石破茂氏、日米安保条約改定を提起 米シンクタンクに寄稿 「核の持ち込み検討を」 アジア版NATO枠内で(日本経済新聞 2024/9/28 23:21 (2024/9/29 1:22更新)
自民党の石破茂総裁は、日米安全保障条約を改定し、日米同盟の「非対称性」を改めるべきだとの考えを示した。米英並みの対等な同盟関係に引き上げる狙いがある。自衛隊を米領グアムに駐留させ日米の抑止力を強めることを提起した。
米シンクタンクのハドソン研究所が27日、ウェブサイトに同氏の寄稿を掲載した。
石破氏は寄稿で日米安保条約に関し「『非対称双務条約』を改める機は熟した」と訴えた。米国が日本の防衛、日本が米国への基地提供の義務をそれぞれ負うものの、義務の内容が異なると言及した。
日米は1951年に安保条約を結んだ。米国による日本防衛の義務を明記していなかったため、60年に改定し70年に自動延長した。石破氏は在日駐留米軍の法的特権を認めた日米地位協定の改定も同時に提案した。27日投開票の総裁選期間中に訴えた。
アジア版の北大西洋条約機構(NATO)の創設を前提に日本を含む参加国への米国の核兵器の持ち込みを検討すべきだとも主張した。持ち込みを禁じる日本の「非核三原則」との整合性を問われかねない。
アジア版NATOの創設も石破氏の総裁選での公約だった。寄稿では「今のウクライナはあしたのアジア」と指摘した。ロシアのウクライナ侵略と似た紛争がアジアで起こるリスクに警鐘を鳴らした。中国による台湾侵攻を念頭に置く。
理由として「アジアにNATOのような集団的自衛体制が存在せず、相互防衛の義務がないため戦争が勃発しやすい状態にある」と唱えた。アジア版NATOの創設で中国とロシアと北朝鮮の「核連合」を抑止する必要があるとも主張した。
NATO締約国は1つの加盟国への攻撃を全ての加盟国への攻撃とみなして反撃する集団的自衛権を行使する。石破氏は同様の枠組みをアジア版NATOとして「中国を西側同盟国が抑止するために不可欠だ」と言明した。
「アジア版NATOで米国の核シェアや持ち込みも具体的に検討しなければならない」とも説いた。米軍はNATO加盟国を守るためにドイツやトルコなどに核を配備している。
北朝鮮や中国の核増強で米国によるアジアへの拡大抑止は「機能しなくなっている」と懸念を表明した。拡大抑止は敵国が日本や韓国などに核を使えば、米国が核で反撃すると事前に明言し、核使用を思いとどまらせる考え方だ。
石破氏は自民党総裁選の論戦で、米国が核を使用する際の意思決定の過程を、日本が同盟国として共有する仕組みをつくるべきだと訴えた。
インド太平洋地域では東南アジア諸国連合(ASEAN)をはじめ米中のどちらかへの肩入れをためらう国が目立ち、アジア版NATOを実現するハードルは高いとの見方が多い。