重要土地等調査規制法は、総論として安全保障の機能を高めるが、政府の恣意的な判断で国民のプライバシーや財産権を侵害する

重要土地等調査法案 政治・経済・社会

自衛隊基地や原子力発電所の周辺、国境離島などの土地の利用を規制する法(土地規制法)が6月16日未明の参院本会議で、自民、公明、日本維新の会、国民民主各党の賛成多数で可決し、成立した。

同法は、重要施設の周囲1キロや国境離島を「注視区域」に指定し、土地や建物の所有者の氏名・住所、利用実態などを政府が調べることができる。特に重要な施設については周辺を「特別注視区域」とし、一定面積以上の土地や建物の売買には事前の届け出が必要となる。

重要施設や離島の「機能を阻害する行為」について、政府の中止命令に従わない場合は刑事罰を科す。

立憲民主、共産両党は「私権制限」につながるとして反対。参院内閣委員会の審議では「『安保上』と言いながら自国民が調査対象になりかねない」「どの地域が対象になり、どんな行為が罰則を受けるのか不明確」との批判が上がり、参考人からも対象区域で土地価格が下落する可能性が指摘され、与党推薦の参考人も「条文を読むだけでは様々な臆測が広がる恐れがあることを痛感した」と答弁するほどの内容だ。16日の国会閉会前の成立を急ぐ与党が押し切った。

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6月16日、参議院本会議が午前1時46分に再開され、「重要施設周辺及び国境離島等における土地等の利用状況の調査及び利用の規制等に関する法律案(内閣提出、衆議院送付)」が議題とされた。

まず、内閣委員会の森屋宏委員長が委員会での審査を報告し、続いて、各会派から賛否の討論が行われた。

反対討論 木戸口英司議員(立憲民主・社民)

立憲民主・社民の木戸口英司です。私は、会派を代表し、ただいま議題となりました重要施設周辺及び国境離島等における土地等の利用状況の調査及び利用の規制等に関する法律案に対し、反対の立場から討論いたします。

私は、防衛施設の保安を徹底するのは当然であり、外資による周辺の土地買収に安全保障上懸念があるとの認識に立っています。だからこそ、代表質問において、本法律案の十分な審議と政府による誠意ある答弁を求めました。それは、時間を重ねるだけにとどまらず、衆議院の審議で全く明らかとされなかった規制等の内容、私権制限の歯止め、安全保障上の実効性等について明確化していくことを求めたからです。

内閣委員会において、衆議院で開かれなかった外交防衛委員会との連合審査や参考人質疑も行いました。しかし、政府答弁は不安定さが一層増し、不明瞭で、欠陥法案であることが明瞭となってきました。

昨日の理事会で、衆議院内閣委員会と同様に、合意なく委員長職権で質疑終局、採決の提案がされたことは到底容認できません。

本法案が重要法案であるにもかかわらず、参議院で審議入りしたのは六月四日、会期末まで二週間を切った中でした。参議院は、審議を十分尽くすため、重要議案の参議院における審議時間は原則として最低二十日間を確保することを衆議院に求めてきました。それをほごにする法案の扱いに参議院軽視は極まり、加えて、参議院自ら熟議の府であることを放棄したと断じざるを得ません。

本法案は、とても質疑終局、採決の段に至っておらず、即時廃案、再検討の上、出し直しするべきです。

反対の理由は、まず、国民生活の基盤の維持並びに我が国の領海等の保全及び安全保障に寄与するという本法案の目的を達成する実効性に大きな疑問符が付くことです。

本法案では、重要施設の敷地の周囲おおむね千メートルの区域内及び国境離島等の区域内で、機能を阻害する行為を防止する必要があるものを注視区域として指定し、土地等の利用状況についての調査を行うこととなります。そもそも、重要施設の機能阻害行為は千メートルの区域内にとどまるのでしょうか。大きなリスクとなっているサイバーテロ等は、その区域の土地利用調査で防止できるのでしょうか。

自衛隊や米軍、海上保安庁の施設、原発や軍民共用空港等の生活関連施設という、施設目的も伴うリスクも異なる施設と区域を一つの法案で調査、規制することが本法案の整合性と実効性を著しく低下させていると言えます。

