9.11同時多発テロから20年 アフガン、泥沼の歴史

9・11同時多発テロ 国際

日本人24人を含む2977人が死亡した2001年9月11日の米同時多発テロから、11日で20年を迎えた。旅客機2機が突入したニューヨークの世界貿易センター(WTC)ビル跡地「グラウンド・ゼロ」など各地で追悼式典が開かれ、バイデン大統領らが犠牲者への祈りをささげた。

20年の歴史を振り返る。

9.11から20年 アフガン、泥沼の歴史(日本経済新聞 2021年09月08日 公開)より抜粋

2001年9月11日 狙われたアメリカの象徴

【2001年9月11日】

直前までいつもと変わらぬ朝を迎えていた、米国経済の中心地ニューヨーク。午前8時45分。マンハッタン島にそびえ立つツインタワー、世界貿易センタービルの北タワー側面に旅客機が突っ込んだ。ビルからもうもうと上がる黒煙が空を曇らせ、緊急車両のサイレンがマンハッタン中にこだました。

20分もたたない9時3分、今度は南タワーに2機目が衝突した。粉じんにまみれるニューヨーカーや、テレビ画面越しに見ていた人々は皆認識した。事故などではない。米国の象徴が、そして米国そのものが攻撃されているのだと。

ツインタワーは周辺の建物を巻き込みながら崩れ落ちた。約300キロメートル南西にある米国防総省(ペンタゴン)にも旅客機1機が衝突し、ハイジャックされた別の1機はペンシルベニア州で墜落した。一連のテロで約3000人が犠牲となった。

有志軍、アフガンへ電光石火

【2001年9月12日~同年末】

国連安全保障理事会は翌日の2001年9月12日、テロについて「国際平和と安全に対する挑戦」とし、「最も強く非難する」との決議を全会一致で採択した。当時のブッシュ米政権がテロへの徹底抗戦を宣言し、主要国に結束を呼び掛ける外交攻勢に動き始めた。国際社会は一気に「対テロ戦争」へ突き進んだ。

米軍は同年10月、国際テロ組織を壊滅するためアフガニスタンでの軍事行動を開始。首都カブールなどで空爆を断行し、英国軍も参加した。11月にはカブールを制圧、国土の大半を支配してきたタリバンの支配地域は一気に縮小した。12月にはアフガン暫定行政機構が発足した。

アルカイダ、各地でテロ攻撃 ビンラディン容疑者を追え

【2003~2005年ごろ】

米国のブッシュ大統領は2003年5月、国際テロ組織アルカイダについて「ゆっくりとだが確実に衰退している」「連中はもはや問題ではない」と述べた。01年9月11日の米同時テロ以降、アルカイダをアフガニスタンから追い出し、多数の幹部を逮捕してきたことへの自信の表れでもあった。

ただ、ブッシュ氏の発言後、アルカイダによるものと見られる大型テロがサウジアラビア、モロッコで相次いで発生。04年3月にスペイン・マドリードで列車爆破テロ、05年7月には英ロンドン中心部の地下鉄・バスで同時爆破テロが起きた。

米同時テロの首謀者とされるウサマ・ビンラディン容疑者の行方を世界中が追う中で、同容疑者の率いるテロ組織アルカイダは国境を越えて活動を広げていった。

混迷深めるアフガン、南部でタリバン蜂起

【2004年~ 】

米国が後ろ盾である移行政権のもと、憲法を制定し、新たな国造りが進むアフガニスタン。初めての大統領選では移行政権のカルザイ大統領が当選。初の総選挙なども実施された。

