政府は1月7日夕刻、東京、神奈川、埼玉、千葉を対象に緊急事態宣言を発出した。専門家からは、「遅きに失した」とか「効果に疑問」の声が上がっている。
新型コロナウイルス感染症に関する菅内閣総理大臣記者会見(全文)
緊急事態宣言の記者会見をテレビで見たが、総理は「他人が書いた」原稿をただ読み上げているという印象で、コロナ感染を何としても防止するという強い覚悟を感じることが出来なかった。
緊急事態宣言の発出は遅きに失した
新型コロナウイルス対策の特別措置法に基づく緊急事態宣言は、東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県の首都圏1都3県を対象に発出された。期間は1月8日から2月7日までの1か月間である。
緊急事態宣言の骨子は次の4点。
1.飲食店の20時までの時間短縮、酒類の提供は19時まで
2.テレワークによる出勤者数7割減
3.20時以降不要不急の外出の自粛
4.スポーツ観戦、コンサートなどは、入場者数を上限5000人、収容率50%以下に制限
今回、小・中学校、高校、幼稚園、保育園については休校、休園を要請しないが、大学は対面授業とオンライン授業を効果的に組み合わせて頂く。
医療関係者は昨年秋以降のコロナ感染が全国で急拡大する事態に対して、政府に、至急、緊急事態宣言を発出するよう求めた。野党も国会で、GoToトラベル・イートの中止と緊急事態宣言の発出を要求したが、政府はGoToキャンペーンと感染拡大を関係づける「エビデンスがない」と強く何度も主張し、一顧だにしなかった。
政府の判断に大きな影響を与えたのは、12月にマスコミ各社が実施した世論調査において、内閣支持率がいずれの社も支持が10数%下落し、中には支持と不支持が逆転したことである。さらにダメ押ししたのが、12月31日の東京都の新規感染者数が初めて1000人を超え1337人を更新したことである。
熱があっても全員がすぐにPCR検査を受けることが出来ない。検査して陽性と判明しても収容できる病院がないため、多くの感染者が仕方なく自宅療養をしている。中には、急変してお亡くなりになった方がおられる。
必要な時に適切な医療を受けることが出来ない、これはすでに医療崩壊である。無念にもお亡くなりになった方、悔しい家族。その思いを菅総理は理解できないのだろうか。
緊急事態宣言の発出は遅きに失した。
緊急事態宣言の内容は中途半端、効果に疑問の声
感染症対策は、事前には最悪の事態を想定して準備し、発生した場合は、事態が小規模の早期の段階で、スピード感をもって、強めの措置を実施し、短時間での収束を図ることである。
感染が小規模でクラスターを追える段階はすでに過ぎた。今や感染者数は多く、しかも感染経路不明が6割を超えている。
火事でもボヤの段階ならすぐに消化でき被害も小さい。しかし、広範囲の大火災になると消火作業は大変だし、鎮火できても被害は大きい。病気も火災も、早期発見、早期治療(鎮火)である。
この度の緊急事態宣言は、
1.発出が遅い。
他にも問題が多く、専門家からは疑問の声が出ている。
2.対象の業種を飲食業やイベントだけでは効果が薄い。
3.感染者数は全国各地で、日々、記録を更新している。首都圏だけでなく他の地域も検討すべき。
4.1か月では収束しない。
5.緊急事態宣言の解除基準をステージ3に下がった時ではなく、ステージ2以下にすべき。ステージ3ではすぐに再拡大に向かう。
感染源対策は放置したまま、感染経路対策は国民任せ・事業者任せ
感染症はどのようにして広がるか。先ず「感染源」が存在し、そこからウイルスや細菌が伝搬し、先方に伝染する。従って、感染症拡大を防止するためには、各段階における対策が必要となる。これは「感染症予防の三原則」と呼ばれている。
第一は、『感染源対策』である。
新型コロナウイルスは、人から人へ、飛沫、空気、接触によって感染し、人から動物、或いは動物から人への感染はほとんどないとされている。
