世界23カ国に感染拡大「サル痘」の発生源めぐり…ロシアvs欧米で“場外乱闘”の泥仕合

「サル痘」の感染、ヨーロッパにつづき「米国でも発生」 国際

【元記事】世界23カ国に感染拡大「サル痘」の発生源めぐり…ロシアvs欧米で“場外乱闘”の泥仕合(日刊ゲンダイ 公開日:2022/05/31 15:10 更新日:2022/05/31 15:10)

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欧米を中心に異例の感染拡大を見せているサル痘。WHOによると、今月(5月)、サル痘の感染者257人がアフリカ諸国以外の世界23カ国で確認された。死者は出ていないものの、その発生源を巡ってロシアと西側諸国が“場外乱闘”を繰り広げている。

折しも、ウクライナ戦争でロシアと西側諸国の対立が日増しに悪化しているタイミング。サル痘に関しても原因不明の感染拡大を巡り、互いに牽制し合っている。

ロシアのキリロフ放射線化学生物学防護隊長は5月27日、ロシア国内の会見で「サル痘はナイジェリアから持ち込まれた」と指摘。「ナイジェリアでは少なくとも4つの生物研究施設が米国によって管理されている」と強調し、WHO指導部に対して「ナイジェリアの研究施設を調査し、その結果を国際社会に公表して欲しい」と呼び掛けた。サル痘の感染拡大の要因を米国になすり付けようという魂胆だ。

ソ連時代には生物兵器への転用を模索

「ロシアは軍事侵攻後、ウクライナの生物兵器開発に米国のバイデン大統領の息子ハンター氏が関わっているとの情報も流していました。敵対する相手をおとしめる謀略情報を発信するのは、ロシアの常套手段。今回も根拠の乏しい作り話である可能性が高いと思います」(国際ジャーナリスト・春名幹男氏)

一方、欧米ではネット上やメディアを中心に、ロシア側にサル痘拡大の責任を問う声が広がっている。その根拠として注目を集めているのが、旧ソ連で生物兵器開発に携わっていた微生物学者ケン・アリベック氏の証言だ。

アリベック氏はソ連崩壊後の1992年に米国へ亡命。98年6月、「生物兵器不拡散プロジェクト(CBWNP)」の聞き取りに対し、ロシアがソ連時代に天然痘を使った生物化学兵器開発を進めていたなどと明かした。

証言によれば、ソ連国防省は天然痘の外部流出のリスクなどを鑑み、「天然痘を使った研究はできないと判断し、ヒトに感染するが天然痘よりも感染力の低いサル痘を使うことに決めた。天然痘ではなく、サル痘を使って生物兵器を開発しようと考えたのだ」という。

もちろん、旧ソ連時代の研究が現在のサル痘の感染拡大に関係あるかどうかは不明だが、米国が関与しているとされる研究施設をヤリ玉に挙げたロシア側の主張も根拠薄弱だ。泥仕合の様相を呈している。

新型コロナの感染拡大を巡っても、米中が舌戦を交わしていた。実に不毛な戦いだ。