ウッドショック長期化で価格逆転、進む国産木材への転換 福井では県産材支援の補助金も追い風(福井新聞 2022年6月11日 午前11時00分)
木材価格の高騰「ウッドショック」の長期化による影響で、福井県内の木造住宅建築などで、外国産材から県産材へ置き換えが進んでいる。ウッドショック以前は柱材などの製品価格は県産材の方が高かったが、2022年3月時点で外国産材が前年同月の2倍以上となり、価格が逆転。県産材製品の21年度の販売量は前年度比約2倍となり、利用促進に追い風が吹いている。
ウッドショックは、新型コロナウイルス下の米国内の住宅需要の高まりや中国の景気回復などによる世界的な木材需給逼迫が原因。外国産材が国内に入らず、21年3月ごろから価格高騰が続く。さらに、ウクライナ情勢に伴うロシア産の単板など一部木材の禁輸も、価格高騰の長期化に拍車をかけている。
県などによると、21年3月時点の外国産の柱材の製品価格は1立方メートル当たり約6万円だったのに対し、県産スギの柱材は約8万円だった。21年8~9月ごろには価格が逆転し、22年3月には外国産の同じ製品は約15万円、県産材は約10~11万円だった。
県産材の加工や卸売りなどを手がける「ふくい県産材協同組合」(福井市)では、県内の木材市場や材木店などに販売した県産スギの柱材や間柱などの製品が、21年度は過去最多の約1177立方メートルとなり、前年度比約1.7倍。同組合は「今までは外国産材の価格が安すぎた」との認識を示す一方、「生産能力が足りず、県産材の需要に追い付いていない」と課題も語る。
住宅会社や工務店向けに木材のプレカット加工・販売などを展開するクラシス(本社鯖江市)は、安価で高強度の外国産材が販売の中心だったが、ウッドショック以降は国産材や県産材の割合が高くなっている。21年度の県産材製品の販売量は前年度の2倍以上になっているといい、同社の営業担当者は「住宅価格も上がっている。家を建てる工務店や住宅会社が受注しやすいよう、県産材を使ってコストを抑えたり、補助金の活用を提案するなどしている」と話す。
県産材の活用が進んでいる背景には、相対的に割安感が出始めたことに加え、県の補助金事業の役割が大きい。県は、県内木材プレカット事業者向けに、外国産材から県産材への転換支援の補助を昨年9月から予算化している。県産材は外国産材に比べて強度が劣るため、各工務店などが住宅の仕様に合わせて設計変更するのに必要な経費を補助している。このほか、県産材を木材全体の50%以上使用する民間施設の工事にも最大500万円助成している。
県県産材活用課の担当者は「県内には利用期を迎えている木が多く、県産材活用に追い風が吹いている。県産材を使うことは、山の適切な管理や地産地消の観点から脱炭素化にもつながり、循環型社会にも貢献できる」と話している。