本法案が成立すれば、全国各地の土地等の所有、利用に係る情報を収集することとなり、膨大な人員、体制、予算と時間を要することとなります。安全保障上の実効性を確保するという観点で一度立ち止まり、法案を検討し直すべきではないでしょうか。

問題となるのは、注視区域及び特別注視区域の指定対象となり得る重要施設並びに国境離島等の範囲が明示的でないことです。

政府によれば、防衛関係施設の注視区域候補が四百数十か所、特別注視区域候補が百数十か所、海上保安庁の施設については百七十四か所中二か所、国境離島等では、領海基線を有する国境離島四百八十四島、有人国境離島地域離島百四十八島が指定の候補とされています。沖縄県内の有人離島については全てこの中に含まれると小此木大臣は答弁しています。

このように広範な区域指定の可能性があるにもかかわらず、対象となる重要施設の範囲は曖昧で、生活関連施設の範囲はどこまで広がるか分かりません。政府は、現時点で政令で指定することを考えているのは、原子力関係施設と自衛隊が共用する空港の二つの類型であるとしていますが、それを法案に書き込むことは拒みました。

この点、本法案の前提となった政府の有識者会議の構成員だった与党側の参考人ですら、生活関連施設の範囲について、この条文案を読むだけでは様々な臆測が広がるおそれがあるということを審議プロセスを見て痛感した、そこはしっかりとこれから議論をしていかなければ国民の様々な解釈を呼んでしまうと思ったとおっしゃったことは看過できません。

また、対象となり得る防衛関係施設のリストも、安全保障上の理由から提出されていません。しかし、区域指定の際には官報に公示されるのですから、結局隠しようがないのです。

市ケ谷にある防衛省本省の指揮中枢機能を有し、特別注視区域指定候補の最たるものですが、経済的社会的観点からの配慮として、周辺の市街地を特別注視区域に指定しないことを与党審査の段階で合意したと報じられています。港区などの都内、国内各地に所在する在日米軍施設をどこまで指定するかも今後の米側との協議次第です。こんな法律を認めてよいのでしょうか。

沖縄県は、県土そのものが有人国境離島である上に、多くの在日米軍基地を抱えています。大多数の沖縄県民が本法律案に基づく調査や規制の対象となり、本法律案の曖昧な定義や基準のために県民が知らぬ間に監視下に置かれてしまうこともあり得ます。

本法律案には、土地等の所有者や利用者の利用状況を調査するため、利用者その他の関係者に情報提供を求める規定があり、従わなければ処罰されます。基地等の監視活動や抗議活動をする知人や協力者の個人情報の提供を迫られることで、地域や市民が分断されることとなり、市民運動や住民運動の自己抑制、萎縮につながりかねません。

また、本法律案では、地方公共団体の長等に対し、注視区域内の土地等の利用者等に関する情報の提供を求めることができるとされ、その範囲は政令に委ねられています。政府は、注視区域内の土地等の利用者等の広範な個人情報を本人の知らないうちに取得することが可能となり、本法律案には個人情報の保護に十分配慮しつつとの規定はあるものの、プライバシー権等を侵害する懸念は残されています。

さらに、二年以下の懲役と二百万円以下の罰金という罰則規定のある命令の対象となり得る重要施設や国境離島の機能を阻害する行為の例が法案に示されていません。行政による恣意的な運用、処罰のおそれが排除できず、罪刑法定主義の点で大きな欠陥です。

政府は、機能阻害行為の例として、重要施設の機能に障害、支障を来す構造物の設置、国境離島等については、領海基線の根拠となる低潮線に影響を及ぼすおそれがあるその近傍の土地の形質変更等が該当し得ると答弁していますが、これも法案に書き込むことを拒みました。

政府は、予見可能性を確保する観点から、閣議決定される基本方針において可能な限り具体的に機能阻害行為を例示するとしています。内外情勢の変化に即応するためとして、法律はおろか、政令でさえなく、基本方針に例示するという対応は、政府は機動的と表現していますが、余りに白紙委任的な法案であり、とても賛成できません。

