」で見ると、横ばいどころかガタ落ちしているのだ。手取り年収を試算したグラフを見てほしい。(ファイナンシャルプランナー〈CFP〉、生活設計塾クルー取締役 深田晶恵)

日本の平均賃金は20年以上伸びていない!

7月10日の参議院選挙に向けて、各党が公約を打ち出している。中でも私が注目しているのは、長期間低迷し続ける賃金への対策だ。資源価格の高騰や円安により値上げラッシュが続く中、賃金引き上げのための経済対策は欠かせない。

下のグラフを目にしたことがある人は多いだろう。これは、世界主要7カ国(G7)と韓国の平均賃金(年収)の過去20年間の推移を表したものだ(出所:OECD〈経済協力開発機構〉、ダイヤモンド・オンライン『日本人は韓国人より給料が38万円も安い!低賃金から抜け出せない残念な理由』より引用)。

G7と韓国の2000年以降の平均賃金の推移

このグラフは、ニュースなどで「日本の賃金は20年以上横ばいである」と解説付きで紹介される。米国やカナダ、ドイツ、韓国は、右肩上がりに賃金が上昇している中、日本は20年以上「昇給ゼロ」とは、悲しい。

それどころか実は、日本のサラリーマンの収入は「手取りベース」で見ると、横ばいどころか下がり続けているというさらに厳しい現実があるのだ。筆者が2002年から毎年続けている「手取り年収試算」のグラフを見ていただきたい。

額面年収700万円の手取り年収は、20年間で50万円も減っている!

会社員や公務員などの給与所得者の手取り年収とは、額面給与収入から所得税・住民税、社会保険料を差し引いたものだ。自分が自由に使えるお金のことで、「可処分所得」ともいう。

実は、「手取り年収」は何かの書類に記載されているわけではなく、自分で計算しないと知ることができない。そこで、02年から年初に年収・家族構成別に72パターンの手取り年収の試算をし、当コラムの読者にお知らせすることにしている。私にとっての年中行事なのだ。

下図は、額面年収700万円の人の02年から22年までの手取り年収推移である。

額面年収700万円の手取り推移

グラフで見ると、手取り年収が減り続けているのが一目瞭然。手取りを減らす要因は、税・社会保険料の負担増である。

額面年収700万円の例だと、手取り年収は20年前に比べると、なんと約50万円も減っているのだ。グラフはないが、額面年収500万円のケースでは約35万円の減少だ。

前述のOECDの「平均賃金の推移」は、「購買力平価」をベースにし、額面での平均賃金を算出している。つまり、日本の給与所得者の額面収入は20年間「横ばい」で賃金が上がっていないから、手取りベースでは確実に「減少」しているのである。

何ということだ!賃金が上がっていない事実だけでも衝撃なのに、「使えるお金」が減り続けているとなると、働く意欲までが低下してしまいそうだ。

政治家には賃金上昇のための施策を期待したい。企業には社員の給与を上げることをお願いしたい。そして読者のみなさんには、衝撃のグラフを見ても腐らずに「個人でできること」に取り組んでいただきたい。

賃金アップが実現するにしても、施策が実行されるまでには時間がかかるだろう。今すぐ取れる手取り減少、値上げラッシュ対策をランダムに考えてみた。

世帯収入をアップさせるための策

◆共働きなら共働きをやめない、片働きなら今から共働きを始める、配偶者がパートタイマーなら「パート収入の壁」を越えて働くことを検討する

→2人で働くと確実に世帯収入をアップできる。40~50代のパート主婦は、パート収入を「自分のお小遣い」としているケースが多いので、それをやめて、しっかり世帯収入に反映させて貯蓄する原資としたい。

◆勤務先が副業OKなら、副業を始めてみる

→無理のない範囲で副業をするのも一手。勤務先のルールは綿密にリサーチする。

支出削減のための策

◆無駄な保険を見直して、保険料支出を削減する

→勧められるままに何となく契約した保険は、保障内容をよく理解できていないことが多い。「死亡保障」と「医療保障」を別々に確保し、まずは公的保障、次に勤務先の福利厚生を考慮する。それでも足りない部分に民間保険を付ける考え方で見直しに取り組む。

◆携帯電話等の通信費の見直しをする

→参考記事はこちら『スマホ代は月2万円以上の削減も可能!家計の携帯料金「早分かり見直し術」』

◆ふるさと納税の活用

→生活に欠かせない食材、例えばお米などの調達にふるさと納税の返礼品を活用する。わが家は、魚の干物の返礼品狙いでふるさと納税先を選ぶことが多い。食費の削減に役立っている。

◆マイカーを手放す

→車は金食い虫。駐車場代にガソリン代、自動車税だけで、少なくとも年間30万~40万円程度の出費が発生する。仕事や生活の事情が許せば思い切ってマイカーを手放し、カーシェアリングを利用するのも一つの手だ。

◆子どもの教育費を聖域化しない

→子どもの習い事、塾、進路は、夫婦で情報共有しつつ、かかる費用を試算してから決めること。配偶者任せにしていて、気が付いたら中学私立受験コースで話が進み、後戻りできないというケースも散見する。上の子どもが私立コースになると、多くの場合は下の子も…となるので、進路は家計と照らし合わせて慎重に決めたい。

以上、複数の対策を考えてみた。実行できそうなものが一つでも二つでもあったら、ぜひ取り入れてみてほしい。

深田晶恵
ファイナンシャルプランナー(CFP)、生活設計塾クルー取締役

ふかた・あきえ/ファイナンシャルプランナー(CFP)、生活設計塾クルー取締役。1967年北海道生まれ。外資系電器メーカー勤務を経て96年にFPに転身。現在は、特定の金融機関に属さない独立系FP会社である「生活設計塾クルー」のメンバーとして、個人向けコンサルティングを行うほか、メディアや講演活動を通じて「買い手寄り」のマネー情報を発信している。20年間で受けた相談は4000件以上。日本経済新聞、日経WOMAN、レタスクラブ等でマネーコラムを連載、ほかに「ダイヤモンド・オンライン」での『老後のお金クライシス!』の連載も好評。

主な著書に『30代で知っておきたいお金の習慣』『投資で失敗したくないと思ったらまず、読む本』『住宅ローンはこうして借りなさい』(いずれもダイヤモンド社)、『共働き夫婦のための「お金の教科書」』、『図解 老後のお金安心読本』、『知識ゼロの私でも!日本一わかりやすい お金の教科書』(いずれも講談社)、他多数。