政府は自らの責任を果たさないで、国民に自粛、事業者に時短・休業を押し付けるだけ

菅義偉首相_コロナ対策失敗 政治・経済

菅首相は、就任以降、感染収束に向けた決意をたびたび語ったが、悉く反故にした。GoToキャンペーンの強行で感染を拡大させ、オリンピック開催を意識して対策が手遅れとなり、その間に変異株が蔓延し第4波を勢いづかせた。

拡大防止の新たな対策して「5本柱」を掲げたが、変異株の監視体制強化、予兆をつかむためのPCR検査の拡充、迅速なワクチン接種、医療供給体制の強化など、政府がなすべきことはほとんど達成していない。

政府は自らの責任を果たさないで、国民に自粛、事業者に時短・休業を押し付けるだけ。第4波は菅首相による人災だ。

「爆発的な感染は絶対に防ぐ」 菅首相の表明は悉く果たされず

菅首相は就任以降、感染収束に向けた決意をたびたび語りながら、結果は裏目に出ている。

昨年10月の臨時国会では、所信表明演説で「爆発的な感染は絶対に防ぐ」と表明。結局は「第3波」が来て、年明け早々に2度目の宣言発令を決断した。

2度目の発令時には「1か月後に必ず事態を改善させる」と強調したが、全面解除は2か月半後になった。

政府の緊急事態宣言の発令や解除の判断には、東京五輪もリンクしている。3月21日で2度目の宣言を解除したのは、25日からの聖火リレー開始を意識していたとされる。

政府はコロナ対策の最後の一手となる宣言発令が五輪開催の機運に水を差すことを懸念。今月に入って、宣言に準じた対策が可能な「まん延防止等重点措置」を出し、感染拡大を抑えながらワクチン接種を進める戦略を描いてきた。

だが、感染拡大の傾向は続き、3度目の宣言発令の事態に。一方で、ワクチン接種は五輪の期間までには完了しそうにない。

感染拡大は、政府がやるべきことをやらなかった結果

政府は新型コロナウイルスの感染拡大が続く東京都、大阪府、兵庫県、京都府への3度目となる緊急事態宣言の発令を4月23日に決定した。

菅義偉首相は前回の宣言を3月に全面解除した際、感染拡大の予兆をつかむための戦略的な検査や、安全・迅速なワクチン接種など総合的な対策を打ち出したが、結果として実効性は上がらず、解除から1か月での宣言を余儀なくされた。

首相は、前回の全面解除を決定した3月18日の記者会見で「感染拡大を2度と起こしてはいけない」と強調し、新たな拡大防止策として「5本柱」を掲げた。

①飲食を通じた感染の防止策継続
②変異株への監視体制強化
③感染拡大の予兆をつかむための戦略的な検査
④安全・迅速なワクチン接種
⑤次の感染拡大に備えた医療提供体制の強化

検査や変異株の監視体制強化では、具体的な数値目標も示したが、達成できていない項目が目立つ。

「戦略的な検査」の中心は、人が集まる繁華街や鉄道駅などでの無症状者のモニタリング検査。PCR検査キットを無料で配り、回収する

方法で、首相は「4月には1日5000件の規模で行う」と表明していた。

実際に4月12~18日の週に配布したキットは東京、愛知など13都道府県で計1万6526個。一日平均では約2360個で、目標の半分にも満たない。回収して検査できたのは、さらに少ない一日平均約1450件。

野党が当初から「予兆をつかむ規模になっていない」と指摘したように、政府が予兆を把握できないまま大阪府や東京都で感染は急拡大した。

首相は、変異株の感染者の割合を調べるスクリーニング(抽出)検査を当時の10%から「40%程度に引き上げる」と表明した。4月5日~11日の速報値で、全国での実施率は約36%まで上がったが、感染力の強い変異株の抑え込みにはつながっていない。

5本柱のうち、ワクチン接種や医療提供体制の強化も進んだとは言い難い。

ワクチンは4月21日時点で、医療従事者らのうち2回目の接種を終えた割合は約17%。高齢者は1回目を打ち始めた段階で、接種率は対象者約3600万人の0.1%にすぎない。

医療提供体制は数値目標を示していないが、宣言解除に合わせて政府が決定した対策に「今回の課題を点検・改善し、次の感染拡大時に確実に機能する体制に進化させる」と明記した。

しかし、点検・改善の間もなく、変異株の猛威により感染は拡大。大阪府内では3月下旬以降、重症者が急激なペースで増え続け、確保病床を一気に上回った。重症病床は満床状態で、重症者の一部は軽症・中等症病床で治療を続ける事態に陥っている。遠からず東京が同じ状況になっても不思議ではない。

共産党の志位和夫委員長は22日の記者会見で、「宣言の発令に至ったのは、政府がやるべきことをやらなかった結果だ。現状は菅政権による人災で、その責任は極めて重い」と批判した。

【元記事】

菅首相、宣言出しても「五輪に影響ない」 たびたび示した感染収束への決意は裏目続きなのに…(東京新聞 2021年4月22日 06時00分)

三たびの緊急事態宣言「人災だ」…菅首相「感染拡大2度と起こさない」決意の宣言解除からわずか1カ月(東京新聞 2021年4月23日 06時00分)