法案第六条は、内閣総理大臣は、注視区域内にある土地等の利用の状況についての調査を行うものとすると規定しています。調査対象者も手法も調査事項も限定されていません。

調査手法としては、公簿収集や報告徴収以外にも、政府は、重要施設を所管又は運営する関係省庁、事業者や地域住民から機能阻害行為に関する情報を提供してもらう仕組みを今後検討するとしています。これでは調査が無限定に広がりかねません。法の目的の範囲内で必要最小限度の措置を行うことが規定されているというだけでは、歯止めになる保証はないではありませんか。

第二十二条では、内閣総理大臣は、この法律の目的を達成するため必要があると認めるときは、関係行政機関の長及び関係地方公共団体の長その他の執行機関に対し、資料の提供、意見の開陳その他の協力を求めることができるとあります。全国の防衛関係施設・区域の調査に当たり、関係行政機関となるのは防衛省・自衛隊であり、自衛隊による住民に対する直接的調査への協力要請が行われることが想定されます。

政府の説明によると、土地等利用状況調査のうち、現地・現況調査は第二十二条に基づき、内閣総理大臣が防衛大臣に対し協力を求めることがあるとし、防衛省は補助的な事務を担うもので、補助的な事務の一部、例えば現地への地理的な案内、移動のための車両の提供等は自衛官が行うこともあり得るとしています。しかし、本法律案の目的達成のための自衛隊による住民への直接的な現地・現況調査がどの範囲まで許されるのか、その範囲が拡大していく懸念は捨て切れません。

国民が政治に求めているのは、主観的願望ではなく、科学的根拠と客観的事実に基づいた責任ある判断と明確な説明です。コロナ対策、オリパラの開催判断、そして本法案に共通する、この道しかないと突き進む政府の態度に国民は不信感と危険性を感じています。

リスクの適切な評価と対策を国民に示していくことが政治の責務であり……、その責務を果たせないとすれば政権を降りてもらうしかありません。

コロナ対策のためにも国会の延長を求め、立法府の矜持から、これだけの課題をそのままに法案を成立させることには絶対に反対であることを申し上げ、討論を終わります。

反対討論 山添拓議員(日本共産党)

日本共産党を代表し、土地利用規制法案に反対の討論を行います。

本法案は、憲法が保障するプライバシー権や財産権など基本的人権を脅かし、罪刑法定主義にも反するなど、重大な懸念を幾つも抱えています。

審議すればするほど問題点が浮き彫りになる中、与党は昨日夕刻以降、突如、採決ありきで議事を押し進めるに至りました。これ以上審議すれば政府が説明不能に陥るのを恐れるかのように強制終了しようとする姿勢は断じて許されません。説明できない法案は国会の責任で廃案にするべきです。

本法案は、土地や建物の利用状況調査を名目に幅広い市民監視を可能とするものであり、その歯止めがありません。調査や情報収集の対象は誰なのか、条文上の制限がないことを政府も認めました。あらゆる人が対象となり得ます。

職業や収入、交友関係やSNSでの発信など個人に関わる情報について、土地利用と関係なければ調査対象とならないといいます。しかし、関係があるかどうか判断するのは調査する側であり、条文上も限定はありません。

総理が必要と認める場合には、公安調査庁や自衛隊情報保全隊、内閣情報調査室などから情報提供を受けることも条文上排除されていません。小此木大臣や内閣府が想定していないと幾ら繰り返しても、条文に歯止めがない以上、何の担保もないのです。

二〇〇三年、自衛隊のイラク派兵に反対する市民の活動が情報保全隊により監視され、公にしていない個人情報まで収集されていました。日本共産党が二〇〇七年に公表した文書には、市民や市民団体の集会、署名活動、デモなどの情報が事細かに記録され、イラク派兵と関係しない労働組合や市民団体の活動も広く監視対象とされていました。

こうしたプライバシー情報の収集や保有は、仙台高裁で違法と断罪されたものまであります。ところが、防衛政務官は、個別具体的な内容は答えられないと言うだけで、同様の情報収集活動を続けている可能性も否定しませんでした。いかなる理由で監視対象と定めるのか、防衛省は手のうちを明かすことになるとして答弁を拒みました。まるで市民を敵視するかのようです。