ただ、政情不安は続く。タリバンなどの武装勢力がアフガニスタン南部で蜂起し、徐々に勢力を広げる。治安は悪化し、テロは頻発した。

ビンラディン容疑者殺害、ISの台頭

【2009年~ 】

2009年に就任したオバマ米大統領は「テロとの戦い」を掲げてアフガンに米軍を増派した。並行して多用したのが無人機(ドローン)による爆撃だ。

米外交評議会によると、オバマ政権が承認した無人機攻撃は542件。ブッシュ政権の約10倍で、300人以上の民間人が巻き添えになった。

11年5月にはパキスタンの首都イスラマバード郊外に潜伏していたアルカイダ指導者のウサマ・ビンラディン容疑者を米軍が急襲し、殺害した。

力の行使は禍根を残した。11年末に米軍がイラクから撤退しイラク戦争が終わりを迎えると、「力の空白」を突いて過激派組織「イスラム国」(IS)がイラク北部モスルを制圧した。カリフ(預言者ムハンマドの後継者)を頂点とする「国家樹立」を宣言した。

ISは異教徒への「ジハード(聖戦)」を呼びかけ、「グローバル・ジハード」の波が世界へ広がった。

トランプ米政権「米国第一」、中東への関与薄める

【2017年~ 】

「地球上から完全に根絶する」。トランプ米大統領は2017年1月の就任演説でこう強調し、イスラム過激派との対決姿勢を打ち出した。同月末には過激派組織「イスラム国」(IS)掃討に向けた大統領令に署名した。

いったんは米軍のアフガン増派も決めたが、米国第一主義を公約としてきたトランプ氏は次第に中東への米軍の関与を薄める方向へと動いていった。

動き出す和平交渉、存在感増すタリバン

【2018年~ 】

米国はテロ掃討と同時並行でアフガニスタン和平に向けた国際交渉を進めた。タリバン掃討を目指したアフガン戦略は失敗、軍事的勝利を諦めタリバンの存続を前提とする現実路線にかじを切った。

米国は当事者のアフガニスタン政府とタリバンに加え、ロシアやパキスタン、中東諸国を巻き込み、新たな秩序の確立に動き出す。

2020年2月、米国とタリバンはアフガンからの米軍完全撤収とタリバン関係者への米制裁解除を検討するとした和平合意に署名した。同年9月にはアフガン政府とタリバンが初の直接交渉にこぎつけた。タリバンは国際的な存在感を高めると同時にアフガン国内で攻勢を強めていく。

米、アフガン撤収、「長すぎる戦争」に幕

【2021年】

2021年1月に就任したバイデン米大統領はトランプ前政権がタリバンと合意した5月の撤収期限を延期する一方、撤収作業を加速させた。その間、タリバンはアフガン全土で攻勢を強め、着々と支配地域を広げていった。

米国民の多くが01年の米同時テロへの報復戦争を始めたことに関し、ある程度は理解を示しつつも戦争が長すぎたと認識している。バイデン氏は米軍撤収後も軍事や経済分野での支援を継続する方針を強調するが、狙いは米本土の脅威となるテロの芽を摘み取ることにある。

米国が20年間にわたってテロとの戦いを続けるなかで、中国やロシアは急速に軍事力を伸ばした。冷戦以来の大国間競争に突入し、バイデン政権はテロとの戦いに区切りをつけざるをえなくなった。

アフガンではタリバンのほか、過激派組織「イスラム国」(IS)や国際テロ組織アルカイダが活動し、米軍撤収を機に反転攻勢をうかがう。

カブール陥落、タリバンが勝利宣言

【2021年8月】

イスラム主義組織タリバンはバイデン政権が2021年4月末に駐留米軍の撤退を始めてから攻勢を強めた。

8月にはアフガニスタンの首都カブールが陥落、ガニ大統領はアラブ首長国連邦(UAE)に退避した。01年の米同時テロをきっかけに旧タリバン政権が崩壊してから約20年、アフガン政権は瓦解した。

01年のアフガン軍事作戦開始以降の米兵の死者は2461人。戦費は2兆2610億ドル(約250兆円)との試算もある。大きな負の遺産を残し、テロとの戦いは振り出しに戻った。