従って、新型コロナウイルスに感染した感染者を発見し、保護(隔離)し、他人との接触機会をなくすことである。
厄介なのは、新型コロナは感染しても症状が表れず、本人も自覚がないまま、日常生活を過ごす人が多く存在することである。東京都では無症状感染者で健康な人が、人口の1%~2%、市中にいると推計される。
【参考】【グラフで解析】 新型コロナの感染状況…新規感染者は全国4000人超、東京1000人超、今後も増加する
(見出し)「クラスター対策」から「無症状対策」へシフトすべき。ところが政府は否定的。
政府は現在、症状があった人及びその濃厚接触者を対象にしてPCR検査を実施しているが、それが有効な時期は感染者が少なかった時である。本格的に感染源対策を行うには、毎日明らかになる新規感染者数の100倍~200倍も存在する無症状者対策に力を入れるべきである。
無症状対策は政府はこれまで一度も実施して来なかったし、現在も否定的だ。無症状者を放置したまま、感染拡大防止に成功した国は世界にない。
感染源対策のもう一つは、新型コロナウイルスはモノに付着してしばらくの間、そこに止まるので、付着したと思われる汚染個所を消毒することである。
第二は、『感染経路の対策』である。
新型コロナウイルスは、飛沫、空気、接触によって感染が拡大するので、マスクの着用、手洗い、3密回避などによって、ウイルスが体内に入る経路を断つことである。
第三は、『感染を受ける可能性のある人への対策』である。
ウイルスが体内に侵入しても、すべての人が感染する訳ではない。すでに抗体を保有している人や自然免疫の強い人は罹りにくい。
最も有効な手段がワクチンの接種である。また、日ごろから免疫力を高めていることが望ましい。逆に、抵抗力の弱い高齢者や基礎疾患のある人は注意が必要だ。
以上の「感染症予防の三原則」の中で、政府にしかできないことと個人や事業者がすべきことがある。
マスクの着用、手洗い、3密回避、消毒などは個人や事業者が行うことであり、ほとんどの日本人は十分すぎるぐらい実行して来た。
政府が取り組むべきことは、PCR検査などの徹底で市中に存在する無症状感染者の早期発見・早期保護・早期治療、もう一つはワクチンの開発と接種である。
ワクチンの接種は2月後半ごろから始まるとのことだ。
しかし、無症状感染者対策は、政府はまったく実施して来なかった。政府の代わりに民間が始めたが、せめてそのデータを活用すべきだと考えるが、政府は参考する気配はない。
この度の緊急事態宣言において、政府は、国民に対してマスクの着用や3蜜回避、不要の外出の自粛、事業者には営業時間の短縮を要請し、さらには違反する事業者に対しては罰則を課そうとしている。政府が取り組むべき無症状者対策は手つかずのままだ。
政府は、市中感染を放置したままGoToキャンペーンを実施、しかも前倒しして実施したのだから、ウイルスは全国各地に拡散し、感染拡大が暴走した。今日の感染拡大は、「政府の無策」と「感染が収束しない状態でのGoToキャンペーン実施」がもたらした必然の結果である。
感染拡大防止対策と経済対策の両方が必要だ。しかし、感染が収束しない段階での経済対策は感染拡大を暴走させ、結果的には経済も命も犠牲を大きくする。
【参考】「発出」と「発令」について
「発出」は主にビジネスシーンで使用され、特に役所などの行政機関から文書・談話などを外に向かって出す際に使用されることが多い。
似た表現としては「発令」が挙げられる。発令は法令や辞令、指示などの一定の規則や法律に基づき発される指令を意味する。一方、発出は物事や状態が外に現れることを意味し、意味する範囲が広い点が発令との違いである。また発令では命令としての意味を含み、発出ではそうした意味は含まない。
出典 Weblio 辞書
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