岐阜県大垣市では、巨大な風力発電計画への住民運動を恐れ、警察が脱原発運動や平和運動をしていた市民の個人情報を収集し、電力会社と共有し、運動を潰す話合いまで行っていました。警察庁はこれを通常行っている警察業務だと開き直っています。

権力による市民監視と情報収集は、プライバシー権に余りに無頓着なまま行われ、デジタル化で一層の深刻化が懸念されます。この下で本法案は、総理の一存により更なる情報収集と一元的な管理を可能とするものであり、第三者によるチェックや歯止めの仕組みはありません。

与党推薦の吉原参考人が、この法案ができることで新たな不安が国民の間に呼び起こされては決していけない、どういう歯止めができるのか考えなければいけないと述べました。なぜこの指摘を一顧だにしないのですか。

政府は、役所や事業者、地域住民から情報提供を受ける窓口をつくるといい、密告まで推奨するつもりです。あらゆる手段が総動員されようとしています。

利用規制の対象となる注視区域、売買等の届出義務が罰則付きで課される特別注視区域、いずれも無限に広がり得ます。自衛隊や米軍の基地のほか、生活関連施設として原発や軍民共用空港を政令で指定するといいます。しかし、条文上の限定はなく、大臣はその理由を、内外情勢の変化に応じて重要性が変化し得るからと説明します。

では、現在の安全保障情勢をどう捉え、なぜ原発を対象とするのか、世界一安全とうたう新規制基準で対処できない機能阻害とは何なのか、説明はありません。

生活関連施設は、国民保護法施行令に定めるように発電所や水道施設、一日十万人以上が利用する駅、放送局や港湾、空港、河川管理施設など幅広く指定され得ます。政令で幾らでも拡大できるとしていることは、国会の関与をあえて排除しようとするものと言わざるを得ません。

沖縄では、戦後、米軍が銃剣とブルドーザーと呼ばれる強制的な土地収用を繰り返し、住民が追い出され、基地あるがゆえの被害が今日なお続いています。本法案は、その被害者である沖縄県民を監視の対象にしようとするものです。

連合審査会で沖縄県の伊波議員が指摘したように、普天間基地を擁する宜野湾市は、市民の九割、九万人が一キロ圏内に居住します。加えて、沖縄は、国境離島としてその全島が注視区域とされかねません。安全保障の名の下に、どこまで権利侵害を重ねるつもりなのですか。

勧告、命令、罰則の対象となる機能阻害とは何なのか、法律に定めはありません。予見可能性を確保するために閣議決定で具体的に例示すると言いますが、では、例示した以外は対象とならないのかといえば、必ずしも断言できないとの答弁です。罪となるべき行為は法律に明示されなければならない、罪刑法定主義の原則に反しています。

本院で法案審議が始まった今月四日、沖縄県の北部訓練場で抗議活動を行うチョウ類研究者の宮城秋乃さんが家宅捜索を受け、パソコンやビデオカメラなどを押収されました。米軍から返還された訓練場跡地には、薬きょうや空き缶など廃棄物が散乱し、県警に通報しても回収されない、一帯が世界自然遺産に登録されようとする中、これでよいのかと抗議するために廃棄物の一部をメーンゲート前に置いたことが威力業務妨害などに当たるとされたものです。

米軍が原状回復を怠ったことは不問に付し、またいで通れる程度の空き缶などを並べた宮城さんは強制捜査と連日の取調べ、余りにも恣意的です。半田参考人は、この事例を本法案の先取りだと指摘し、何が機能阻害行為に当たるかは認定する側のさじ加減一つだと批判しました。そのとおりではありませんか。

馬奈木参考人が戦前の要塞地帯法の条文を紹介しました。何人といえども、要塞地帯内水陸の形状を測量、撮影、模写、録収することを得ず。戦前の法律でさえ、規制対象は明確でした。しかし、濫用され、国民の自由は奪われ、破局に至るまで戦争に駆り立てられたのです。

今、日本国憲法の下で国民の権利を制限するのになぜ政府にフリーハンドを与えるのかと問われ、大臣が答弁に立とうともしなかったのは、本法案がいかに危ういものであるかを示しています。歴史の教訓を想起するべきであります。

