石破茂首相、所信表明 あれもこれも「後退」? 5つの「守る」掲げたが就任前の主張はどこに…

石破首相の所信表明演説が行われた衆院本会議=10月4日午後 政治・経済

石破茂首相、あれもこれも「後退」? 5つの「守る」掲げたが就任前の主張はどこに… 衆院で所信表明【全文】(東京新聞 2024年10月4日 14時38分)

石破茂首相は4日午後、衆院本会議で所信表明演説に臨んだ。首相就任前に意欲を示していた政治改革では具体策を示さず、外交安保分野では持論の日米地位協定改定と「アジア版NATO」構想に触れなかった。

マイナンバーカード、選択的夫婦別姓の導入についても言及せず、女性参画でも具体的な数値目標や対策を明らかにしなかった。

総裁選で「原発ゼロ」に言及していた原発政策では、一転して原発の利活用を訴えた。日本、国民、地方、若者・女性の機会、ルールの「5つの『守る』」を政権の方針として打ち出す一方、少なくとも7つの分野で首相就任前の発言や姿勢から後退する形に。国民や野党からの「言行不一致」との批判がさらに強まりそうだ。(佐藤裕介)

①政治改革・裏金問題

石破首相は冒頭、自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件について「問題を指摘された議員一人一人と改めて向き合い、反省を求め、ルールを守る倫理観の確立に全力をあげる」と述べながらも、総裁選期間中に示唆していた「裏金議員」の非公認の可能性などについては具体論を避けた。「さらに透明性を高める努力を最大限していくことを固く約束する」とあいまいな説明に終始した。

②外交・安全保障

総裁選中は、米軍を巡る日米の不平等な関係が規定されている日米地位協定の改定にも踏み込んでいた首相。だが、所信表明では言及すらしなかった。

首相は総裁選中、日米地位協定の見直しに着手すると表明。基地の管理権や米兵の権利などを巡り、米側が有利で日本側が一方的に不利な状況に置かれている現状を踏まえ、「主権国家としての責任を果たさなければならない」と力強く訴えていた。

ロシアによるウクライナ侵攻を踏まえ、「なぜウクライナで抑止力が効かなかったのか、私は強い思いを持っている」としながらも、総裁選で掲げた「アジア版NATO」構想は取り上げず、持論を封印する形となった。

③選択的夫婦別姓

重要な懸案に関する言及や説明もなかった。

首相就任前に「やらない理由が分からない」と賛成の立場をアピールしていた選択的夫婦別姓には触れなかった。

④マイナ保険証への一本化時期の見直し

総裁選期間中は健康保険証の廃止とマイナ保険証に一本化する時期の見直しも掲げていたが、所信表明では取り上げなかった。

⑤女性参画

総裁選で訴えた女性参画についても、所信表明では「社会のあらゆる組織の意思決定に女性が参画することを官民の目標」とするとの表現にとどめ、具体的な目標数値などは示さなかった。

石破内閣の女性閣僚は20人中2人のみで、第2次岸田再改造内閣の5人から3人減となっている。

⑥衆院選の時期

既に表明している衆院解散(10月15日公示、27日投開票)に関する国民への説明もなかった。

首相は総裁選期間中、国会の予算委員会で野党との論戦を交わした上で解散する考えを示していたが、総裁に選出されると「豹変」。首相就任前の9月30日に突如として解散の日程を表明し、野党から「国会軽視だ」(立憲民主党の野田佳彦代表)などと批判を浴びていた。

⑦原発政策

首相は総裁選への出馬表明時、原発について「ゼロに近づけていく努力を最大限にする」と主張。その後、「原発ゼロが自己目的なのではない」「原発のウエイトが減っていくことが結果として起こり得る」などと軌道修正していた。

所信表明では「原子力発電の利活用」によって「日本経済をエネルギー制約から守り抜く」と踏み込んだ。

▶▶▶ 石破茂首相の所信表明演説全文