偽減税に実質賃金16カ月連続マイナス…「鬼の岸田総理」に「早く辞めてほしい」は51%で最多!上級国民には迎合

偽減税に実質賃金16カ月連続マイナス…「鬼の岸田総理」に「早く辞めてほしい」 政治・経済

偽減税に実質賃金16カ月連続マイナス…「鬼の岸田総理」に「早く辞めてほしい」は51%で最多!上級国民には迎合(MINKABU 2023/10/03)

岸田文雄首相が新たな経済対策の具体策を10月中にまとめるよう指示した。遅きに失したとはいえ、物価高に困窮する国民の生活を見れば当然だろう。ただ、首相は「税収増を国民に適切に還元する」と表明したものの、その行き先には怪しさが漂う。

経済アナリストの佐藤健太氏は「岸田氏の眼中にあるのは『企業』中心で、すべての国民に支援の手が差し伸べられるわけではない。現役世代には退職金の課税見直しや社会保険料アップという“倍返し”が待っているだろう」と指摘する。

岸田首相「今こそ成長の成果を還元したい」

「今こそ、この成長の成果である税収増を国民に適切に還元するべく経済対策を実施したい」。岸田首相は9月25日、足元の物価高によって個人消費や設備投資が力強さに欠ける不安定な状況であることを踏まえ、新たな経済対策を策定する方針を表明した。

対策は、①国民生活を守るための対策②地方、中堅・中小企業を含めた持続的な賃上げと所得向上、地方の成長の実現③成長力の強化・高度化に資する国内投資の促進④人口減少を乗り越え、変化を力にする社会変革の起動と推進⑤国土強靱化、防災・減災など国民の安心・安全の確保―の5本柱で、予算上の裏打ちとなる補正予算の編成に速やかに入る考えを示した。

すべてが「企業向け」で、今現在、物価高に苦しんでいる国民向けの対策ではない

そして、9月27日に首相官邸で開催した「新しい資本主義実現会議」で岸田氏は今後の施策について、このように語っている。

「第1に賃上げ税制の減税措置の強化を図る。第2に中小・小規模企業の賃金引上げのため省人化・省力化投資への支援を実施する。地方においても賃上げが広がるよう工場などの新設を支援する。第3に最低賃金の上昇率や春闘の妥結額を基礎に価格交渉を行うなど労務費転嫁の指針を年内に公表する。第4に非正規労働者と正規労働者の同一労働・同一賃金制について企業に指導を行うとともに、非正規労働者に対するリスキリング支援を開始する。第5に資産運用立国については年内に政策プランを策定する」

ここで「おや?」と思った人は少なくないだろう。制度設計の詳細は今後決まっていくのだろうが、その中心は「企業向け」に偏っているからだ。首相は賃上げ税制の減税制度の強化、国内投資の促進や特許所得に対する減税制度の創設、ストックオプションの減税措置の充実という「3つの減税政策」を進める意向を示したものの、それらは物価高に苦しむ国民が望む「今日を生き抜くため」の施策とは言えない。

国民は退職金課税見直しや社会保険料アップデ苦しんでいるというのに、財界しか見えない「増税メガネ」

物価高対策としては、高騰するガソリン価格や電気・ガス料金の負担軽減策が机上にのるものの、国土強靱化や人口減少対策などが入ることには与党内からも「なんで今やるの?」(自民党中堅議員)との声が漏れるほどだ。経団連は9月11日に発表した来年度税制改正に関する提言で、法人税減税を訴えるとともに、将来の消費税率引き上げは「有力な選択肢の一つ」とした。ネット上には「増税メガネ」と岸田首相を揶揄する書き込みも目立つが、財務省寄りとみられている首相と財界が歩調を合わせているように映る。

首相が経済成長の成果である「税収増を国民に還元する」と表明しておきながら、10月末をメドにまとまる経済対策は企業向けが中心で、国民生活を支える策としては住民税の非課税世帯に限定した低所得者向け給付措置が軸になる見込みだ。

昨年末に決定された防衛費大幅増に伴う増税プランに加え、サラリーマンの退職金課税見直しや社会保険料アップが議論される中での限定支援策には「物価上昇の影響を受けているのは全国民なのに、バカにしているのかと感じる」(千葉県在住の30代男性会社員)といった怨嗟の声も渦巻く。

賃金上昇が物価上昇に追いつかず、多くの国民がギリギリの生活を強いられている

たしかにサラリーマンらの所得は上向いてはいる。国税庁が9月27日発表した民間企業で働く会社員やパート従業員らを対象にした民間給与実態統計調査によれば、2022年の平均給与は前年比2.7%増の458万円だった。これはコロナ前の水準を上回り、2014年以降で最も高い。

だが、物価変動を加味した実質賃金を見れば、物価高騰に追いついていないのが現実だ。厚生労働省が9月8日発表した7月の毎月勤労統計調査によると、実質賃金は前年同月比2.5%減で16カ月連続のマイナスだ。さらに2022年度の毎月勤労統計調査を見ると、実質賃金の月平均は前年度比1.8%減と2014年度以来の落ち込みであることがわかる。

昨年1年間の平均給与が458万円だったと言っても、性別や雇用形態によって大きく異なるところだ。男性は563万円、女性は314万円で差は249万円に達し、格差は3年連続で拡大している。また、正社員は523万円だったものの、パートやアルバイトなど非正規雇用の人は201万円で差は322万円に上る。懐に余裕がある人には不要なのかもしれないが、所得が低い人や住民税の非課税世帯になるかどうかギリギリの人々にとっては「限定された支援策」は死活問題につながりかねない。

毎日新聞世論調査で岸田首相に「早く辞めてほしい」は51%

岸田政権は経済対策での低所得者向け給付措置について、現金給付かクーポン配布にするかで迷っているとのことだが、そもそも住民税非課税世帯の約8割は高齢者だ。最近の経済対策による支援は所得制限や低所得者向けに限定されており、多くの現役世代には厳しい内容となっている。税金が低い一方で、金融機関に預けた際の金利は高く、給与が右肩上がりで退職金もガッポリもらえた時代があったことを現役サラリーマンはもはや信じたくないかもしれない。

先に触れたように、国が「タダ」で与え続けることはない。これまでの歴史がそうだったように日頃の税金に加えて、経済対策などに伴う歳出増で財政に「不足」が生じるとなれば、何らかの方法で新たに国民負担を求めることになるだろう。コロナ禍で膨らんだ財政出動に物価高騰対策や企業、低所得者向けの減税・支援策が加われば、どこかの時点で“帳尻合わせ”の局面を迎えるはずだ。増税などのブーメランはもちろん、現役世代中心に向かうことになる。

毎日新聞が9月16、17日に実施した世論調査によれば、岸田首相に「早く辞めてほしい」は51%で最も高かったという。各種調査を見ても支持率は低空飛行を続けているが、「聞く力」を自らの特長にあげる首相にこうした声は届いているのだろうか。

米ニューヨークで「資産運用特区」構想をぶち上げ、老後破綻を招かないように「一億総投資家」になることを迫る岸田首相。来年夏の自民党総裁選や総選挙日程に集中しているように見える姿からは、国民の声に「聞く力」を発揮しているようには見えない。

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