大臣は、五年後の見直しで、機能阻害行為を理由にした強制接収、収用手続を含めた検討も否定しませんでした。戦後制定された土地収用法は、軍事や国防のための収用を認めていません。戦争の反省に立つものです。軍事的な安全保障のために再び国民の私権を制限しようとすることは憲法の平和主義に反すると言うべきです。

大臣は、本法案の立法事実を外国資本による不動産購入を契機とする不安、リスク、懸念と表現しました。しかし、これまで安全保障上の懸念が生じたケースは確認されていません。漠然とした不安を根拠もなく重視すれば、疑心暗鬼が広がります。馬奈木参考人が述べたように、特定の国を潜在的な脅威であるかのように扱うとすればヘイトにも近いと言うべきです。

安全保障上の懸念を持ち出せば何でも通ると言わんばかりに、基本的人権を脅かし、市民監視を強める法案を時間がない中、提出しておきながら、ごまかしの答弁を意図的に繰り返し、参考人質疑や野党の指摘も無視して採決を強行するなど、断じて許されません。

「#土地規制法案を廃案に」というツイートが今この時間も十三万七千を超えて増え続け、この審議もインターネットで注視されています。本法案は廃案しかないことを重ねて指摘し、討論といたします。

賛成討論 高木かおり議員(日本維新の会)

日本維新の会の高木かおりです。私は、会派を代表して、ただいま議題となりました重要施設周辺及び国境離島等における土地等の利用状況の調査及び利用の規制等に関する法律案について、賛成の立場で討論いたします。

討論に入る前に、一言申し述べます。国民の皆様には不要不急の外出をお願いしているコロナ禍において、このような多額の税金が掛かってしまう深夜国会になってしまったことは残念でなりません。果たして国民の皆様の理解が得られるのでしょうか、ますます政治不信につながってしまうのではないか、大変懸念をしております。

それでは、討論に入ります。

我が国の防衛施設周辺あるいは国境離島において、外国資本が土地を買収していることは十数年前から指摘されていました。本来ならば、国家の安全保障という観点から土地取得を規制する法律が既に施行されていてしかるべきであり、希薄な危機管理意識から放置されてきた感は否めません。

政府が重い腰を上げたのは平成二十五年十二月の国家安全保障戦略を踏まえて行われた防衛省の調査からです。平成二十九年度からは内閣府海洋事務局によって国境離島の調査が行われました。しかしながら、これらの調査は不動産登記簿の資料確認にとどまり、利用実態を把握するまでには至りませんでした。

その後、令和二年七月の骨太方針において、土地利用、管理の在り方について所要の措置を講ずることが閣議決定され、有識者会議も立ち上がり、今回の法案審議にやっとたどり着きました。

日本維新の会は、五回にわたって政府案より実効性が担保されていると確信するに足る適切かつ厳格な重要土地取引規制に関する法案を提出してまいりました。早くから高い問題意識を持って取り組み、訴え続けてきたことが今こうして国会での議論に結び付いたと自負しております。

以下、賛成する理由を述べます。

第一の理由は、安全保障に関わる防衛施設周辺や国境離島の土地等の取引について、規制を設けることが可能になったからです。

衆議院で閣議決定される前の与党協議の中で、法案内容が更に後退しかねないとの判断の下、日本維新の会は即座に小此木大臣に申入れを行うとともに、衆議院内閣委員会の理事会においても修正案を提示いたしました。

その結果、残念ながら修正には至らなかったものの、注視区域及び特別注視区域の指定に当たっては、地方公共団体の意見を聴取すること、また、重要施設等の機能を阻害する行為を中止させることが困難であることに鑑み、収用を含めた措置の在り方を検討すること、そして、指定対象に重要施設の敷地内の民有地を加えることの三点について、附帯決議に明記することがかないました。我が国の安全保障を考える上で、一歩前進と捉えております。

附帯決議の明記事項について、我が国を取り巻く安全保障の内外情勢が厳しさを増していく中で、その重要性を政府が認め、法律上にしっかりと位置付けられ、そして効果を十分に生み出していくものと確信しているところであります。

賛成する第二の理由は、本法案が成立することによって、我が国の領土の実態を把握することができるからです。

今までの不動産登記簿等の調査方法のみでは、土地の利用実態までを把握するには限界がありました。我が国領土の侵食をし続ける静かなる悪意ある者の土地取得を食い止めるには、政府も、可能な限り対象区域を指定し、スピード感を持って利用状況の調査を進め、機能阻害行為としての土地等の利用を適時適切に発動するように準備を整え、実態把握を行う必要があるとの答弁もあり、その認識に立っているものと理解できます。

本法案では、不動産登記簿等の収集に加え、現況調査、土地等の利用者からの報告聴取規定が盛り込まれました。しかし、与党からも委員会で指摘されていましたが、本法案には立入調査の規定がありません。機能を阻害しているか否かの判断に立入調査は必要不可欠です。本法案の附則第二条の五年後の見直しを待たずに、実態に合った調査方法として立入調査の再検討を政府に要求します。また、収用という強制力を伴った利用制限の検討も忘れてはなりません。

賛成する第三の理由は、我が国が多くの島を有する海洋国家としての安全保障の在り方を政府が本法案で示したことへの期待です。

参議院本会議での本法案の趣旨説明の冒頭で、安全保障に寄与することを目的として、防衛関係施設、海上保安庁施設周辺、そして国境離島及び周辺の有人離島の区域内にある土地の利用状況を調査し、機能阻害行為を防止するための措置を定めるものと小此木大臣は説明されました。重要施設周辺の土地取引のみならず、国境離島を本法案に盛り込んだことは、国境離島における有事を想定したものと理解します。

我が国は現在、保全、管理できる国境離島は四百八十四島あり、この中には尖閣諸島も含まれております。この尖閣諸島は無人島であり、国有、私有が混在していることについて、さきの参議院内閣委員会でも確認することができました。

排他的経済水域を含んだ場合、世界で六位の面積を有する海洋国家日本としては、これら島嶼部に対する侵攻に対処していかなくてはなりません。無人島である尖閣諸島へのドローンによる侵攻など、あらゆる事態を想定した国の防衛の在り方が問われていると考えます。

最後に、国際社会はコロナ禍にあって、まさに混沌とした状況が日増しに強くなってきている感は否めません。

中国は、我が国固有の領土である尖閣諸島に対する領海侵入を繰り返しています。ジェノサイドと非難されるような少数民族等に対する人権侵害は、明らかに国際社会のルールから逸脱しています。台湾への軍事的威圧等もしかりです。南シナ海の南沙諸島海域における人工島建設など一方的な現状変更、海洋進出への試みも、国際法上許されるものではありません。

他方、民主国家であるはずの韓国にしても、我が国固有の領土である竹島を不法に実効支配し続け、国際協調に反する態度を強めています。

日本維新の会は、我が国の安全保障に対し、今後も毅然たる態度と行動で臨むための提言を続けてまいりますことをお誓い申し上げ、私の賛成討論といたします。御清聴ありがとうございました。

賛成討論 矢田わか子議員(国民民主党・新緑風会)

国民民主党・新緑風会の矢田わか子です。私は、会派を代表し、重要施設周辺及び国境離島等における土地等の利用状況の調査及び利用の規制等に関する法律案に対し、賛成の立場から意見を述べます。

本法律案は、自衛隊施設などの防衛関係施設や原子力発電所などの生活関連施設を重要施設とし、あわせて、国境離島について、それぞれの機能が阻害されないよう、土地の利用状況の調査や土地取引の届出、さらには機能阻害行為の是正を勧告、命令できることを規定するものであります。

以下、賛成する理由を三点述べます。

まず第一に、社会の変化に応じた土地制度の改善に資するものとなっていることであります。

今日、少子高齢化や地方の過疎化が進む中で、各地で空き地や空き家が急増し、所有者不明の土地も増加しつつあり、今日の土地制度が社会の変化に対応できていない実情があります。今国会においては所有者不明土地の対策として民法と不動産登記法が改正され、相続登記や所有者の住所変更登記の義務化が図られるなど一定の前進が見られました。しかし一方で、国土保全のための対策は今後ともより強力に推進されなければなりません。

一方、近年、外国人や外国法人による土地購入が増加しており、近隣住民の不安を募らせているという土地制度における新たな課題も生じています。特に、防衛施設の周辺や国境離島において外国人による不透明な土地取引も行われ、安全保障上の懸念も示されています。

この問題については、二〇一一年、民主党政権時代に、民主党内に外国人による土地取得に関するPTが設置され、東日本大震災の直後に、森林、国境離島、防衛施設周辺、エネルギー施設周辺などについて、土地の所有情報収集の整備や、外国人の土地取得を規制する立法化の検討などが提言されました。この提言から十年が経過しましたが、ようやくその提言の理念の一部が法案化されたものと理解いたします。

我が国の土地制度と土地法制が時代の変化に対応できなくなり、特に土地所有情報の的確な把握と、森林など国土の保全、そして土地の有効活用と安全保障の確保という様々な観点から土地法制の整備は早期に行われる必要があり、本法案はこの法整備の一翼を担うものとして位置付けられていると考えます。

賛成する第二の理由は、我が国の安全保障の機能を高め、国益を守ることにつながるからです。

今日、安全保障をめぐって科学技術の進展とともに各国間の情報戦は一段と活発化しており、サイバーセキュリティー対策の推進とともに、最先端技術情報や防衛関係情報をいかに守っていくかが大きな課題となっています。これらの対策とともに、我が国の土地所有や土地利用の実態についても安全保障対策の対象とし、取引情報の一元化や情報管理をより徹底していく必要があります。

防衛については、軍備の面のみに目が向きますが、こういった外国人による土地取得への対応は国益をめぐるサイレントな攻防であり、今こそこれまでの対応の遅れを取り戻し、将来にわたり国土から得られるべき果実を確保していく必要があると考えます。

賛成する三つ目の理由は、我が国の経済発展と安全保障の両立に資するものとなっているからです。

海外からの対日投資の促進は、我が国経済の安定的成長に必要なものであり、今後とも外国人や外国資本の自由な経済活動を保障しながら、一方で、国益を損ね安全保障の確保に逆行するような行動に関しては厳しく規制していく必要があります。

土地はそもそも公共財であり、日本人、外国人にかかわらず、土地を所有する権利とともに、次世代につないでいくための土地活用と保全の義務を負っています。本法案が、外国為替及び外国貿易法や森林法などとの連携を図りながら、経済活動と安全保障の確保に資する機能を発揮することを強く求めます。

以上、賛成する理由を述べましたが、一方で、この法案については、内閣委員会での審議において二つの課題が明らかになりました。一つ目は法の立法事実と実効性確保の課題、二つ目は人権侵害への懸念という課題です。

特に、人権確保に関しては、法執行上の要となる注視区域の指定基準や機能阻害行為の類型が法案に明記されず、具体的には総理大臣が決定する基本方針や政省令に委ねられ、注視区域における調査対象や調査方法あるいは個人情報の扱いが不透明なまま残されています。

このことで、自衛隊施設の、周辺施設や住民や、県内の多くの地域が注視区域となる沖縄では、基地との関わりを持つ住民への監視体制が築かれ、人権とプライバシーの侵害が起こるのではないかとの不安が高まっています。

これらの懸念を払拭するために、国民民主党が衆議院に提出した修正案のように、政府は基本方針に基準等を明示すべきでありましたが、残念ながら、いまだ明確にはなっていません。

次善の策として、せめて政省令の制定過程を見える化し、土地等利用状況審議会の議事録を公開するとともに、随時国会報告を行うべきであり、これらのことを必ず実行していただくようお願いいたします。あわせて、土地利用調査に当たっては、対象となる住民の皆さんに丁寧な事前説明を行い、必要な協力を得られるよう責任を持って取り組んでいただきたいと思います。

本法案については、既に述べてきたように、多くの事項が政省令に委ねられ、法の実効性についても不透明であることの指摘がなされていますが、一方で、安全保障政策に一〇〇%はありません。だからこそ、現世代は未来の世代に何ができるのかを考え、まずはアンテナを高く立て、調査し、今までできていなかった国土の現況を正確に把握することも大切な一歩となります。

あらゆる方面から少しずつ法規制を求め、未来に生きる子供たちの世代に安心、安全な日本を残していけるよう、私たち立法府がたとえ僅かな一歩でも責任を果たしていかなければならないと思います。本法案に基づく政策の遂行に当たり、懸念に対する丁寧な説明など、政府の真摯で的確な対応を求め、私の賛成討論といたします。

付帯決議(参議院)

政府は、本法の施行に当たり、次の事項について適切な措置を講ずるべきである。

一 注視区域及び特別注視区域の指定に当たっては、あらかじめ当該区域に属する住民の実情に知悉する地方公共団体の意見を聴取する旨を基本方針において定めること。

二 基本方針の決定並びに注視区域及び特別注視区域の指定に当たっては、当該決定及びそれらの指定の後、速やかに国会に報告すること。

三 本法における「機能を阻害する行為」については、基本方針においてその類型を例示しつつ、明確かつ具体的に定めること。その際、本法の目的と無関係な行為を対象としないこと。

四 本法第二条に基づき「生活関連施設」を政令で定めるに当たっては、本法の目的を逸脱しないようにするとともに、その対象を限定的に列挙すること。

五 本法の規定による措置を実施するに当たっては、思想、信教、集会、結社、表現及び学問の自由並びに勤労者の団結し、及び団体行動をする権利その他日本国憲法の保障する国民の自由と権利を不当に制限することのないよう留意すること。

六 本法第四条第二項第二号の「経済的社会的観点から留意すべき事項」を具体的に明示すること。その際、本条における市街地の位置付けを明確にすること。

七 本法第四条第二項第三号の「注視区域内にある土地等の利用の状況等についての調査に関する基本的な事項」を定めるに当たっては、調査対象となる者、調査方法、調査項目等を具体的に明示すること。

八 本法第六条に基づく土地等利用状況調査を行うに当たっては、本法の目的外の情報収集は行わないこと。また、収集した個人情報について、目的外利用となる他の行政機関への提供は制限するとともに、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律に則った情報管理を徹底し、情報漏洩防止等のセキュリティ対策に万全を期すこと。

九 本法第八条に基づく報告又は資料の提出の求めについては、基本方針において運用の考え方を具体的に明示すること。また、同条の対象となる「利用者その他の関係者」についても、基本方針において具体的に例示すること。

十 本法第九条に基づく勧告及び命令については、基本方針において、その対象となり得る行為を例示するとともに、運用基準を具体的に明示すること。また、勧告及び命令の実施状況を毎年度、国会を含め、国民に公表すること。

十一 土地等利用状況審議会の委員及び専門委員の任命に当たっては、重要施設及び国境離島等が全国各地に所在していることに鑑み、多様な主体の参画を図ること。

十二 本法第二十一条第一項に基づく情報の提供については、その要件を基本方針において具体的に明示すること。その際、本法の目的の範囲を逸脱しないよう留意すること。

十三 本法第二十六条に基づく罰則の適用については、限定的なものとすること。また、本法第二十七条に基づく罰則の適用に当たっては、思想信条の自由、表現の自由、プライバシーの権利等を侵害することのないよう、十分配慮すること。

十四 本法第九条の勧告及び命令に従わない場合には、重要施設等の機能を阻害する行為を中止させることが困難であることに鑑み、本法の実効性を担保する観点から、収用を含め、更なる措置の在り方について、附則第二条の規定に基づき検討すること。

十五 我が国の安全保障の観点から、有人国境離島の過疎化を食い止めるための振興策を拡充するとともに、水源地や農地等、資源や国土の保全にとって重要な区域に関する調査及び規制の在り方について、本法や関係法令の執行状況、安全保障を巡る内外の情勢などを見極めた上で、附則第二条の規定に基づき検討すること。

十六 注視区域及び特別注視区域の対象に、重要施設の敷地内の民有地を加えることについて、附則第二条の規定に基づき検討すること。

十七 本法に係る規制対象等の予見可能性や運用の透明性を求める意見が多くあることから、附則第二条の規定における施行後五年の経過を待たずに施行状況を把握し、必要に応じ制度の見直しを検討すること。

右決議する。